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【人とくるまのテクノロジー2017名古屋】開発者に聞く…トミーカイラ ZZ でフロントウインドウをPC樹脂製にしたメリット

7/3(月) 10:30配信

レスポンス

6月下旬に「ポートメッセなごや」(名古屋市)で開催された「人とくるまのテクノロジー展 名古屋 2017」において、GLMが電気自動車(EV)トミーカイラ『ZZ』にPC(ポリカーボネート)製フロントウインドウ搭載を発表。その開発に携わった帝人の担当者に話を聞いた。

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GLMは京都大学内の初のベンチャー企業として認定された法人として設立され、自車でEVの完成品を手掛ける一方で、それを活かしたEVプラットフォームを提供するメーカーとしても知られる。トミーカイラZZはこの会社によって2016年3月より量産をスタート。積極的に新しいことにトライすることを社是としてきた。

PC製フロントウインドウは、2017年7月に改正された保安基準で新たに定められたもので、今回の採用もそうした流れの中で実現されたもの。GLMでは、トミーカイラZZでの認可が取れ次第、今秋からオプション装備として販売していく予定にしている。価格は今のところ未定だ。

このPC製フロントウインドウを開発したのは、樹脂素材メーカーとして世界的にも知られる帝人だ。これまでも樹脂をベースとした車両向けパーツを数多く手掛けてきた。今回はその素材開発に携わった、複合成形材料事業本部グレージング事業推進部の帆高寿昌部長に開発までの経緯や今後の展開などを伺った。

フロントウインドウはこれまで傷が付きやすいことから、ガラス製であることが大前提だった。これをPC製として製品化するのは帝人が世界初。「日本ではこの7月1日から法改正が行われたが、実は欧州では2015年末に既に認可されていた。しかし、これまでに製品化を実現したメーカーはなく、この見通しを立てたのは弊社が世界で初めて。この技術が完成できたのは昨年末のこと。保安基準が改正するタイミングで発表できたことは本当に良かったと思っている」と話す。

開発のポイントはどこにあったのか。「ピラーレス化による広々とした視界の実現が開発の基本コンセプト。特にアイポイントが低いスポーツカーにとって最適と考えている」と、帆高氏は運転席に着座した時のメリットを強調。

そして、型を作ることでどんな形状にも対応できる生産性でのメリットも併せ持つと話す。「ガラスでは難しい機能をPCなら簡単に対応できてしまう。たとえば、ガラスにUVカットを加える場合は後からコーティング作業が必要となるが、PCなら最初から練り込んでしまえばそれで製品は完成する。IRについてもガラスは合わせガラスにする必要がある。PC製なら型を一度作ってしまえばどんな形にも対応できるわけで、デザインの自由度はガラスよりも遙かに高い。さらに重量はガラスに比べて約2/3となり、その分だけ燃費向上に大きく貢献する」

PC化することによるメリットは他社でも認識していたはず。しかし、世界の素材メーカーがこれを手掛けてこなかったのは、その実現に多くの困難があったからだ。「これまでウインドウにPC製を使うのはリアウインドウやサンルーフといった部分に限られ、フロントウインドウ用とするにはワイパーによる擦り傷にも十分耐えられる強度を確保する必要があった。実は保安基準にはそれに関する基準値が設けられており、その実現に向けたブレークスルーが“プラズマCVD法”という技術」だったという。

帆高氏によれば、この採用により耐摩耗性は飛躍的に向上したのだと話す。「これまで多く使われてきたウェット法でもそれなりの効果はあるものの、耐摩耗性で5~7%ぐらい。保安基準の耐摩耗率2%以下には遠く及ばない。それに対してプラズマCVD法では0.5~1.5%にまで向上する」。

ガラス製に比べて弱点はないのか。「最大の弱点はコスト。型起こしをして量産することでコストは下がるが、それでも素材そのものが高く、そのコストはおおよそ1.5倍~2倍程度。広く普及させたいが、当面は車両価格が上がっても燃費を抑えたいと言った需要が中心になる。PC製であることで耐候性や黄ばみを心配する声もあるが、その心配はない。走行時の風圧にも耐えられるよう、周囲を10mm厚さとし、それ以外の部分でも6mmとして高い剛性を確保した」という。

帝人は現在、軽くて強い高機能素材やそれらの複合化による、自動車向け複合材料事業の拡大を中期経営計画の発展戦略として掲げており、今後は日本国内だけにとどまらず、新しい自動車保安基準に相当する特性が求められる欧米の自動車メーカーに向けて市場開拓を進めていく考えだ。

《レスポンス 会田肇》

最終更新:7/3(月) 10:30
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