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勸玄くん、海老蔵と親子宙乗り「そばにママいたね」麻央さんも一緒に…

7/4(火) 5:03配信

スポーツ報知

 ママ、ボク飛べたよ―。6月22日に乳がんのため妻の小林麻央さん(享年34)を亡くした歌舞伎俳優・市川海老蔵(39)が座頭を務める東京・歌舞伎座公演「七月大歌舞伎」(27日まで)が3日、初日を迎えた。夜の部の通し狂言「駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)」では、長男の勸玄(かんげん)くん(4)が史上最年少の宙乗りを成功させた。満席約2000人の観客からは大きな拍手や歓声が沸いた。

 天国のママに向かっていくような軌跡で宙を舞った。

 真っ暗な場内にスポットライトが灯(とも)る。勸玄くんは花道の上空約3メートル地点で海老蔵の右腕に抱かれていた。歓声と拍手が2人を包み込んだ。

 ワイヤでつられた小さな体がゆっくりと上昇し、場内は息をのむ。長さ約20メートルのストロークで、高さ約10メートルの3階部分に達するまで4分間かけて上がっていった。普通の4歳児なら泣き出してしまう高さだったが、パパの腕が頼もしいから怖くなかった。上昇しながら手を振る余裕も。海老蔵の表情には、わずかに安堵(あんど)の色が浮かんだ。客席には涙をぬぐう人も笑顔になる人もいた。

 夜の部。168年ぶりの復活上演となった「駄右衛門花御所異聞」。場内の照明が落とされた幻想的なクライマックスシーン。満席約2000人の観客が登場を待った。「秋葉大権現」役の海老蔵が「やあやあ白狐(びゃっこ)参るぞよ」と声をかけると、真っ白な衣装に身を包んだ勸玄くんが「はーっ!」と返事をし、幼い足取りで花道を駆けてきた。立ち止まると「勸玄白狐、御前に!」と見事に名乗った。

 奇跡だった。海老蔵のブログによると、朝、目覚めた勸玄くんは「今日、出たくない」と不安を口にした。歌舞伎座に向かう車中でも「大葛藤」していると、偶然にも海老蔵と麻央さんの結婚式で歌われた「ジュピター」が車中に流れた。海老蔵が「ママが見てるよ、カンカン」と伝えると落ち着きを取り戻した。いなくなったはずのママが成功に導いてくれた役者デビューだった。

 麻央さんは6月16日に「7月3日初日 歌舞伎座にて」との表題のブログを書いていた。亡くなるわずか6日前のことだった。「ブランコもまだゆっくり座っているのに心配ですが、本人は飛ぶ気のようで。皆様 ぜひあたたかくご観劇、見守って頂けましたら幸いです」。息子の晴れ姿を見届けることを「一つの目標」とつづっていた。

 海老蔵も麻央さんを亡くしてから初の歌舞伎座公演で、渾身(こんしん)の演技で座頭を務め上げた。「駄右衛門―」では妻と死別するシーンもあり、「持つべきものは女房じゃなあ」「草葉の陰より見物致せ」といったセリフも聞かせた。幕が下り、楽屋に戻った海老蔵はブログにつづった。「よくやった そばに ママいたね、と互いに話しました」。27日の千秋楽まで、麻央さんはどこかできっと見守り続けている。(北野 新太)

最終更新:7/4(火) 5:03
スポーツ報知