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サッポロビールの「愛のスコールホワイトサワー」、予想以上に売れている

7/3(月) 8:24配信

ITmedia ビジネスオンライン

 愛のスコール――。ご存じの方は近畿以西の西日本にお住まいか、西日本出身であろう。

【愛の販促で店頭に大量陳列】

 分からない人のために解説しておくと、愛のスコールとは「スコール」という乳性炭酸飲料のキャッチフレーズ。スコールは、宮崎県都城市の南日本酪農協同が開発し、1972年の発売以来、九州や関西など西日本一帯で愛されてきた。

 このスコールに注目したのがサッポロビール。南日本酪農協同とコラボレーションし、「愛のスコールホワイトサワー」を開発した。2017年3月14日のホワイトデーに発売された愛のスコールホワイトサワーは、西日本(近畿、中国、四国、九州、沖縄)限定販売のRTD(栓を開ければすぐ飲めるアルコール飲料のこと)。スコールの特徴である甘酸っぱい爽やかな味わいを生かしてつくられた。誕生の背景にあったのは、サッポロビールが南日本酪農協同に送った熱烈なラブコールだった。

●スコールがお酒になったら絶対においしい

 「開発のきっかけは、西日本出身の当社社員が、『スコールがお酒になったら絶対においしい』と話したことです。これをきっかけにして、スコールがお酒として楽しめることができれば、ということになり、南日本酪農協同に出向いてこの熱い想いを話させていただいたというのが始まりです」

 このように振り返るのは、ブランド担当を務めるスピリッツ事業部RTDグループ マネージャーの野村祥子さん。野村さん自身は出身が西日本ではないことから、スコールにはなじみがなかったが、これをきっかけに、西日本出身者のスコールに対する強い愛着や熱い想いを知ることになった。2015年12月24日のクリスマスイブに南日本酪農協同を初訪問。愛に縁があるこの日に訪れたのは偶然だったが、交渉はスムーズにまとまった。

 しかし、熱意や強い想いだけで商品はつくれない。市場性などを踏まえて判断する必要がある。

 その意味で言えば、市場動向は商品化に味方した。スコールのような乳性フレーバーのRTDは現在、市場が伸びており、しかも西日本での売れ行きがよかったのだ。西日本でのスコールの強いブランド力と乳性フレーバーのRTDの市場動向から、サッポロビールは勝算アリと判断した。

●ジュースすぎずお酒すぎないベストバランスを追求

 中身の開発については、スコールの甘酸っぱい爽やかな味わいを損なわないことが、何よりも求められた。この点で大きかったのが、スコールで使われている原料と同じものが使えたことであった。

 レシピのつくり込みは、両者が積極的に意見交換を重ねて進められたが、その結果決まったことの1つが、4%というアルコール度数だった。RTDで4%はかなり珍しいが、4%になったのには大きな理由があった。その理由を、野村さんは次のように話す。

 「さまざまなアルコール度数で試作をつくったのですが、どれが一番スコールを再現しているかという観点から検証した結果、4%が一番スコールらしいものでした。それに、お酒すぎずジュースすぎないベストバランスを実現するアルコール度数が、4%だったのです」

 ジュースに近いと、スコールを飲めばいいことになる。しかしお酒に近いと、スコールのイメージから離れ、ファンの期待を裏切ってしまう。絶妙なバランスが求められた味づくりの中で、ひたすら試作をつくっては両者でテイスティングを行って、ベストバランスを探っていったという。

 スコールのイメージを再現するのは、パッケージでも同じだった。しかしその一方で、「スコールとまったく同じでもよくないので、お酒らしさを出すことも重要でした」と野村さん。パッケージデザインを何十パターンもつくり、両者の担当者とデザイナーで絞り込み、残ったものをブラッシュアップしてつくり込んだ。

●スコールに対する南日本酪農協同の熱い想いを共有

 中身、パッケージともに、スコールのイメージを裏切らないものが完成した。しかし、それが消費者に受け入れられるかどうかは別問題であった。

 どうすれば一番いい形で売れるのか? この問いに対する答を出すために、サッポロビールは発売前に、西日本の営業マンを南日本酪農協同に集め、決起集会も兼ねた販促会議を実施した。新商品発売前に、わざわざ決起集会を行うことは異例のこと。実施に至った理由を、野村さんは次のように話す。

 「西日本の営業マンはもちろん、スコールのことを知っていますが、西日本出身ではない者も多くいます。子どものころからスコールを知っている人と知らない人に分かれますので、全員の意識を統一する必要があると考えました。そのために、西日本の営業マンが南日本酪農協同に集まり、決起集会を実施することに至りました」

 この合宿ではどうやって販売していくかを話し合っただけでなく、南日本酪農協同の製造部門や営業部門などからスコールというブランドに対する想いを語ってもらったほか、工場見学などを行い、スコールに対する共通認識を醸成。スコールというブランドに対する南日本酪農協同の熱い想いを全員で共有し、成功させるべく商談や販促に取り組んでいくことになった。

●愛の販促で店頭に大量陳列

 売れなかったらスコールというブランドに傷をつけ、南日本酪農協同に迷惑をかける。強いプレッシャーを感じる中で始まった愛のスコールホワイトサワーの販売だが、発売と同時に勢いよく売れていった。年間13万6000ケース(1ケース:250ml×24本換算)で販売を開始し、発売から3カ月で計画をクリアしたほど。乳性フレーバーの人気やスコールというブランド力もあり強気の年間計画を立てたが、営業マンの熱い想いが小売店のバイヤーにも伝わり、予想以上にいい形でスタートダッシュが切ることができた。あまりにも売れすぎ、生産が一瞬追いつかなかったこともあったほどだった。

 営業マンは、商品名にかけて「愛の販促」を展開していった。愛の販促はホワイトデー、母の日、父の日、七夕など、少しでも愛にまつわる日に、店頭で大きく露出するもので、発売前の販促会議で決まった。愛の販促カレンダーを作成しており、スケジューリングもできているほど。濃い緑を基調とした目立つパッケージデザインなこともあり、店頭での大量陳列は圧巻のひと言だ。

 また、すでに終了したが、Twitterを使った「カンパイを贈ろう!キャンペーン」を実施した。想いを伝えたい相手に、ブランドサイトに用意されたGIF動画とメッセージを「#大人スコール」というハッシュタグを付けて送ると、その中から毎月10人に愛のスコールホワイトサワーの6缶セットをプレゼントした。店頭での露出強化とSNS上での拡散が融合し、広く知られることになった。

 このほか、発売と同時にラジオ放送も実施した。5月で終了したが、FM802(大阪)をはじめ4局で「サッポロ 愛のスコールホワイトサワー GOOD TIME」を放送。毎週火曜日の午後6時からの20分間、歌手の秦基博さんとDJの中島ヒロトさんの2人が、「カンパイ!」をテーマに番組を進行していった。「カンパイ!」をテーマにしたのは、スコールがデンマーク語で「乾杯」という意味があることに由来する。

●メインユーザーは意外にも30~40代男性

 では、誰が中心になって購入しているのだろうか? 乳性フレーバーでアルコール度数も低めなので、若い女性が中心だと思いたくなるが、メインユーザーは30~40代の男性だという。野村さんも、「スコール自体は男性のほうが多い、という話は聞いていたものの、これはお酒ですから、若い女性が多いと予想していました。しかし、他の乳性RTDと比較すると、男性の比率が高いです」と驚きを隠さない。その理由は現在のところ、子どものころにスコールに親しんできた世代が、そのままスライドしてきた、というのが有力だ。

 もう1つの有力な見方が、飲み口のよさだという。乳性フレーバーの場合、甘さが口の中に残りやすいが、愛のスコールホワイトサワーは甘いものの、口の中に甘さがいつまでも残ることがなく、この点が評価されていると考えている。

 また、西日本での好調を受け、東日本での販売を望む声が強いという。この声を受ける形で、サッポロビールは6月28日、愛のスコールホワイトサワーを9月5日から全国発売すると発表した。西日本出身の東日本在住者も、これで懐かしの味が堪能できるというわけだ。

 最終的には、エリア限定販売から全国販売へと至ったが、RTDの新ブランドを一時的とはいえエリア限定で販売した例は、ほとんど聞いたことがない。今回の成功により、RTDの新ブランドをエリア限定で投入する動きに、他社も追随する可能性がある。そういう意味では、サッポロビールの試みは先駆的だといえる。

(大澤裕司)