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松田知幸、本職50Mピストル削減乗り越え…エアピストルでメダル狙う

7/4(火) 11:03配信

スポーツ報知

 20年東京五輪の実施種目が6月9日に国際オリンピック委員会(IOC)から発表された。日本のメダル獲得が有望な柔道混合団体や卓球混合ダブルスなどの新種目が採用される一方で、種目変更や選手枠の絞り込みが行われた競技もある。

 射撃では男子50メートルピストルなどが削減。同種目で2010年世界選手権を制している松田知幸(41)=神奈川県警=は逆境を乗り越え、男子エアピストルで射撃界に28年ぶりのメダルをもたらすことを決意。4度目の出場を目指す東京が最後の五輪となることも示唆した。

 ともに世界選手権で優勝しているが、昨年までのW杯のメダル獲得数はエアピストルの4個に対し、50メートルピストルは13個を数える。メダルに最も近かった得意種目が東京五輪では実施されない。過酷な現実を突きつけられても、松田の表情は意外なほど明るかった。

 「50メートルの方が実績があった。種目がなくなるのは寂しいですが、決定されたことは真摯(しんし)に受け止めるしかない。2月に国際射撃連盟が発表した段階で、自分の中ではないと整理した。今シーズンは50メートルはほとんど練習してない」

 年明けからエアピストルに練習時間と意識を集中させ、空気拳銃をモリーニ社からステイヤー社製の新型に替えるなど心機一転。2月のW杯ニューデリー大会で優勝し、5月のミュンヘン大会と6月のガバラ大会でも2位に入った。

 「10メートル(エアピストル)一本に絞れたことで逆にすごく調子が上がって今まで以上の成果が出ている。50メートルの方がより難しく精密性が高いので、それが10メートルに変わるだけ。世界でも強い選手は両方強い。10メートルでも自分は戦えると信じてます」

 3度目の出場だった昨夏のリオ五輪は50メートルが19位、10メートルも22位で予選落ち。不完全燃焼に終わった。

 「3回目で自分なりに自信を持って臨んで、結果が出せなかった。ものすごく反省したし、自分に何が足りないのかを自問自答する日々が続いた。その答えは出てないんですが、メンタルトレーナーの方に『全てに意味がある』と教えてもらった。答えを出せないからこそ、それを知るためにまた努力できるし、東京五輪で結果を出すことで全て意味のあることだと証明できるはずなので、頑張るしかない。そう思えた」

 射撃は全く同じ動作を反復すれば、10点を当て続けることができる。無心の状態が理想だが、競技を始めたのが26歳と遅い松田は、微妙なズレを生む緊張や焦り、欲を受け入れてコントロールできるメンタルの強さを磨くことで、41歳の今でも若手を圧倒している。

 「おじさんも頑張ってるんだよと見せられるのが、射撃の一つの魅力。とにかく心を安定させてどれだけ高い精度の射撃、結果を出せるか。自分は普段から何でも射撃につなげる。毎日がトレーニング。常に2択で、走る時に4キロと6キロのコースがあれば必ず6キロを選ぶ。仕事で疲れてるなと思えば、ここを頑張れば次の試合で返ってくる。だから一生懸命やろうと。嫌なこともチャンスと思う」

 一方で以前のように厳しい練習を積めば、膝に痛みを感じることもある。44歳で迎える東京五輪は集大成の大会と位置づけている。

 「もう最後ですね、きっと。その先にどれぐらい可能性があるかわからないけど『最後のチャンスなのかな』という思いは持ってます。7年後は50歳手前。やれるとは思いますが、肉体面やいろんな部分で本気で勝負をかけられるのは東京。メダルを取って、今までの苦労が全て意味のあるものだったと証明したい」

 射撃は92年バルセロナ大会男子50メートルフリーライフル銅の木場良平以来、メダルから遠ざかっている競技だ。

 「唯一、近い位置にいるにもかかわらず、結果を残してない自分の責任。東京でやったとしても、マイナー競技は昔からメダルを取らないと注目されない。羽根田卓也選手のカヌーや太田雄貴さんのフェンシングも、そこから変わってきた。射撃もやっぱりメダル。それが一番協会や射撃界に恩返しになるし、できる可能性がある以上は頑張りたい」(取材、構成・林 直史)

 ◆混合団体もエース

 松田は50メートルピストルに代わり導入される混合団体10メートルエアピストルでも、エースとして活躍が期待される。細かなルールや参加条件は未定だが「10点を打つ競技性に変化はない。まず個人のスキルを上げて、自分が引っ張っていける形で頑張れれば」。テストマッチで行われた2月のW杯ニューデリー大会は、小西ゆかり(38)=飛鳥交通=とのペアで銀メダル。日本射撃協会の岸高清事務局長は「日本のチームワークや団結力が生かせる。訓練次第でメダルのチャンスがある種目」と期待した。

 ◆松田 知幸(まつだ・ともゆき)1975年12月12日、横浜市生まれ。41歳。神奈川県警警務部教養課勤務。階級は警部補。横浜商大高時代はバレーボール部。94年、神奈川県警に入庁後に射撃を始める。08年北京五輪50メートルピストル8位入賞。10年世界選手権エアピストル、50メートルピストルの2冠。12年ロンドン五輪、16年リオ五輪も2種目に出場。174センチ、73キロ。家族は寛子夫人、長男・侑大くん、次男・康生くん。

 ◆エアピストルと50メートルピストル エアピストルは空気拳銃を使用し、片手で銃を構える射撃姿勢で10メートル先の標的(10点は直径11.5ミリ)を狙う。50メートルピストルは火薬を使う装薬ピストルを用いるため反動が大きく、標的も50メートル先(10点は直径50ミリ)と難易度が高い。ともに60発の合計得点で争われる。

最終更新:7/4(火) 11:04
スポーツ報知