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「このままでは幻の味に」生産ピンチ『高倉びわ』、収穫量1/5に 福岡県内最大の産地

7/3(月) 10:52配信

西日本新聞

 1世紀以上の歴史を誇る福岡県岡垣町の特産品「高倉びわ」の収穫量が、高齢化に伴う耕作放棄地の拡大で減少を続けている。今年は約30トンの見込みで、約30年前の全盛期の5分の1以下に落ち込む。関係者は「このままではいずれ幻の味になる」と新規就農者の獲得に動くが、今のところ成果は限定的だ。町のイメージキャラクター「びわりん&びわすけ」の由来ともなった県内最大のビワ産地の現状を探った。

⇒【画像】「びわりん」のイラストを描いた段ボール

 木の幹にはツルが幾重にも巻きつき、樹肌は害虫に食い荒らされている-。数年前に放棄された同町高倉のビワ園は荒れ果てていた。「町役場から5分の立地でもこうなんです」。JA北九おんがびわ部会の俵口徹部会長はため息をつく。

 岡垣村(当時)で本格的にビワ生産が始まったのは1903年。気候が似た千葉県から取り寄せた苗20本を植えた。水はけが良いなど生育に適した西部山間部沿いで栽培が広がり、大正、昭和初期に拡大。「高倉びわ百周年記念誌」によると、太平洋戦争の影響で一時激減したが、戦後は新しい品種を導入しながら生産量を増やし、ピークの90年には農家130軒が約153トンを生産した。「水田が少ない地域で米より高く売れるビワは収入源だった」(俵口部会長)という。

「平均年齢70代」

 だが、バブル経済崩壊による不景気や、冷害や日照不足による凶作で生産者が減少。「平均年齢70代」(同部会)という高齢化が耕作放棄者の増加に拍車をかけ、現在は37軒に減った。2016年の栽培面積は1992年比で約74%減の8・5ヘクタールに縮小している。

 高木のビワの生産適地が傾斜地であることも、高齢農家が生産を続ける上で大きな障害だ。同部会は「年寄りが山道で重い肥料を担ぐのは厳しい」。JA北九によると、高所の実に袋かけする作業中の60代女性が昨春、はしごから落ちて負傷。その年の生産はあきらめた事例もあるという。

若手の参入が厳しい現実

 町やJAは近年、新規就農者の獲得に力を入れる。2014年から1年間で基礎を学ぶ「生産塾」を立ち上げた。3年間で20人が受講し、10人が放棄園の一角を借りて栽培をスタート。今季はそのうち5人が出荷した。ただ、「大半が定年退職前の世代。長期間の生産は難しい」(JA北九)という。単価が安く、利益も大きくないため、若手の参入が厳しい現実がある。

 全国的に低い認知度も悩みの種だ。JA北九は昨年から「びわりん」のイラストを描いた段ボールを使うなどPRに励む。だが「高倉びわ」は町内で収穫されたビワの総称で、多様な品種を含み、味や規格の統一ができないことがブランド化を進める上でネックだ。

 若手の就農を増やし、どうブランドを確立していくのか。試行錯誤は続く。

西日本新聞社

最終更新:7/3(月) 10:52
西日本新聞