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プーチン氏は80%台の高支持率、抗議デモ多発、経済マイナス成長でも

7/3(月) 17:40配信

ニュースソクラ

プーチン大統領の支持率は、なぜずっと高いのか?

 米国の世論調査機関、ピュー・リサーチ・センターが先週20日に発表したロシア市民を対象にした調査報告によると、ウラジーミル・プーチン大統領の外交政策への支持率は87%だった。

 また、ロシアの民営調査機関、レバダ・センターによると、プーチン大統領の支持率はここ2年余り8割を超えて推移している。直近の5月調査の支持率は81%。いずれも極めて高い。

 その一方で、今月12日にロシア全土で数万人が参加して政府の汚職を糾弾する集会・デモが展開された。3月にも同様の抗議デモがあった。またロシア経済は過去2年、マイナス成長を続け、市民生活は目立って苦しくなったとは言えないが、今ひとつさえない状態が続いている。それなのになぜプーチン大統領の支持率は高いのか。

 「ピュー」は今年2月18~4月3日、ロシア各地で1002人を対象に面会方式で世論調査を実施した。それによると、プーチン大統領の外交政策に「ある程度、あるいは高い信頼」を置いているという回答は87%。対中政策はもちろんのこと、悪化の一途をたどる対米政策への評価も高い。

 この世論調査は国内問題についての見解も聞いており、経済の現況を「良い」とみる人は46%、「悪い」が49%。判断は分かれている。

 国内問題の中で「大変大きな問題」として最も多くの人が挙げたのは、物価上場(71%)。以下、政治家の汚職、雇用機会の不足、テロリズム、貧富の格差、犯罪、財界人の不正の順。

 一方、レバダ・センターによるプーチン大統領の5月の支持率は81%だが、急に跳ね上がったわけではなく、ここ2年以上、80%を上回ってきた。

 ロシア経済は2015~2016年に不振が続いた。2015年の実質成長率はマイナス2.84%、2016年はマイナス0.25%。2年連続でマイナス成長だった。石油価格の低下が主な理由。それに米欧諸国を中心にした対ロ経済制裁の影響もある。

 6月12日の反政府抗議デモは主に汚職の撲滅を掲げ、「ピュー」の調査にあるように、汚職対策への市民の不満は強い。

 このほかにも最近ではモスクワの老朽化アパートの取り壊しなど再開発計画や大型長距離トラックを対象にした道路通行料徴収措置に反発するデモが起きている。

 プーチン支持率は下がっても良さそうだが、そうなる気配はない。ロシアが現在かかえる汚職や経済的な問題はプーチン支持率とは関係ないというのが実態だ。

 その理由について様々な議論が可能だろうが、ここではまず、ロシアが「外敵」にさらされ、「強い指導者」であるプーチン大統領の下に結束して対処しなければならないとの意識が強いことを指摘したい。

 「レバダ」によると、プーチン支持率は2014年春のクリミア併合などウクライナ危機が起きる前、例えば2013年11月には61%だった。それでも十分高いのだが、ウクライナ危機、その後の米欧による対ロ経済制裁の実施をきっかけに一気に80%台に跳ね上がった。この出来事がロシアのナショナリズムを一段と強めたことが考えられる。

 加えて、そもそもロシア国民には歴史的にロシアは大国であるとの意識が強いとの要因もあろう。大国ロシアの象徴がプーチン大統領であり、彼はころころ変わる政治指導者の1人ではないと受け止められている。

 つまり、ロシアのナショナリズム、あるいは大国意識のバネが働いているとみる。

 次にプーチン大統領は日々の経済政策を司る政府とは別の存在だとみる人たちが多いことも指摘したい。大統領はすべての政策を統括するのだが、経済政策の直接の担当はドミトリー・メドベージェフ首相。経済政策でヘマがあってもそれは大統領のせいではないということになる。

 米欧、そして日本のメディアの中には、ロシアではクレムリンが主要報道機関を統制、親プーチン記事を垂れ流しており、それが彼の支持率を高める効果を与えているとの見方がある。確かに三大テレビ・ネットワークは政府の強い影響下にあり、国民が「洗脳」されてしまうのかもしれない。

 だがその一方で、ロシアの報道機関が全て国の統制下にあるわけではないし、CNNやBBCなど米欧のテレビ放送も視聴できる。中国のようにインターネットも特に強く規制されているわけではない。政府による報道統制だけでプーチン支持率の高さを説明するには無理がある。

 世論調査が操作されているのではないかとの疑問も湧くかもしれない。ロシアには「ロシア世論調査センター(VTsIOM)」と「世論基金(FOM)」という国営の世論調査機関があり、それらに対してはクレムリンによる操作があり得ると疑念を抱きたくなるかもしれないが、「レバダ」は民営だ。それに「ピュー」は米国の会社だ。

 ロシアでは他にもギャラップなどの外国世論調査機関が調査を実施している。これらの機関がプーチン大統領の支持率を意図的に引き上げるよう操作しているとは思えない。

 世論調査に正直に回答した場合、何らかの処罰を受ける可能性があるので本音を言わないのだろうとの疑念もあるかもしれない。今のロシアがスターリンの大粛清時代とは言わないまでも厳しい監視社会が存在したソ連時代に近いという見方だが、これもうがち過ぎだろう。

 プーチン大統領の支持率が高いことは、彼を好きだとか嫌いだとかという問題とは別に認めなければならない。

 ではアレクセイ・ナワルヌィ氏など反体制派の支持率はどうか。6月12日にナワルヌィ氏が主導した集会・デモは、確かに近年では比較的大規模だった。だが、彼の運動の支持基盤はプーチン大統領に脅威を与えるほど広がっていない。反体制運動の内部は左右両派が入り乱れ一つにまとまっているわけではない。

 国際通貨基金(IMF)は先月、ロシアの今年の実質経済成長率見通しを1.4%へと引き上げた。前回、昨年10月に発表した見通しでは1.1%だった。今はプーチン大統領の支持率を下げるきっかけを捜すことは難しい。

 ロシアでは来年3月に大統領選が実施される。プーチン氏が出馬するのであれば(恐らく出馬するだろう)、当選は間違いない。

■小田 健(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。
現在、国際教養大学客員教授。

最終更新:7/3(月) 17:40
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