ここから本文です

ダニによる感染症、予防にニワトリ?

7/3(月) 16:47配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 米メーン州中部では、ヘラジカがダニの犠牲になることもある。だが地元の小さな農場で暮らすリサ・スティールさんの愛犬2匹は、ダニの被害を受けたことがほとんどない。

 「プロのチキン愛好家」を自負するスティールさんによれば、それは農場で飼う10羽のニワトリのおかげだ。チョコレート色の大きなオーピントン鶏を含む10羽は、目に入るすべての虫を食べ、掃討作戦のごとく地面をつついたりひっかいたりし、動くものはすべて始末する。

 スティールさんのように地元の食材やオーガニックフードの消費を好む人が増える一方で、ダニが感染源となるライム病を恐れる人もいる。家庭でニワトリを飼えば、一石二鳥で問題解決となるのではないかーー。夏を迎えた今、米国でニワトリを飼う人の多くがそう考えるようになった。ただしニワトリがダニ対策に有効であるとする科学的根拠は乏しいのも事実だ。

 血を吸うことで知られるダニは以前から問題だったが、温暖な冬の気候や寄生するシカやネズミの数が増えたことで、今年は例年以上にダニが多いとする研究者の声もある。中でも米北東部はダニの大量発生が危惧されている。

 米疾病予防管理センター(CDC)の推計によれば、米国では年間で30万件のライム病感染が毎年発生する。これは20年前の3倍の数だ。ライム病にかかれば赤身肉にアレルギーが出る場合もあり、ダニによって媒介される感染症への関心は市民の間でも高まっている。

 その中でスティールさんは「化学品を使った殺虫スプレーが答えではない」とし、ダニ対策には「自然界のプレデターが必要だ」と話す。

「経験から分かっている」

  CDCは国民に対し、ダニにかまれないよう予防策を採るよう注意し、丈の高い草やぶを避けることや、自宅の芝生と雑木林の間に木材チップを敷いてバリアーを作るよう勧めている。ただしニワトリが効果的な対策かどうかは「専門分野外だ」として、コメントは避けた。

 「効果があると経験から分かっているため、研究する必要はない」と話すのは、メーン州の農家のスティーブン・ビブラさんだ。ニューイングランド地方の住民はダニによる感染症の拡大を恐れ、ビブラさんが育てるニワトリも飛ぶように売れている。農場で販売するのは「ニワトリの中でもエリート集団」とされる小型のもので、ダニの始末には最適だという。

 人口約4400人のニューヨーク州ファイエットビルでは昨年9月、住民が12羽までニワトリを飼うことを町が許可した。ファイエットビルは州北部の公園と面しているため、何年にもわたってダニの被害に遭っていた。自宅の裏庭で遊んでいた子供がライム病になったケースもあると町の役人は話す。

 ファイエットビルではダニが寄生するシカを処分するため、過去には射撃の名手も雇った。それでも住民から苦情が続いたため、ニワトリも対策の一環として投入された経緯がある。町民はニワトリもダニ対策として利用できることを好意的に受け止めたが、ニワトリを飼う申請書は6月29日の時点でまだ一通しか来ていないという。

 ファイエットビルの住民にニワトリについてプレゼンテーションをした農家のエリン・ハルさんは、ニワトリが「餌のためならかなり攻撃的になることがある」と話し、「動くものがあれば、ニワトリは攻撃をしかける」と続ける。ニワトリを飼うためのガイドブックを執筆したパトリシア・フォアマン氏も、ニワトリは清潔な鶏舎や水があれば容易に育てることができ、「猫を飼い続けるよりも簡単」だと話す。

 ニューヨーク州ノースヘンプステッドは、25羽のウズラを地元の生活圏近くにある森林に放ってダニの発生を抑えようとしている。ただしウズラは飛んで逃げるため、裏庭で飼うのには向いていない。

ニワトリの効果に疑問の声も

 ダニ対策としてニワトリなどが有効だとする考え方に、一部では疑問の声も上がっている。「ニワトリを飼っているからライム病にはならない、という考え方は危険だ」と話すのは、ニューヨーク州のポールスミスカレッジで教える生物学者のリー・アン・スポーン氏だ。

 スポーン氏によれば、ライム病の原因となるバクテリアが野鳥に寄生するケースもこれまでに少なくともひとつの研究で判明している。またニワトリに寄生するダニもいる中で、ニワトリがダニ対策には最適であるとする確証もない。「人間と、飼っている鳥が不適切な形で接すれば」健康に問題が生じる可能性もあるとスポーン氏は話す。

  ウエストバージニア大学でダニが媒介となる疾患を研究するティモシー・ドリスコル氏は、ダニ対策として鳥を飼うことが有効かを調べた研究が少なく、そのほとんどはニワトリではなくホロホロ鳥を対象としたものだと述べる。

 研究によればホロホロ鳥はライム病に感染したダニの成虫を大量に食べる可能性があるが、人間にとってより危険なポピーの種ほどの大きさのダニの処理には向いていないとドリスコル氏は言う。それらの処分には有袋類のオポッサムが最適だが、「残念ながらオポッサムは道路に出て行ってひき殺される傾向が強い」と同氏は話す。

 酪農家のキース・イングランドさんはペンシルベニア州ウィリアムズバーグにある5エーカーほどの所有地で、ダニ対策として15羽のホロホロ鳥を飼っている。鳥の数が少なくなるとダニがたちまち増えるため、再び鳥によるパトロールを強化し始めたところだ。

 だがホロホロ鳥は敏感で鳴き声も大きく、「UPSの配達人、来客、そして犬とは仲良くできない」性格だと、メーン州の農家のビブラさんは話す。

 ペンシルベニア州ハーシーに土地を持つウィル・ニードさんは、敷地の一部が森林になっているためニワトリを飼うことを検討している。ここ数カ月はダニ被害の拡大が気になり、4人の子供を毎晩チェックしているという。

 ニワトリを使ったダニ対策の効果について、ニードさんは「うまくいかなくても卵と夕飯にはなるだろう」と考えている。

By Anupreeta Das