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「佐世保の母」の食堂閉店 常連客「たくさんの人励まされた」 溝口商店 70年休まず切り盛り

7/2(日) 12:00配信

長崎新聞

 佐世保市上京町で長年にわたり親しまれてきた24時間営業の小さな食堂「溝口商店」が1日午前、惜しまれながら閉店した。常連客に「佐世保の母」と慕われた溝口美佐子さん(91)が約70年にわたり店を切り盛りしてきた。最後の日も、いつも通りの笑顔で温かく客を迎え入れた。

 同店は1949年ごろに溝口さんの両親が八百屋として創業。店を手伝っていた溝口さんが「深夜まで働く人のために」とおにぎりを作ったことが食堂の始まりだった。やがて店先のショーケースには刺し身や煮物などの総菜が並ぶように。溝口さんは元日以外はほぼ無休で、夜9時から朝9時まで、1人で店頭に立ち続けた。

 上司から説教されたサラリーマン、恋愛中のOL、夜の繁華街で働くホステス...。さまざまな人が店を訪れ、「美佐子姉さん」に悩みや思いを打ち明けていった。母親のように一人一人と真剣に向き合う溝口さんは彼らの心の支えとなり、夫や子どものいない溝口さんにとっても、客との触れ合いはかけがえのない財産になっていった。

 高齢の溝口さんを心配した親族の勧めで、店を閉めることを決断した。最後の夜は常連客が途切れることはなく、溝口さんの手料理をゆっくり味わいながら、慣れ親しんだ店に別れを告げていた。思い出話をしながら目を潤ませる人もいれば、溝口さんに花束を贈る人もいた。

 溝口さんは「不思議と寂しいとも、やり切ったとも思わない。さっぱりした性格だからね」と笑った。27年来の常連客という市内の内科医、豊村広平さん(67)は「美佐子姉さんは人の心が分かる人。たくさんの人が励まされてきた。寂しさもあるけれど、長い間お疲れさまという気持ちでいっぱい」とねぎらった。

長崎新聞社

最終更新:7/2(日) 16:11
長崎新聞