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納税力をAIが判定、国税庁は税務行政を“スマート”にできるか

7/1(土) 14:17配信

日刊工業新聞電子版

■「スムーズ・スピーディ」と「インテリジェント」

 国税庁が先頃、人工知能(AI)技術などを活用した10年後の税務行政の姿を描いたレポートを公表した。すでに大量の関連データが蓄積されているだけに、AIが税務行政の“スマート”化に大きく貢献しそうだ。

 国税庁が公表した10年後をイメージした「税制行政の将来像」の概要には、この将来像を検討した目的が記してある。一言でいえば「税務行政のスマート化を目指す」ことにある。その背景となる環境の変化として、「ICT・AIの進展」を最初に挙げているところに、とりわけAIがもたらすスマート化への期待のほどがうかがえる。

 「スマート税務行政」と銘打った将来像は、「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」といった2つの取り組みに分けて説明されている。スマート化に向けては、前者が「スムーズ・スピーディ」、後者が「インテリジェント」を実現するといったイメージだ。

 では、具体的にどんな状況でのAI活用を見込んでいるのか。まず、納税者の利便性の向上では、「税務の相談内容をAIが分析することにより、システムが自動的に最適な回答を行うようになる」とし、さらに「納税者からの評価を同時に受けることで、税務相談への回答内容がより適切なものになるとともに、相談時間の短縮につながるものと考えられる」としている。

 ちなみに、税務相談の現状については、納税者が税務署を訪問したり、一般的な質問内容については電話相談センターにおいて電話対応しているという。それがつまりは「自動化」されるわけである。

≪組織もスレンダーになるか≫
 また、課税・徴収の効率化・高度化では、申告内容の自動チェックをはじめ、「AIによってインターネット上の土地データなどの各種情報の自動収集や土地利用状況の自動分析などを行う」とし、さらに「国税当局が取得・保有する各種情報に基づき、路線価・倍率・株価などを自動的に評定することにより、相続税、贈与税の財産に係る評定事務を効率的にすることが望ましい」としている。

 徴収においては滞納整理をめぐって、次のようなAI活用も記されている。

 「AIを活用することにより、個々の納税者についての納付能力を判定するほか、過去の接触や滞納処分の状況などを加味しながら、優先着手事案の選定、最適な接触方法(電話催告、文書催告、徴収官が臨場しての滞納整理など)および滞納整理方針がシステム上に提示されるようになることが望ましい」

 すなわち、滞納者個々への対応の仕方も、それぞれの状況を踏まえてAIが助言してくれるというわけだ。こうしてみると、AIはスムーズ・スピーディ、インテリジェントに加えてリスクヘッジも支援してくれることが分かる。

 今回はこの国税庁によるレポートが「税務×AI」という観点で興味深い内容だったので取り上げてみたが、最後に同レポートのバージョンアップに向けて要望を1つ。スマートには「スレンダー」という意味もある。ということは、AI効果によって組織そのものがスレンダーになるのも「スマート化」の重要な要素ではないだろうか。

 同レポートを生かすためにも、他の省庁に先駆けて、さらに踏み込んだスマート化に取り組んでもらいたいものである。

松岡 功