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養護学校を地域で支えて10年 横浜

7/3(月) 12:03配信

カナロコ by 神奈川新聞

 子どもたちの個性が輝く地域に-。知的障害児が通う県立鶴見養護学校(横浜市鶴見区)を地域で支える活動が、10年の節目を迎えた。地元の住民でつくる「学校後援会」の取り組みは、学びの場と児童生徒の表情を明るくし、障害者に対する心の壁も壊してきた。「精いっぱい個性を発揮して生きる子どもたちに、住民が学ばされている」。昨夏の悲劇から間もなく1年、関係者は多様性社会を育む小さな芽の広がりに期待を寄せる。

 「こんにちは!」「一人で大丈夫?」。登下校を見守る大人たちが掛ける声に、子どもたちは元気にハイタッチをしたり、そのまま通り過ぎたり。顔見知りの住民は皆、それぞれの「個性」と受け止めて優しいまなざしを向ける。

 小・中・高等部で計約240人が通う鶴見養護学校。後援会設立のきっかけは、当時の校長が打ち明けた「開かれた学校にしたい」とのひと言だった。近くの常倫寺住職の学校評議員(50)が地元の自治会長らに声を掛け、2007年3月に活動を始めた。

 当初100人ほどだった会員は約130人に増え、学用品や防災備品の寄贈をはじめ、校庭の草刈りや校舎内のペンキ塗り、近くの畑でのサツマイモ栽培など、さまざまな活動を展開。閉ざされがちだった学校は活気づき、コミュニケーションが苦手な子もあいさつを交わせるようになった。校内外の作業は、生徒の卒業後の進路に役立てる社会体験の場にもなっている。

 「知的障害の特性を理解することで互いの信頼が生まれてくる。障害がある子もない子も、みんな『地域の宝』だと誰もが思えるようになった」。会長は、学校を知らなかったことで少なからぬ不安があった地元の変化を実感する。

 住民の献身的な支えに学校側も応え、今では双方向の支援関係が生まれている。地元の消防団に教職員15人が加わり、毎月1度は訓練を学校で実施。災害時は自主的に「避難所」として機能するよう整備を進めるなど、周辺の小中高校とともに地域に欠かせない交流拠点として存在感を増している。

 県教育委員会によると、県内の特別支援学校28校のうち、後援会組織があるのは5校のみ。平塚盲学校(平塚市)に次ぐ歴史がある鶴見以外は卒業生や父母、教職員OBらによる活動で、自治会を中心とした住民が支えるケースは例がないという。

 校長(56)は「地域に溶け込むことで子どもたちに社会性が育まれ、生き生きとした表情で学校生活を送れている。地域と学校をつなぐ大切な『懸け橋』を将来に受け継いでいきたい」と語る。

 1日夜、横浜市内で開かれた10周年の記念式典。県教委の教育長から感謝状を受け取った会長は昨年7月に発生した相模原殺傷事件に触れ、力を込めた。「学校を支える活動を通じて地域が一つになれた。不幸な出来事を乗り越えるため、障害者への理解を広げていくことも私たちの使命」