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父の虐待リスク、調査せず 児相と連携薄く 沼津・女児殺害事件

7/4(火) 7:46配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 沼津市で生後2カ月の女児を暴行し、殺害したとして沼津署が殺人容疑で実父の会社員の男(23)=同市大手町=を逮捕してから5日で1週間を迎える。静岡県児童虐待検証部会は2012~14年、伊東市で父親が2児を死亡させた事件を受け、家庭内の状況を詳細に把握する重要性を提言していた。しかし、今回、母子を支援していた静岡市は父親に関する調査をしていなかった。関係者は「過去の教訓が生かされたとは言いがたい」と指摘する。

 関係者によると、容疑者は事件直前まで、静岡市や沼津市で飲食店従業員などの職業や住居を転々とし、生活が安定していなかった。一般的に、これらは虐待リスクと見なされる。関係機関が容疑者と面談し、こうした情報を把握していれば、より警戒心を高められた可能性があった。

 静岡市は、母親(17)が未婚の若年妊婦だったことから、妊娠中から面談を繰り返し、出産後も清水区要保護児童対策地域協議会でケース管理していた。父親については、母親が「籍を入れず、実家で育てる」などと話したため、調査しなかった。しかし、母子は事件が起きる約1カ月前から容疑者と同居を始めていた。市の保健師は、女児の祖母の説明から母子と容疑者の関わりを認識した後も「一時的に行っているだけ」と捉え、調査の必要性を感じなかったという。

 伊東市の事件では、関係機関が児童のけがを把握しながら、両親が虐待を否定したことから対応が後手に回り、最悪の事態を防げなかった。児童虐待検証部会は、家庭内の関係性を把握するため、広く情報収集を行い、家族背景を多角的に評価する重要性を強調。関係機関の対応に消極的・拒否的な家庭に対しては、強制的な介入ができる児童相談所との役割分担を求めていた。

 今回のケースでは、最後まで市の保健師が対応し、児童相談所が前面に出ることはなかった。県こども家庭課は「はっきりとした虐待の兆候があるわけではなく、難しいケース」としつつ、「少なくとも母子と父親の接触を把握した時点で、児童相談所などと連携し、父親に虐待リスクがないかの確認作業が必要だった」と指摘した。



 <メモ>伊東市2児死亡事件 2012年5月、伊東市で男児(2)が頭部を受傷し、脳損傷で死亡した。男児は生後10カ月の時にも頭部を受傷し、県東部児童相談所が施設入所措置を決定。家庭復帰して約1カ月後に事件が起きた。14年2月には、同じ父親(32)と、再婚相手との間の生後8カ月の女児が頭部の受傷で死亡した。女児は1週間前にも頭部を負傷し、市保健師や児相職員も把握していたが、死亡する事態を防げなかった。父親は男児に対する傷害致死容疑と、女児に対する殺人容疑で逮捕、起訴され、今年2月、懲役16年の有罪判決が確定した。

静岡新聞社