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世界各国の人気キャストが集結。真田広之が映画『ライフ』にこめた想い

7/3(月) 7:00配信

ぴあ映画生活

ジェイク・ギレンホール、ライアン・レイノルズらが出演するSFホラー『ライフ』に、日本が誇る名優、真田広之が出演している。本作は、人類が初めて地球外生命体と出会う瞬間を描いたエンターテインメント大作だが、その奥には繊細な人間ドラマや、哲学的なテーマが描かれており、真田は本作が製作されること自体に大きな意義を感じたようだ。

『ライフ』その他の写真

本作の主人公は、国際宇宙ステーションに集まった様々な分野のプロフェッショナル。彼らのミッションは、火星で発見された未知の生命体を調査することで、生物学や、危機管理など様々な方面から“人類と宇宙生命体の初対面”をサポートしようと奔走する。

真田が演じるのは、クルー最年長の日本人エンジニア、ショウ・ムラカミで、劇中の宇宙ステーション同様、様々な国・地域、キャリアの俳優6人が集まった。「映画の設定にリアリティをもたせるために様々な国から俳優が集まるのは、理想的な環境ですから、そこに自分が参加できる喜びとプレッシャーがありました。現代において、国境や宗教を超えて何かを成し遂げようとすることは大事だと思いますし、いい作品を生み出すモデルケースにもなり得るわけですから、作品の内容以前に、このプロジェクト自体に大きな意義があると脚本を読んだ時から感じていました」

映画は、未知の宇宙生命体が想像もできない進化を遂げていき、逃げ場のない密室=宇宙ステーションの中で、6人の登場人物がこの生命体の進化の行方を見守るべきか、それとも危険とみなして死滅させるべきか迷いながら行動する様が描かれる。ポイントは、この映画が単なる“危険なエイリアンからの逃亡”を描くのではなく、地球で暮らす人類の代表として使命を背負ったクルーがそれぞれの立場で考え、判断し、時に衝突する様を描いていることだ。「それこそが監督が目指したリアリティだと思います。登場人物全員が違う立場から意見を述べて、最終的に責任者が判断するわけですけど、その先にはいつも“人類のために”という目的がある。そういう意味では、この映画は哲学的な要素が含まれているんですね。この先、人類が未知の生物に遭遇するかもしれないわけですけど、それはこちらの出方次第で、敵にも味方にもなり得るわけです。もしかしたら、穏やかに眠っていたかもしれないのに、人間のエゴや快挙を成し遂げたいという欲によって、危険な生命を復活させてしまうこともあるかもしれない。人類は、ひとりひとりの判断を積み重ねて、地球そのものを揺るがすような存在に立ち向かうことができるのか? 監督はそんなテーマに観客の思考が向くように、あえて物語をシンプルにして、タイプの違うキャラクターを散りばめて人類の象徴にしたんだと思います」

そんな中で、真田が演じるムラカミは、他のクルーよりも個人的なドラマや内面の葛藤が深く描かれている。「僕の演じた男は、なかなか出来なかった子どもが年齢を重ねた後に期せずして生まれて、地球上に新たな生命=ライフが誕生したのと同じタイミングで、未知のライフ=エイリアンも目覚めてしまう。最年長のクルーですから、最も経験があって、冷静沈着でないといけないわけですけど、自分に子どもが生まれたことで、喜びと同時に不安や恐怖を感じてしまうんですね。冷静に任務を追求しなければならないけれど、生きて地球に帰りたいと思うと臆病になったり、保守的になってしまう。ムラカミには、そんな人間的な葛藤や板ばさみの感覚が描かれていますから、監督と話し合って、心の葛藤やバランスを重点的に吟味しながら演じました」

興味深いのは、それら様々な感情をすべて“無重力状態”で演じていることだ。撮影現場では無重力を表現するため、俳優は身体をワイヤーで吊られた状態で演技しているが、真田は、任務から離れてリラックスした時間や、恐怖でこわばっている状況、無駄なく任務を遂行する場面の“身体の状態と動き”を的確に演じ分けている。「ワイヤーの存在を忘れるまで演技を積み上げていくことがすべてだと思いますが、僕の場合はもう40年ほど吊られてますので(笑)。これまではアクションだったり激しい立ち回りで吊られることが多かったのですが、撮影中の待ち時間は、自分がいかにワイヤーに自然に対応して、重力を感じない感覚を身につけられるかが勝負なんですね。ですから、これまで経験してきた長い待ち時間によって得たものが、今回の映画には生かせたと思います」

激しく跳躍したり、飛行するのではなく、重力がない状態でゆっくりと身体が回転したり、無重力で身体が想定外の動きをする様子まで真田は繊細に表現しており、監督は“マエストロ”と呼んでその演技を賞賛したが、真田は「でも、その結果、難しいフライングのシーンは全部、僕のところに回ってくるんですよ」と笑顔を見せる。「激しいアクションでは、短い時間にすべてをかけますけど、この映画では長い時間、無重力の状態を維持するので、身体のすべてのパーツ・筋肉で重力を感じさせてはいけないですし、ワイヤーを操るチームと息が合わないと、観客に重力を感じさせてしまうんです」

以前から真田は、自身の経験や技術を作品に投じ、多くの映画人から信頼を集めてきたが、本作でも“出演者”以外の部分で、多大な貢献があったようだ。「撮影が始まる前のリハーサルに時間を費やして、ワイヤーを吊るチームとのコミュニケーションを大事にしましたし、何よりもワイヤーのセッティングが重要になりますから、監督から要望を聞いて、『それならば、この方法でワイヤーをセットした方がいいよ』とアドバイスするようになり、いつしか自分の出番のない日も、他のキャストのワイヤーのセッティングだけして、家に帰ってましたね。でも、僕はずっと、飛んだり跳ねたりだけがアクションではなくて、アクションとは演技にまつわる動きすべてのことだと思ってやってきましたから、これまでの経験を活かせる場があることは、とても幸せなことでした」

宇宙ステーションのクルーが個人的な感情や迷いを超えて地球のために行動するように、真田も“キャスト”の枠を超えて映画のために行動し続けている。その想いはどこで芽生え、覚醒し、成長していったのだろうか? 「何か大きなきっかけがあったわけではなくて、ひとつひとつ経験することで、そう思うようになってきたんですね。口を挟まないでいようと我慢した結果、失敗したこともありますし、自分が参加したことで作品全体が良くなったこともある。その積み重ねですね。自分の経験や技術は日本で培われたものですけど、海外に行っても『やっぱり映画屋はどこの国に行っても映画屋だし、舞台人はどこの国でも舞台人だな』と信じられるようになったんです。そうして、自分が日本で得たものを海外で重宝がってもらえたら、自分を育ててくれた日本への感謝にもなりますし、向こうの人たちに日本を認めてもらうチャンスになるかもしれない。単身で海外に飛び込んだことで、その想いが増幅された部分はあると思います」

『ライフ』
7月8日(土)丸の内ピカデリー他全国ロードショー

最終更新:7/3(月) 7:00
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