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「55歳未満お断り」の異色IT企業、高齢化社会に挑む 韓国

7/1(土) 12:00配信

The Telegraph

【記者:Adam White】
 韓国ソウル(Seoul)中心部にあるエバーヤング(EverYoung)のモダンなオフィスは、一見普通のITスタートアップ企業と変わらない。休憩室に血圧測定器が複数台置かれていることを除けば──。

 猛烈な勢いでキーボードをたたいている従業員らに注意を向けると、そのユニークなビジネスモデルがより明らかになってくる。実は同社は、55歳以上しか採用しないという厳格な年齢制限を設けているインターネットコンテンツ監視企業だ。

 自身も56歳だというチョン・ウンソン(Chung Eunsung)氏が立ち上げたエバーヤングは、韓国の人口動態上の「時限爆弾」への対応策を提示するとともに、採用時に若者が優遇される同国の年齢差別的な企業文化に挑もうとしている。

 チョン氏は、「定年退職後も高齢者が働き、グローバルな競争力を維持できれば、われわれを待ち受ける社会問題の良い解決策になる」と話している。

 エバーヤングの従業員は4時間のシフト制で、韓国のポータルサイト「ネイバー(Naver)」などのコンテンツを監視。例えば誰でも閲覧可能なサイトに掲載された子どもの個人情報など、本来保護されるべき情報が流出していないかどうかなどをチェックしている。

 最年長は83歳。経営陣はシルバー人材の勤労ぶりや、携帯電話ばかりに振り回されない点を高く評価している。

 チョン氏は報酬を得ておらず、収益は従業員の給与と福利厚生に充てている。具体的には、年に2回の無料眼科健診、ジムの会員権、孫が1人誕生するごとに支給する祝い金などだ。

 従業員らは1時間ごとに10分の休憩を与えられ、この間の運動や血圧測定が奨励されている。

 チョン氏が起業先にIT業界を選んだのは、ハイテクに重点が置かれた韓国経済に、高齢者でも十分に貢献できるということを実証するためだ。従業員30人で実験的に始めたチョン氏の事業は、今やオフィス4か所で420人が勤務するまでに成長した。

 出生率の低迷が続く韓国では昨年、65歳以上が人口の13.2%を占め、2030年には24.5%に達すると予測されている。

 チョン氏には、喫緊の社会問題に取り組むだけではなく、周縁化されがちな高齢労働者らの「尊厳」回復も目指したいという思いがある。

 韓国企業には、60歳の定年を待たずに退職を促す圧力が存在することで知られ、チョン氏によると「40代でさえ職を失うのではないかと気をもんでいる」という。

 エバーヤングの評判は上々で、年金生活者からの入社希望が殺到し、競争が激しくなっている。

 入社して3年近くになるというヤン・ジェソン(Yang Jae-seon)さん(70)は、同社で職を得たことで息を吹き返したような思いだと語っている。会社員だったヤンさんは50代後半で引退を迫られ退職。当時は「打ちのめされた気分だった」という。

 韓国では退職後、厳しい生活を強いられる人もいる。国民年金の支給額はわずかで、多くの高齢者がやはり経済的な不安を抱える若い近親者に頼らざるを得ないという実態がある。年老いた男性らは毎日地元の公園に集まって孤独を耐え忍び、近所の寺で無料の昼食にあずかっている。

「退職後はあちこちを旅行してい新しいものが見られると思っていた」というヤンさん。「働いていないと、空に浮かぶ雲でさえ以前とは異なって見える」

 同僚は今では友人でもあり、新たな責任感も芽生えたという。その一方で、高齢労働者にありがちな問題点も自覚している。ヤンさんは、「私たちはあまりに長く生き過ぎて、自分の考えが全世界標準だと思い込んでいる節がある!」と認め、「私たちの教育係は相当苦労しているはずだ」と笑った。【翻訳編集】AFPBB News

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最終更新:7/1(土) 12:00
The Telegraph