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大阪維新、都構想を本格化

7/3(月) 14:00配信

ニュースソクラ

来年の再投票めざし協議会を設置

 東京都議選が23日告示されたが、地域政党の小池新党、都民ファーストの会が協力する公明党と共同で過半数を取れるかが最大の焦点だ。注目を集めた地域政党としては“先輩”なのが大阪発祥の「大阪維新の会」。大阪維新の会はいま何を目指しているのか。実は、改めて大阪都構想の復活を狙っている。

 大阪市を廃止して特別区に分割し大阪府と合併する「大阪都構想」が住民投票から2年。2015年5月17日に行われた住民投票は反対多数となったにもかかわらず、大阪ではまた、この都構想が実現に向けた法的手続きのレールに乗り、いよいよ「復活」が本格化して来た

 大阪府市両議会で大阪維新の会と公明が賛成し「大都市制度(特別区設置)協議会」(通称・法定協議会)の設置が決まったのだ。大阪市議会は5月26日、大阪府議会は6月9日の本会議で可決された。

 松井一郎・大阪府知事と吉村洋文・大阪市長ら大阪維新の会の政治家にとっては、大阪都構想「再スタートの号砲」が鳴り、自民、共産など反対派にとっては「悪夢の再来」が始まった。

 法定協議会の再設置は、時計の針が2013年2月ごろに逆戻りした状況と言える。2012年8月に民主党政権下で成立した大都市地域特別区設置法に基づくもので、大阪都構想実現のためには設置が必要だ。

 大阪府知事、大阪市長、大阪府議、大阪市議の計20人で構成するこの法定協議会で今後、大阪市域を幾つの特別区に分割するのかなど具体的な制度設計が話し合われる。

 松井知事、吉村市長は「大阪都構想のバーションアップ」を掲げ、今度の法定協議会では前回より進化したプランを作るとアピールする。

 一方、共産党大阪市議団の山中智子幹事長は「バージョンアップなんて言葉だけで、大阪市の権限と財源が大阪府に取り上げられるという大阪都構想の致命的本質は同じ。法定協議会では大阪市を廃止する大阪都構想は市民にとって百害あって一利無しだと改めて主張していく」と話す。

 自民党大阪市議団の黒田當士(まさし)幹事長も「前は大阪市を5つの特別区に分割する案だったのを、今度は4つに分割する案に変更するのではないか。5つの特別区分割案では、大阪湾沿岸エリアの名称を『湾岸区』としたのが市民に評判が悪かったので、今度は『西区』にするとか、いずれにしてもマイナーチェンジをバージョンアップと装うつもりだろう」と分析する。

 市民の間には、2度目の法定協議会の設置は、よくない前例を大阪から作ってしまったとの声がある。民意を問うために住民投票を実施しておきながら、都合の悪い投票結果になった場合は、何度でもチャレンジできるというのは政治的なロスを生み出しているだけではないかという意見だ。

 5月26日の大阪市議会本会議の討論で、大阪維新の会の宮脇希(のぞみ)市議は「住民投票が2度できないのであれば、今後、良い計画が生まれても採用されない。地下鉄民営化も議会で何度も否決された後、自民、公明も賛成して成立した。議論したことでより良いものが生まれたのであり、住民投票も同じ」と述べた。

 これはいかにも維新らしい発言だ。地下鉄の民営化に関して住民投票はしていないのに、住民投票を実施して否決された大阪都構想と同列に論じるのは乱暴だろう。

 大阪市議会で法定協議会設置の議案が維新と公明の議員が起立して可決された際、傍聴席からは「これで市民の目にはっきりしましたよ。大阪市を無くすことに維新と公明は責任持てるんですね」と怒号が飛んだ。

 公明はもともと大阪市を廃止して特別区にする大阪都構想に強く反対していた。2013年2月に開始した最初の法定協議会は公明も含め維新以外の議員はすべて反対なので何も決まらず、松井知事や橋下徹・前大阪市長らは、野党議員を法定協議会から追い出す乱暴な手法を使った。

 維新のメンバーだけで「大阪市を五つの特別区に分割する」「これに賛否を問う住民投票を実施する」という内容の特別区設置協定書を作成した。しかし、大阪府市両議会で維新は与党ではあるものの過半数はないため、2014年秋に両議会は特別区設置協定書案を否決して大阪都構想は一旦、消えた。

 状況が変わったのは2014年末の衆院選。松井知事と橋下前市長は「公明党の議員がいる大阪府内の選挙区から自分たちが出馬する」と公明を揺さぶったのだ。公明と維新が組めば、大阪府・市の両議会は過半数を確保できる。

 維新の脅しに縮み上がった公明は「大阪市を廃止する大阪都構想には反対だが、特別区設置協定書の是非を問う住民投票には賛成」というややこしい方針に転換し、2015年3月、大阪府市両議会に再び提案された特別区設置協定書案に賛成し、2か月後に住民投票という慌ただしいスケジュールになだれ込んだ。

 都構想反対派が特別区設置協定書を「死んだものが蘇ったゾンビ」と命名した所以はここにある。しかし、まさか住民投票で否決されても蘇るゾンビだったとは、当時は誰も予想しなかった。

 2014年末の衆院選を境に公明は、維新と距離を取っているように見えて、議会の議決が必要な場面になると臆面もなく維新にすり寄ることになった。自民の黒田幹事長は「公明の常套句は『現時点では』と『今の所は』。このセリフで煙幕を張って維新寄りに態度を変える」と憤る通り、今回の法定協議会でも公明の方針が議論の行方を左右する。

 さて、2013年2月に前回の法定協議会が始まった時点と今回で、大阪の環境が一つ大きく変わっている。大阪府・市で万博を誘致している点だ。万博の開催地は2018年11月に決定するが、松井知事、吉村市長らは大阪都構想の住民投票も2018年秋の実施を目標としていてスケジュールが似通っている。

 共産市議団の山中幹事長は「万博開催のためにはインフラ整備が必要であり、そのためには大阪都構想が必要だとこじつけて両方を推し進めるはず」と話す。

 一方、自民市議団の黒田幹事長は「万博を開催するなら大阪市も費用負担しなくてはならないのに、知事や市長は万博を誘致しながら大阪市を無くそうともしている。開催が決まったら費用負担はどうするつもりなのか」と疑問を呈する。

 また、2年前の都構想に関する住民投票で大阪市民は反対派と賛成派に真っ二つに割れて火花を散らし、結果は反対70万票、賛成69万票という僅差。言わば大激戦だった。

 それが再び繰り返されようとしていることに黒田幹事長は「万博を誘致している自治体で、市民が大阪都構想に賛成か反対かでもめていて、そもそも自治体が無くなるかもしれないなんて、開催地候補としては大きなマイナス要因。この点は吉村市長にもどう考えているのか問うたが、返答はなかった」と言い、「つまり、維新は万博誘致に本気であれば、都構想は本気じゃないし、都構想に本気だったら万博は本気じゃない」と見る。

 万一、2018年秋の住民投票で賛成多数となって大阪市の廃止が決定し、同年11月に大阪市での万博開催が決まったら、大阪は大混乱の嵐に見舞われるだろう。松井知事、吉村市長はどう考えているのか。議会の各会派もさまざまな思惑が入り乱れながら、6月27日に2度目の法定協議会の幕が開く。

■幸田 泉(ジャーナリスト)
立命館大学理工学部卒業。1989年に大手新聞に入社。大阪本社社会部で大阪府警、大阪地検など担当。東京本社社会部では警察庁などを担当。2012年から2年間、記者職を離れて大阪本社販売局に勤務。2014年に退社し、販売局での体験をベースに書いた『小説・新聞社販売局』(2015年9月、講談社)がその赤裸々さゆえにベストセラーに。

最終更新:7/3(月) 14:00
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