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転勤、職務転換なし「限定正社員」普及は進むか…正社員との待遇差、雇用の保障は?

7/3(月) 9:52配信

弁護士ドットコム

政府の働き方改革の議論が進む中、企業も週休3日制の導入など、様々な改革を始めている。その1つが、ジョブ型正社員(限定正社員)制度だ。政府の規制改革推進会議でも4月13日、ジョブ型正社員(限定正社員)の普及に向けた公開討論会が開かれた。

この日、配られた資料によれば、ジョブ型正社員は「職務、勤務地、労働時間のいずれかの要素(又は複数の要素)が限定されている正社員」のことだ。会議では、ジョブ型正社員という名称が使われているが、すでに導入した企業によっては「限定正社員」と呼ばれることもある。

働き方の多様性につながる制度ではあるが、導入の課題はないのだろうか。野澤裕昭弁護士に聞いた。

●ジョブ型正社員、導入の課題

「ジョブ型正社員は労働者のニーズ(育児や介護、特定の職務に限定して専門性を発揮したい等)や非正規労働者が正社員にステップアップする通過点として活用する等に有用とされています。

しかし、既に、多くの企業で労働者のニーズに合わせた働き方が導入されており、新たに法制度として新設する必要性が乏しいと言われています。労働組合や厚労省が『消極的』とされる背景にはこうした事情があります」

導入に際して、どのような課題があるのだろうか。

「ジョブ型正社員制度を導入する場合、まず、限定する職務内容が明示されることが必要です(労働条件の明示)。次に、正社員と賃金水準や昇進などの処遇で差を設けることが予想されますが、その差は限定した職務内容に応じた合理的なものであることが必要です。

職務内容によって賃金水準などの処遇に差を設けること自体は法律上の問題はありませんが、ジョブ型正社員であるというだけで賃金を低くすることは不合理な差別になり許されません」

●「最も懸念されるのは整理解雇の対象になること」

ジョブ型正社員から正社員、あるいはその逆など、途中で転換することは認められるのだろうか。

「転換制度は必要です。労働者のニーズに合わせた働き方が目的ですから、ジョブ型正社員となった後も、必要に応じて正社員になる道が残されるべきです。

転換制度では、特に正社員からジョブ型正社員への転換が問題となります。この場合、ジョブ型正社員への転換に伴い、賃金の引き下げ等労働条件の不利益変更をされることが予想されます。労働者の同意なしにこうした転換は許されないとするべきです」

この他、何か懸念される点はないだろうか。

「最も懸念されるケースとしてジョブ型正社員を整理解雇の対象とする場合が考えられます。

処遇面で述べたとおり、整理解雇の場面でもジョブ型正社員であるというだけで優先的に解雇することは決して許されません。ジョブ型正社員も整理解雇の有効要件を満たすかどうか、正社員と同様に検討されるべきです。総じて、ジョブ型正社員という名前で労働条件を曖昧にしたり、差別すること防止することが課題となると思います」

【取材協力弁護士】
野澤 裕昭(のざわ・ひろあき)弁護士
1954年、北海道生まれ。1987年に弁護士登録。東京を拠点に活動。取扱い案件は、民事事件一般、労働事件、相続・離婚等家事事件、刑事事件など。迅速かつ正確、ていねいをモットーとしている。趣味は映画、美術鑑賞、ゴルフなど。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor

弁護士ドットコムニュース編集部