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沈黙の駿河湾~東海地震説40年 静岡新聞社取材班「六つの提言」

7/1(土) 14:00配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 地震の直前予知を前提とし、静岡県の東海地震対策の礎を築いた大規模地震対策特別措置法(大震法)について、静岡新聞社の大震法取材班は2016年1月から長期連載「沈黙の駿河湾~東海地震説40年」を展開し、実情に合わせて見直す必要性を指摘してきた。65回に及ぶ連載や主催シンポジウム、住民や首長を対象としたアンケートなどさまざまな切り口からの検証作業を通して浮き彫りになった大震法の功罪などを踏まえ、未来に向けて六つの提言をまとめた。

 (1)「予知はできない」と速やかに総括を
 1年前の6月28日に設置され、9月に議論を始めた国の中央防災会議の有識者ワーキンググループ(作業部会)。検証に当たった調査部会は、ひずみ計による想定東海地震の直前予知の手法を事実上否定した。2013年にも同じメンバーで構成する調査部会が同様の指摘をしていた。だが、気象庁は今も現状の体制を見直していない。直前予知の根拠が失われたと認め、広く知らせるべきだ。

 (2)分かりづらい「不確実な地震発生予測」、説明徹底を
 作業部会は、今後南海トラフで想定される状況のうち、一部のケースは統計的手法に基づいて大地震の発生確率を示すなどの「不確実な予測」を出すことはできるとした。こうした学術的な議論は国民には分かりづらい。警戒宣言や地震防災応急対策といった大震法の現状の課題につながってくる重要な議論でありながら、国民の関心が高まっているとは言えない。事務局の内閣府などには国民向けの徹底した説明を求めたい。

 (3)全国適用の仕組みを視野に
 不確実な予測による注意喚起の仕組みができるとすれば、適用範囲は南海トラフ沿いの地域が指定される公算が大きい。しかし、大地震は全国どこでも起きうるし、不確実な予測に基づく情報なら全国どこでも出せる可能性がある。適用範囲の内側と外側で防災意識に温度差も生じかねない。全国適用の仕組みを見据えるべきだ。

 (4)大震法の趣旨や意義生かせ
 大震法はそもそも、科学者ではなく、政治や国民の側が求めたものだ。その趣旨に立ち返り、一人でも多くの国民の生命・身体・財産を守るために、廃止するのではなく、いかに活用できるかを考えるべきだ。

 (5)静岡県を住民、企業が参加する議論のモデル地域に
 今後の議論には国民や企業を巻き込むことが欠かせない。作業部会はいったん東京を離れ、地域住民の声を聞くべきだ。まずは長年にわたって大震法の恩恵を受けてきた静岡県をモデル的な地域として、不確実な予測を基に何ができるか徹底的な議論を。大震法の教訓やノウハウを国民全体で共有し、関心の高まりに期待したい。

 (6)中長期視点で地に足の着いた地震大国における国土づくりを
 巨大地震が避けられない地震大国の日本。東京一極集中は解消せず、本当の意味で地震に強い国づくりができているとは言えない。大震法の見直しという大きな節目は“真の防災”について改めて皆で考える機会になりうる。国や県は、作業部会が開けた風穴を着実に広げ、地震大国ならではの国土づくりを国民とともに真剣に模索していくべきだ。

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