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また値上げ!? 2018年が保険にとって「波乱の年」になる理由

7/4(火) 11:10配信

ZUU online

2018年4月から、掛け捨て生命保険の保険料が下がるかもしれない。でも、終身医療保険は値上げするかもしれない。いま、こんなウワサがあるのを知っていますか?

ネットで検索したところ、朝日新聞や時事通信、琉球新報の記事がヒットするので、なんだか信ぴょう性はありそう。でも、そのカラクリがよくわからん!

というわけでこの度、DAILY ANDS編集部は2017年5月、チューリッヒ生命で開かれたメディア向けの勉強会に参加してきました。すると、「保険業界にいまこんなことが起きているのか!」という学びを多く得られたのでリポートします。

ウワサの真相は?そして、そこからわかってきた意外な「保険業界の課題」とは……。

■勉強会の会場は中野のチューリッヒ生命

チューリッヒ生命は東京都中野区にあります。中野といえば、ブロードウェイが有名ですが、この日訪ねたのはセントラルパーク沿いの、大きなビルの16階でした。

緑豊か、のどかな雰囲気の中、ぐんぐんエレベーターを登っていくと、チューリッヒ生命のエントランスにたどり着きます。

勉強会の講師はチューリッヒ生命チーフ・マーケティング・プロポジション・オフィサーの野口俊哉さん。2018年4月に保険料の変化があるらしい、という「ウワサ」の真相について、野口さんはこんな風に話します。

「2018年4月に何が起きるのかというと、『標準生命表』の改定が行われることがほぼ決まったんです」(野口さん、以下敬称略)



ヒョウジュンセイメイヒョウ……って何でしょう??

「保険会社はお客様から預かった保険を健全に運用しなくてはいけません。もし運用に失敗してお金がなくなったら、いざというとき保険料を払えませんよね。そういうわけで、法律で『これだけは、積み立てておきなさいよ』っていう積み立て金額が決められているんです。これが標準責任準備金と呼ばれるものです。そして、この標準責任準備金の計算に使われるのが、『標準生命表』なんです」(野口)

実際の標準生命表がこちら。
https://cdn-zuu-online.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/5938a7b673f32102beb56a7c_720_480.jpg

何歳で死亡率はどれくらいなのかが書かれているのですね。改定案は改定前(生保標準生命表2007)に比べると、2~3割ほど死亡率が下がっているようです。

ちなみに、「標準生命表」にも3種類あり(「死亡保険用」「年金開始後用」「第三分野用」)、今回改定されるのは「死亡保険用」「第三分野用」の2つなんだそうです。

■「生命表」にもいろいろある

そういえば、DAILY ANDS編集部は似たようなものを見たことがあります。厚生労働省が毎年発表している「簡易生命表」で、余命を計算するときに使います。

野口さんによると、「簡易生命表」は厚生労働省が作っているのに対し、「標準生命表」は、保険の専門家による「日本アクチュアリー会」が作っているという違いがあります。

厚生労働省の「簡易生命表」が総務省の人口推計などをもとにしているのに対し、日本アクチュアリー会の「標準生命表」は生命保険会社が加入者のデータを集めて、保険に加入している人たちがどれくらい亡くなったか?などをもとにつくられています。

保険に加入している人のデータがもとになっているので、保険商品をつくるときにはより重視されているのですね。

■なんで保険料が下がるの?

さて、この「標準生命表」が来年、長寿化を反映して約10年ぶりに改定される予定になっているそうです。変更内容をみると、私たちの死亡率、つまり「死ぬ確率」が各年齢でだいたい2~3割ほど下がることになっています。

野口さんによると、この影響を受けやすいのが定期保険、つまり掛け捨ての生命保険(10年や20年など、一定期間、保険料を払っていると、その期間に亡くなった場合に保険料が支払われる)です。

「定期保険は、ある一定の期間に人が亡くなったときに保険会社がお金を支払わなければいけないものです。でも、世の中が長寿化して人があまり死ななくなると、保険会社は加入者に払う金額が少なくなりますよね。なので、私たちが支払う保険料も少なくて済む、という仕組みなんですよ」(野口)

確かに、人があまり死ななくなったのに、保険料が同じだったら保険会社の儲けが増えて、なんだか不公平です。

ただ、もし私が保険会社の社長だったら「儲けが増えてラッキー」と思ってしまいそうです……。

ある試算(※)では、標準生命表の改定によって、定期保険に加入している人の月々の支払い額が200円ほど減るのだそうです。

※男性が30歳に加入、保険期間は10年間、亡くなった時にもらえる保険金額が1000万円、という条件で計算した場合
※この試算では、「純保険料」が868円から668円となる
※契約者が生命保険会社へ払い込む保険料は、保険金を支払うための財源となる「純保険料」と、生命保険会社が保険事業を維持・管理していくために必要な費用としての付加保険料の2つの部分から成り立っています

また、ある一定期間(10年や20年など)に亡くなったら、月額いくらという保険金を年金のようにもらえる「収入保障保険」も今回の改定の影響を受けやすく、ある試算(※)では保険料は619円も下がるといいます。

※男性40歳加入、保険期間20年間、年金月額10万円、支払い保証期間2年の場合
※月々の純保険料は2863円から2244円となる

■値上がりする保険もある

ただ、標準生命表が変わったからといって、全ての保険料が値下げになるわけではありません。

例えば保険業界で今一番売れている、という終身型の医療保険やがん保険。

終身型の医療保険やがん保険は私たちが生きている間にたくさん病院に行けば行くほど、保険会社はお金を支払わなければいけません。

ということは、私たちが長く生きているほど、保険会社は「損」をしてしまう可能性が高まります。そこで、保険料を上げることになるのだそうです。

ある試算(※)では、終身医療保険の値上がりの幅は99円となるそうです。

※終身医療保険、男性40歳加入、入院日額1万円、1入院60日限度の場合
※月々の「純保険料」の支払いが2559円から2658円となる

■保険料が変わらない保険

保険料があまり変化しない保険もあります。

それは、貯蓄性の高い商品。例えば、養老保険など。人が死んでも、生きていても、保険会社はいずれ私たちにお金を支払わなければいけないような商品です。

養老保険とは、月々一定の金額を積み立てておいて、ある一定の年齢(例えば60歳)になると満期返戻金が戻って来ます。60歳までに亡くなった場合も、満期返戻金と同額の保険金が出ます。

保険会社からしてみると、私たちが長寿化しようがしまいが、保険会社はいつかお金を払うので、長寿化は「儲け」にあまり影響がなく、保険料もあまり変わらないというわけです。

ある試算(※)では、養老保険は148円の値下がりとなっています。

※男性40歳加入、保険期間20年間、保険金額500万円の場合
※月々の支払額は2万924円から2万776円となる

このほかに影響の少ない保険としては、終身保険(いつか必ず人は亡くなるので、長寿化の影響を受けにくい)、定期医療保険(一定期間の間に病気にかかると保険金が降りるもの。若いうちに病気にかかる人はそもそもそんなに多くはないので影響を受けにくい)があります。

■そういえば、今年4月に保険料って上がったばかりじゃないの?

と、ここまで話を聞いていてふと思ったのですが、保険料って今年4月に上がったばっかりじゃなかったっけ??

「2017年4月に保険料が上がったのは、マイナス金利によって『標準利率』が下がったからです」(野口)

これはどういうことかと言うと、顧客から預かったお金を、保険会社は国債などで運用しているのですが、マイナス金利によって保険会社は儲けを出しづらくなりました。そこで、その分、保険料を値上げしたり、商品の販売を辞めたりするケースが相次いだんですね。

今年はマイナス金利。来年は長寿化。それぞれ違った原因で保険料が変わるというわけです。

■値下がりする保険、値上がりする保険のまとめ

野口さんが試算したところによると、値下がりする保険と値上がりする保険はそれぞれ次の通りとなっています。

<参考>https://cdn-zuu-online.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/5927ddc173f32104031c057b_720_186.jpg

終身型の医療保険やがん保険は、標準利率の改定と標準生命表の改定のダブルパンチを受け、今年4月と来年4月と2年連続で、値上げの予想。

一方、定期保険や収入保障保険は来年の値下げの影響の方が大きいので、結果としては値下げとなるようです。

■これから注目のトレンド保険を紹介!

2018年が保険会社にとって一つの「波乱の年」になるということがわかってきました。

もし、自分の加入しているのと同じ内容の保険が、他社で値下がりした場合、すぐに乗り換えよう……と思うかもしれませんが、健康状態によっても条件が変わるので、保険を乗り換えするときはしっかりとシミュレーションして本当にお得か?を吟味することが大切です。

ちなみに野口さんによると、いま保険業界は競争が激しいので、今年の4月に保険料の値上げを控えた会社も多かったのだとか。

そしてなんとかこの苦境を乗り切ろうと新しい保険をいろいろと開発する動きが活発になっている、という情報も入ってきました。

次回は2017年の「トレンド保険」をご紹介します!(続く)

くすい ともこ
DAILY ANDS編集長。北陸の地方紙で5年間記者として勤務後、Web編集者に。「無理のない範囲でコツコツ」をモットーに資産運用を実践中。

(提供:DAILY ANDS)

最終更新:7/4(火) 11:10
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