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IBM WatsonとSalesforce Einsteinの“AI連携”で何が起こるのか

7/3(月) 12:38配信

ITmedia エンタープライズ

 日本IBMが6月30日、米IBMが2016年5月に買収した米Bluewolfの事業を7月から日本で本格展開すると発表した。Bluewolfは米Salesforce.comのトップパートナーで、これまでSalesforce製品を1200社以上に導入してきた実績があるという。

【画像】「IBM Watson」と「Salesforce Einstein」の機能(日本IBMの発表資料)

 日本IBMはそんなBluewolfの知見やスキルを取り込み、AI(人工知能)などを活用したCRM(顧客情報管理)に向けたコンサルティングからシステム構築までを一貫して行うため、新たに「Bluewolf専門チーム」を設立した。

 日本IBM本社で行われた発表会見には、同社から執行役員グローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業本部戦略コンサルティング&デザイン統括の池田和明氏、GBS事業本部マーケティングコマース&セールスフォースリーダーの浅野智也氏、Bluewolfマネージングディレクターのグレッグ・キャプラン氏、そしてSalesforce.comの日本法人セールスフォース・ドットコム常務執行役員アライアンス本部長の手島主税氏が出席した。

 会見での説明によると、Bluewolf専門チームは日本IBMのインタラクティブ・エクスペリエンス事業の一環として設置され、データサイエンティストやコンサルタント、システムエンジニア(SE)などによって構成される。当初は数十人規模だが、数年後には1000人規模に拡大させる考えだ。IBMの業界・業務ノウハウや、オンプレミスおよびマルチクラウド環境のインテグレーションのノウハウ、Bluewolfの知見やスキルを組み合わせ、先進的なCRMを早期に構築することを支援するという。

 特に、既存の企業内CRM、構築済みのクラウド型CRM、企業内の他のシステム、そしてIBMのクラウド上のソリューションとの連携といったハイブリッドやマルチクラウドのニーズに対応していき、多様なクラウド型CRMシステムの構築を支援。これらのCRM構築に向けた技術検証や実証なども行い、グローバルで培ってきた価値を、同チームとして日本市場へ広げていきたいとしている。

●「マクロなWatsonとミクロなEinstein」で分析効果向上

 今回の日本IBMの新たな取り組みは、実はIBMとSalesforce.comが2017年3月に発表した戦略的提携に伴う動きである。提携の最大の眼目はAI連携、すなわちIBMのコグニティブコンピューティング技術「Watson」とSalesforce.comのAIプラットフォーム「Einstein」をシームレスに連携し、企業がさらに高度な顧客エンゲージメントを実現できるようにするというものだ。

 そして、この提携の一環として、IBMが買収したBluewolfが、WatsonとEinsteinを組み合わせた機能を迅速に活用できるようにする手だてを講じることも掲げられていた。今回の日本IBMが新設したBluewolf専門チームは、まさにその手だてとなるものである。

 ただ、ここからは両社提携の最大の眼目であるAI連携そのものに注目したい。このAI連携、もう少し細かく説明しておくと、2017年後半までにWatsonの各種APIをSalesforceのアプリケーションに実装し、Watsonから得られる社内外のビッグデータの予測分析と、Einsteinから得られる顧客データの予測分析を組み合わせることによって、セールス、サービス、マーケティング、コマースなどにわたってより迅速な意思決定を行えるようにするという。

 とはいえ、業種ごとのQ&AシステムのようなイメージのWatsonと、Salesforce製品に最適化されたEinsteinを組み合わせることで、果たして本当に相乗効果を生み出せるのか。今回の会見の出席者に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

 「大量の非構造化データを分析してそこから意味を引き出すWatsonと、CRMをベースとした分析できめ細かな顧客対応を可能にするEinsteinは、さまざまな用途で相乗効果を生み出せると確信している」(日本IBMの池田氏)

 「端的に言えば、Watsonはマクロな分析、Einsteinはミクロな分析に向いており、組み合わせれば効果は非常に大きい。製薬分野で例えると、Watsonは特定の血液型の人たちに対して特定の薬の影響を知ることができるのに対し、Einsteinは特定の薬がどの人に影響を与えるかを知ることができる」(Bluewolfのキャプラン氏)

 「どの企業にとっても顧客の動向を知ることは非常に重要で、Einsteinはまさしくそれを支援する。一方、Watsonは分野ごとに膨大で多様なデータを迅速に分析するところが強みなので、Watsonが分析した内容をEinsteinでさらにきめ細かく分析して、企業のビジネス価値を高めていくことができると確信している」(セールスフォース・ドットコムの手島氏)

 両社のAIを軸とした提携は、ITベンダー同士の新たな協業形態とも見て取れるだけに、その相乗効果がどれほどのものか、注目しておきたい。