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「消滅可能性No.1」群馬県南牧村 本当に消えゆく村なのか?訪ねてみた

7/3(月) 11:33配信

西日本新聞

 数年来、群馬県南牧(なんもく)村はマイナスイメージで全国一注目される自治体ではないか。民間シンクタンク「日本創成会議」(増田寛也座長)が2014年に発表した896の消滅可能性都市の中で最も消滅の可能性が高いとされ、15年の国勢調査でも高齢化率が60・5%と日本で1番高いという結果が出た。南牧村は人口減社会の“象徴”のように、本当に消えゆく村なのか? 住民たちは何を思い現状と向き合っているのか? 訪ねて歩いて考えた。隣町の同県下仁田町の副町長で、「ここで生きるネット」メンバーでもある吉弘拓生さんにも同行願って、見たこと感じたことを語ってもらった。

⇒【地図】群馬県南牧村はどこにある?

「今できること」を熱心に

 南牧村役場の会議室は熱を帯びていた。5月9日午後7時過ぎ。住民グループ「南牧山村ぐらし支援協議会」のメンバーが、今後の活動を協議していた。都内である移住相談会の対応、空き家調査の段取り、広報誌の次号の内容-。

 「『今できること』は何か、知恵を出し合っています」。協議会の金田鎮之会長(45)が語る。6年前、協議会発足と同時に村内の空き家調査に乗り出した。1758戸のうち368戸の空き家があると分かり、居住可能な一部を「古民家バンク」に登録。移住希望者に情報提供を始めた。

 当時、「消滅可能性都市」の言葉はなかった。金田さんらは未来を心配していた。「私の小学校の同窓生は44人だが、今は全校児童が30人足らず。危機感がありました」。自然な流れだった。

 金田さんは創業140年の和菓子店の当主でもある。南牧産の炭を使った「炭まんじゅう」を開発するなど特産品づくりにも力を入れる。だから消滅可能性都市の発表に接したとき、「人ごとのようでした。『だって今(村は)あるじゃん』って感じです」。自然と闘争心が芽生えた。

高齢化の恩恵

 東京から新幹線と私鉄を乗り継いで下仁田まで約2時間、下仁田から車で20分。南牧村は意外と近い。村の光景は、九州の山村によく似ている。清流と緑の山々、傾斜地に点在する家々。そんな風景にひかれて佐藤従基さん(51)が移住したのは14年前。木工房を開き、家具づくりに励む。

 東京から村を訪れたとき、担当職員の言葉に背中を押された。「ほかの自治体では、田舎暮らしの良いところしか説明しない。だが南牧では、自然の厳しさやコミュニティーを築く難しさを話してくれました」。佐藤さんは協議会の一員として各地の移住相談会に参加し、村の厳しさや課題も語る。「腰掛けでなく、ずっと南牧に住み続けてほしいと願います」。移住の“先輩”の言葉には重みがある。

 田中陽可さん(25)は村で最も若い移住者だ。東京の高校を卒業後、米国の大学へ留学し、農業への関心を深めた。帰国後、地域おこし協力隊員として南牧村に。農家の手伝いなどをしながら2年間過ごし、今春から6反(約60アール)の畑を借りて一本立ちした。

 村の農業の担い手は大半が高齢者で80代の現役も少なくない。75歳以上が人口の40%を占める村の現状だ。「みなさん何十年もかけて習得した技術を、惜しげもなく教えてくれます。植え付けや手入れを助言に来てくれます」。田中さんは、「お年寄りばかりの村」の恩恵を感じている。

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最終更新:7/3(月) 13:45
西日本新聞