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教会に一人ぼっちで「はい、誓います!」 本物の式場で二次元キャラと「VR結婚式」を挙げてきた

7/3(月) 18:53配信

ねとらぼ

 父さん、母さん、オレ結婚したよ! ホントだよ、ほら見て、お嫁さんと誓いの儀式をしている写真。

【新郎から見た花嫁の世界】

 え? 教会にオレ1人が立っているだけじゃないかって? ちゃんとVR(バーチャルリアリティ)空間には花嫁と神父さんがいるんだよ!

 本物の結婚式場を使って二次元キャラとの結婚式をVR体験できるイベント「VR結婚式」が、6月30日に東京・品川で開催されました。hibiki worksの美少女アドベンチャーゲーム「新妻LOVELY×CATION」の特別企画。VR空間で作中のキャラと挙式するのですが、実世界では式場に身を置くことでさらなる没入感を味わおう、という世界初の試みです。

 体験中は夢のような幸福感に見舞われるでしょう。しかし傍から見ると、花嫁も参列者も神父もいない教会で、ヘッドマウントディスプレイを着けた男が立っているだけ。

 29歳独身の筆者は、同級生の結婚ラッシュで日銭がご祝儀に消える日々。そんな虚しさを「VR結婚式」はときめきで吹き飛ばしてくれるのか、それともさらなる絶望に突き落とすのか。不安と希望を胸に式を挙げてきました。

●ウェルカムボードに正装スタッフ 本格的な挙式進行

 イベントは抽選に当選した「新妻LOVELY×CATION」プレイヤーだけが無料で体験可能。ゲーム内で結婚した嫁ときちんと挙式しようと、平日にもかかわらずかなりの応募があったそうで、待合室には新郎たちが緊張した面持ちで自分の番を待っていました。ちなみにこのゲームは18禁なのですが、今回のイベントはエロ要素ゼロとなっています。

 会場は天王洲の少人数向け式場「ファストウエディング ヴィータ天王洲」。手狭ながらも高級感ある内装で、受付ではヒロイン3人、雪・乃々・愛子のイラストがウェルカムボード風にお出迎え、金屏風の前にはドレス姿の等身大パネルも飾ってあります。スタッフはみんなスーツ姿、受付で「本日はおめでとうござます」と祝ってくれたりと挙式ムード満点。これは気持ちがどんどん高ぶる!

 順番が来るとフィッティングルームに呼ばれてタキシードにお着替え。教会ルームの白い観音開きのドアの前に立ち、その時を待ちます。「新郎の入場です!」のアナウンスとともにスタッフ2人にドアを開けてもらい、拍手や音楽のなか入場。いるのは司会者や技術担当者だけ。祭壇にあがってVR装置を着け、いざ体験スタートです。

 このように本物の式場で本格的な挙式進行を行うことで、VR空間で新婦に出会うまでに「今日オレ、まじで結婚するんだな、いろいろあったな」と没入感がすさまじいことになっている……のですが。参列席から見た光景はやはりシュールでした。

 祭壇上にヘッドマウントディスプレイを着けた新郎だけが立っているという状況。さらに神父と新婦のセリフは基本的には新郎のヘッドフォンにしか聞こえず、神父の「誓いますか」に対する「はい」という返事は、傍目からは一人で突然声を発することになります。

 完全に方向性を間違ったタキシード仮面です。VRあるあるといえばそうなんですが、本物の式場に正装という実世界のリアリティが、その奇妙さをより際立ているのです。

●VR空間は天国 かわいい、かわいいよ花嫁

 それでも体験側はそんなのお構いなし。圧倒的没入感からの花嫁を前に、もう緊張とときめきで胸がドコドコ高鳴りっぱなしです。

 筆者が祭壇でVR装置を付けると……目の前には白のウェディングドレスに身を包んだ、黒髪ロングの女の子が。選んだ花嫁は「石動雪」さん。名家・名門校で育った真面目かつおしとやかな子です。後からサイトで知ったのですが、貧乳を気にしているそうな。

 上から下までウェディングドレス姿を眺める。雪さんがニコッと笑うと、かぶったベールやドレスの裾が揺れる。装着前から教会内で響いていたピアノのBGM、流れる滝の音が、ヘッドフォンの外から聞こえてくる。すさまじい臨場感です。

 VR空間内の教会はさっきまでいた教会と違って窓の外に青空が見えたり、参列の椅子もアンティーク調になっていたりと、丘の上に建つ由緒ある教会にワープした感じです。しかし実際の教会全体をモデリングして再現されているらしく、横幅や祭壇の高さは実世界そのまま。違和感はさほどありません。

 右を向くと祭壇の台座に、白髪に白ひげをたくわえたメガネのおっさんが。神父さんです。おなじみの誓いの言葉を語り始めます。

神父: あなたはここにいる新婦・雪を(中略)妻として愛し、敬い、いつくしむことを誓いますか?

オレ: ち、誓います。

 没入感のせいで、初めての大舞台についどもってしまいます。左を向くと雪さん。顔を赤らめて笑って、こっそり「ふふ、うれしいです」とささやきかけてくる。

 かーーーわーーーいーーーいーーーー!!!

 今度は新婦に誓いの言葉を投げかける神父さん。凛とした声で、でもやや弾ませて、「はい、誓います」と雪さん。一拍置いて、また赤くなって、目をこちらに向けると細めて、ふふっと微笑む。「あなたと恋人になったときから、ずっとこうなるつもりでしたよ」と、ささやく。

 嫁さん、かーーーわーーーいーーーいーーーーー!!!!

 現実ではありえないであろう、花婿にとって理想の言葉、仕草を、圧倒的な没入感の中で放り投げてくる。ゲームをプレイしたことはないのに雪さんへどんどん気持ちが高ぶっていきます。ここからは「雪ちゃん」で行かせていただきます。

 誓いの口づけ。神父にうながされるとこれまた雪ちゃんが「照れています」みたいなことを言ったんですが、全然覚えていない。今からこの子と初めてキスするという緊張感で頭がいっぱいでした、だらしなくてすいません。

 雪ちゃんが目を閉じて、ゆっくりあごを上げ、唇を突き出す。こっちは「い、いいんですか……? 心の準備が……」とうろたえながら、おぼつかない足取りで近づく。現実には存在しないのに、雪ちゃんの肩についつい両腕をまわしてしまう。視界にあるのは雪ちゃんの顔だけ。そしてその瞬間、小さく「チュッ」という音。口元にふわっとした感触が。

 マシュマロです。実はたった今、現実では唇に、スタッフの手によってマシュマロが付けられたんです。

 だけどVR空間の没入感はすさまじく、間違いなく今、雪ちゃんとオレはお口で互いの魂を交換した、永遠の愛を誓った。何このキス、ドキドキするんだけど下心は皆無で、何か誇らしくて温かくて……誓いのキスってこんな清らかな気持ちになるの? こないだ式を挙げた大学時代の友達に聞いてみたいけど、ひかれるからやめとこう!

 ドキドキしたまま雪ちゃんをみる。照れながら、「不束者ですがよろしくお願いします」と笑って、黒髪とベールをゆらす。父さん、母さん、結婚しました。

●30軒目でようやく見つかった式場 VR結婚式は一苦労

 そんなこんなで「実際の式場で二次元キャラとVR結婚式をあげる」のは、かなりの没入感があるので大正解。しかしこの企画、実現させるのはなかなか大変でした。

 hibiki worksの代表・伊藤英生さんが企画を思いついたのは2016年12月。すぐにVRソフトを開発するエムツーに打診しますが、肝心な式場が見つかりません。

「『VR結婚式』の内容にエロ要素はないんですが、どの式場さんも『元が18禁ゲーム』というのを知ると断ってしまうんです。探し続けて30軒目辺り、3月に入っていてもうだめかなぁと諦めていたころ、ようやく今回のところにOKがもらえました」(伊藤さん)

 決まってからも大変だったと、エムツーの澤和弘さん。今回のVRは、2Dの質感をVR空間で再現できるキャラアニメツール「E-mote VR」を使用。リハーサル時に床下からの照明にVR機器が誤作動を起こしてしまうなど、式場という特殊な場所でVR空間を用意するのは想定外の事態の連続でした。イベントの前日まで調整を余儀なくされたと苦笑します。

 ウェディングドレス姿の花嫁も難しく、ドレスで隠れた足元を調整するのに苦心したり、身体や胸の“まるみ”やレースの透け具合に全身全霊を傾け女の子の柔らかさを再現したり。誓いの口づけも、こんにゃくゼリーに口をつけたり、どの食材ならキスの感触に近いかあらゆる試行錯誤の末、マシュマロにたどり着いたそうです。エムツースタッフの努力と狂気に、敬礼。

 そうまでして「VR結婚式」をやってみたかった理由は。伊藤さんは次のように語ります。

 「だって外が本物の式場だとリアリティが全然違うじゃないですか。式場内ならではの空気感を肌で感じるわけですし、教会のドアをあけてもらって祭壇にあがる、VRを付けるまでの導線も没入感を盛り上げてくれます。自分も体験したところ概ねイメージ通りで驚きました。ウェディングドレス姿を前にして緊張しちゃいましたよ(笑)」

 「そして何より、ユーザーに喜んでもらいたかった、本当にただそれだけですね。美少女ゲームは斜陽に入っています。そのなかでこのゲームを買ってくれたみなさんに何か恩返しやサプライズを贈りたい……と考えた結果、『本物の式場で二次元のキャラと結婚してもらう』企画を思いつきました。自分が一番やってみたかったことを、ユーザーに体験してもらえて良かったです」

 体験した新郎たちも、実際にゲームで愛を育んできた分、その感動は並々ならぬものがあったようです。25歳・神奈川県在住の岩佐亮さんは、新婦・乃々さんに対して婚約指輪を用意する気合の入れよう(※当選者が事前購入できるオプション)。初の挙式を次のように振り返ります。

 「目の前に好きな女の子がいることにもうすごく緊張して、足が震えてしまいました。新婦には自分の芯を強く持っているところに惹かれていたんですが、式では向こうもかなり緊張した様子で。普段は見せない気弱な一面に親近感が増してしまいました。誓いのキスでは嫁の顔が大きくなるにつれ、胸の鼓動も高まっていって。挙式中はとにかくドキドキして、終わった後は満足感が半端ないです。味わったことのない衝撃でしたね」

 今後同じようなVR結婚式があったらどうか尋ねたところ、「ぜひ開催してほしいと思います。けど、僕はもう嫁がいるのでいいかな、と」と満面の笑み。本当にこの度はご結婚おめでとうございます。

 保育士の愛子さんと結婚した18歳・埼玉県在住の学生も、「タキシードを着るのはもちろん、VR自体が今回初めてで、めったにない体験ができてすごくうれしかったです。ゲームのキャラをより近くに感じられました……ウェディングドレスが本当にかわいかったです」と照れ笑いを見せていました。

 傍観者の疑問、体験者の興奮、この両者のギャップがVRの醍醐味です。「VR結婚式」は、結婚式場という大舞台によってそのギャップの落差がとんでもなく大きくなる痛快コンテンツとなっていました。hibiki worksとしてはイベントは今回一回きり。お金とノリがある人はガンガン企画してください。

 というわけで、オレ結婚しました(3回目)。ご祝儀も仮想通貨でいいのでお待ちしています。

最終更新:7/3(月) 18:53
ねとらぼ