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【BARKS編集部レビュー】HIFIMAN RE800、凄まじい描画力をワクワクするような美麗なトーンで

7/4(火) 20:03配信

BARKS

前回、6月10に公開したfinal F3100の素晴らしさを紹介するレビュー記事にて、「イヤホンにとって小ささは正義」であることを訴えたけれど、その法則がそのまま当てはまる注目すべきイヤホンは他にもたくさん存在する。比較的手の出しやすい価格帯で言えば、同FinalのE2000あたりは、コンパクトなボディでクリアな高品質サウンドが堪能できる文句なしのエントリーモデルだ。現在の市場価格は5,000円を下回る価格で手に入る。

◆HIFIMAN RE800画像

そしてもちろんハイエンド群にも、コンパクトながらとんでもない美音を叩き出す弩級モデルが存在する。それが5月31日に発売となったHIFIMAN RE800だ。

“小さなボディでとんでもない美音”と言えば、2012年12月に約10万円で颯爽と登場したゼンハイザーIE800を思い起こすが、あのサウンドを聞いた時の強烈なインパクトを4年半ぶりに刷新するのが、HIFIMAN RE800の衝撃的に美麗なトーンだ。クリスタルのような透明感とサラッとした上質な肌触りが特筆だが、それでいてぐいっとねじ込んでくるような低域のパンチ力もある。当時、多くのイヤホン猛者をねじ伏せたトップオブトップの音質を誇るゼンハイザーIE800だったが、あれからもイヤホンにまつわる技術は日進月歩で進化を遂げていたわけで、4年半という年月は両者間に大きな溝を生んでしまったようだ。聴き比べてみれば、クリアさ/ビビッドさ/透明感/清潔感において、RE800のクオリティは群を抜いている。

構造的には単にダイナミックドライバーを一発搭載しているだけのイヤホンなのだけど、RE800の音には妥協らしきネガティブ面が感じられない。最も特筆すべき点は、中低域にまで清廉な爽やかさが漂う上質さで、非常に引き締まった鳴りのため低域にはブーミーさや音像の曖昧さが全くない。まとわりつくような濃密な迫力はないけれど、秘孔をピンポイントに突くようなシャープな低域のレスポンスが極上で、いつまでも聴き続けていたい魔性の魅力を放っている。キックやベースが前面で躍る昨今のJ-POPやEDMを楽しむにも、RE800は最適解なのではないか。同時に、心を落ち着けてサウンドに集中すれば、どんな音をももらさず聴き取る事ができる正確性も持ち合わせている。もうそこは、まるでレコーディングスタジオのコンソール前だ。冷徹・冷静に音を再生するモニター機器ではなく、凄まじい描画力をワクワクするような美麗なトーンで楽しめる、最高のエンターテイメント・モニターというべき逸品だ。

ただし注意点もある。残念ながら、高品位なプレイヤーを使用しないと全く良さが引き出されないというトラップに気がついた。iPhoneのような一般的なスマホから再生すると、過剰にメリハリをつけてしまったようなオーバープロデュース気味の派手目トーンに変容してしまい、RE800の実力が発揮されない。再生機との相性はデリケートと見えて、どうやらプレイヤー(DAC/アンプ)の個性を強く引き出してしまう傾向があるように思われる。そう言えば、感度が105dBに対してインピーダンスがちょっと高めの60Ωということもあり、一般的なイヤホンよりも音量が小さいのでプレイヤーのボリュームを上げ目にすることになる。このあたりの作法が、プレイヤーの力量を引き出してしまう一端になっているのかもしれない。ただし、だからこそお気に入りのプレイヤーとの組み合わせにビンゴすれば、どんなイヤホンを持ってこようとも簡単には引き渡せない“My鉄板トーン”が手に入る。ちなみに、私がドンはまりしたのは、AK320と光ケーブルでつなげたChord Mojoからの出力サウンド。パワフル&デリケート、元気ながら繊細。こんなに心地よい音、他にありましたっけ。

もうひとつ老婆心ながら、装着方法も要注意だ。私の場合、後ろから耳に引っ掛けて装着するいわゆるSHURE掛けと呼ばれる装着法じゃないと、ケーブルの付け根部分が耳介と干渉してしまい、耳孔にしっかりと挿入できない。ズッポリと耳孔に突っ込み、外耳道の第二カーブ近くまでイヤホン先端を届かせる装着でベストな状況となる。この状態であれば、高い遮音が確保されるとともに低域から高域まで、すべからくサウンドが脳内を駆け巡ってくれる。耳の大きさや形の問題なので誰にでも当てはまる話ではないだろうが、装着方法やイヤーピースの選択には十分に注意を払って欲しい。

今時のイヤホンだけどリケーブルもできないし、再生周波数帯域は20Hz~20kHzと特筆すべきスペックを有しているわけでもないが、そのサウンドは突き抜けている。ただ、末恐ろしいのはRE800のさらなる上位機種RE2000なるフラッグシップの登場が目前に迫っているという事実。爽やかさと力強さで高域&低域の鮮明さを最大化させているRE800、空気のような自然さでオーガニックな天然極彩色の完璧なバランスを聞かせるAstell&Kern AK T8iE、どこまでもブライトに伸びる澄んだサウンドが無二の音茶楽Flat4…と、ダイナミックドライバーイヤホンにも銘機が増えてきたけれど、RE2000は果たしてどの位置にやってくるんでしょう。これも気になる。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

HIFIMAN RE800
¥82080(税込)
・インピーダンス:60Ω
・周波数特性:20Hz-20kHz
・感度:105dB
・トポロジーダイヤフラム
・真鍮ハウジング
・9.2mmダイナミックドライバー
・銀メッキ結晶銅ケーブル

最終更新:7/4(火) 20:03
BARKS