ここから本文です

生後113日で娘を亡くした母の思い 抱っこ忘れられず

7/3(月) 17:56配信

福井新聞ONLINE

 「子育て中に自分を責めることがあったら、こんなに元気に育てていてすごいと自分をほめてあげて」―。13年前、出産時の医療事故により、生後113日で娘の姿月(しづき)ちゃんを亡くした福井市の認定心理士、矢代恵利さん(42)は、福井新聞社と福井の母親らが運営する子育てグループ「ふくまむ」が開いた「お話会」でこう呼びかけました。わずかの期間ながらも濃密な母子のふれあいと、そこからはぐくんだ強い絆を語り前を向く矢代さんの姿に、集まった母親たちは「子どもがいる、当たり前のようで当たり前ではない幸せ」について思いをはせました。

 姿月は出産時の事故で脳に酸素がいかず、生まれてすぐに別の大きな病院へ搬送されました。初めて対面したのは点滴の管や人工呼吸器を付けた姿。ショックというよりも、いとおしくていとおしくてしかたがありませんでした。お医者さんは「2~3日が山です」と言いました。

 ●   ●   ●

 母乳が出ても与えることができません。生後3日目、胸がカンカンに張り、主治医から「(母乳を)止める薬を出そうか?」と聞かれました。でも、いつか姿月の体の中に入れたい。その可能性を信じ、搾乳をすることに。キッチンで搾乳して冷凍庫へ。毎回、泣きながらの作業でした。

 子どもは動く、笑う、泣く、寝る…。姿月にはその「当たり前」がありません。でも生後10日ごろ、少し体を動かしました。その5日後、母乳を1ミリリットルずつ、鼻のチューブから注入してもらえました。姿月も、当たり前を手に入れるために保育器の中で必死に生きていました。

 たった一人での1カ月検診。気持ちが沈み、自分の体なんてどうでもいいと思った。そんな気持ちを医療スタッフが察してくれたのか、初めて抱っこさせてもらえました。抱っこすると愛情が伝わると言いますね。姿月も、跳び上がるくらいうれしかったと思います。重さ、ぬくもり、におい…。忘れられません。その時のビデオがあるのですが、まだ見ることができません。80歳くらいになったら見られるかなと思っています。

 保育器を女の子の部屋のようにかわいく飾り、小さな窓から毎日いろいろな話をしました。息の仕方、おなかの中にいたころのこと、外の様子、などなど。

 ●   ●   ●

 でもその間、早く楽にしてあげた方がいいのではないか、生きてほしいのは私のわがままなのではないかと悩みました。きっと正解はないし、今も答えは出ていません。

 流産や死産、新生児死など「おめでとう」と言ってもらえないお産を経験したお母さんは、自分を責めてつらい思いをします。誰も悪くはないんですけどね。

 元気な子どもを持つお母さんも、イライラして子どもに当たってしまい、自分を責めることがあるでしょう。そんな時は「こんなに元気に、やんちゃに成長させてあげられている。すごいなぁ」と自分をほめてあげてほしいです。

 5月の末、初めて姿月が夢に出てきてくれました。私のベッドですやすやと寝ている姿月を抱っこしました。今まで頑張って生きてきてよかったと心から思えました。

福井新聞社