ここから本文です

アングル:通信の「クワッドプレイ」、米市場で普及進むか

7/3(月) 13:44配信

ロイター

[ニューヨーク 29日 ロイター] - 固定回線による通話、インターネット接続、テレビ、モバイル通信の4分野のサービスを1つの事業者がまとめて提供する「クワッドプレイ」は、米国では普及が遅れている。しかしケーブルテレビ(CATV)会社のモバイル事業参入でこれまでの体制に風穴が開きつつあり、今後は流れが変わりそうだ。

通信事業者にとって、異なる4つのサービスを一括して請け負うことは顧客をつなぎ留める上で効果がある。ただ、米国では消費者が固定電話とネット接続、テレビの3分野をひとまとめにしても、モバイル通信は別途契約を結ぶのが一般的で、クワッドプレイの普及は容易ではないというのが投資家やアナリストの見方だ。

ガムコ・インベスターズの共同最高投資責任者のクリストファー・マランギ氏は「サービス提供範囲の違いが最大の障害だ」と指摘。「CATVはことごとく地域別に分かれているが、モバイルは全国規模だ」と述べた。

またIBBコンサルティング・グループのシニアパートナー、ジェファーソン・ワン氏は、4つのサービスの料金をまとめると請求が高額になることもクワッドプレイにとって逆風だと説明した。

調査会社ストラテジー・アナリティクスの推計によると、クワッドプレイの普及率は米国ではおよそ10%で、2020年には17%に上昇する見通し。しかし普及率はフランスでは既に25%、スペインでは60%に達している。仏イリアド<ILD.PA>やスペインのテレフォニカ<TEF.MC>などの通信会社がこの5年間にクワッドプレイの導入を進めたためだ。

一方、米国の通信大手はこれまでクワッドプレイの導入に消極的だった。AT&T<T.N>はブロードバンドサービスを手掛ける一部地域で実施済みだが、現在はメディア大手タイム・ワーナー<TWX.N>の買収で当局の承認待ちの状態にあり、モバイルサービスとエンタメ事業の統合に重点を置いている。

CATV最大手コムキャスト<CMCSA.O>は今年初めにモバイルサービスの「Xインフィニティ」を立ち上げたが、クワッドプレイの積極展開には乗り出していない。

また携帯最大手ベライゾン・コミュニケーションズ<VZ.N>はかつてクワッドプレイを始めたが、大幅な値引きを期待した顧客から支持が得られなかった。

しかしCATV会社がモバイル事業に参入し、料金の面でライバルを打ち負かすチャンスが生まれており、米通信市場の状況は変わるかもしれない。コムキャストとチャーター・コミュニケーションズ<CHTR.O>のCATV大手2社は携帯大手スプリント<S.N>との間で無線サービスでの提携について交渉を進めている。コムキャストとチャーターは既にベライゾンと同じような内容で合意しており、チャーターは来年中に無線サービスを立ち上げる見通し。

「実際のところ、ちょうど転換点を迎えている」と話すのはベイン・アンド・カンパニーのパートナーのマーク・ボワー氏。クワッドプレイが始まった市場ではいずれも、既存勢力がシェアを失うか、新興勢力が値下げにより新たな顧客をつかむかが起きている。米国ではCATV会社がこうした波乱を巻き起こす要因になりそうだ。

スプリントは2005年にコムキャストなどと組み、2億ドルを投じてモバイル市場に参入しながら、08年には「運営が複雑」としてクワッドプレイから引き上げた苦い経験を持つ。

しかしCATV会社が無線通信会社を買収し、モバイルサービスを第3者に依存する態勢から脱すれば、今回は違う結果になるかもしれないとアナリストはみている。

さらにWiFi経由の無線接続が広がり、無線とブロードバンドの境が曖昧になったこともCATV会社のモバイル市場進出を後押ししそうだ。

(Anjali Athavaley記者)

最終更新:7/24(月) 4:15
ロイター