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【のびやかに・浜木綿子】(22)指輪サイズ変わるほどの「指点字」猛特訓

7/5(水) 15:02配信

スポーツ報知

 「監察医・室生亜季子」とともに、主演させていだいた思い出深いドラマといえば「おふくろシリーズ」(フジ系、85~03年、全18作)です。障害者が、ハンディキャップを乗り越え、ひたむきに生きる姿を描く作品でした。

 中でも5作目(89年)で親子役で共演した坂上忍さんが、記憶に残っています。坂上さん演じる脳性まひの息子が、大学を卒業して社会人になるのですが、厳しい現実社会に直面。挫折しながらも成長していくのを見守る母親を演じました。

 若いのに芝居に味があって演技の集中力もすごい。この人は大成するのだろうな、と思いました。最近はテレビでの司会業も。あの頃は無口な印象でしたが、隠れた才能をお持ちだったのでしょう。

 このシリーズは毎回、親子の設定も異なり、私自身が聴覚などに障害を持つ回もありました。それなりに評価していただき、当時としては珍しい字幕付や音声多重放送などの工夫も。携わる全員が良質で新しいドラマを求め、懸命でした。

 手話に点字。盲ろう者の通訳に、タイプライターを打つ動作に似た「指点字」があります。私もいろいろと挑戦です。この指点字を必死で覚えたときなど、指輪のサイズが変わるほど指が細くなって。指って運動すると痩せるものなのですね。

 親近感を持っていただけたのでしょうか。このドラマのおかげで、障害者との交流もたくさん生まれました。街を歩いていると、私の肩をポンポンと叩いて手話で「見てますよ」とメッセージをくださったり。毎回、難しくて悩んでばかりでしたが、やってみて本当に良かったと思います。

 「おふくろ」という言葉の温かい響きが好きです。室生亜季子が、バリバリ働くお医者さんなら、こちらは“理想の母”というイメージを与えていたようです。でもこれはあくまで役の上でのお話。

 この頃は、殺人的な忙しさ。もう一度やれ、と言われたら絶対無理ですね。常に手元に台本が4、5冊。つかの間の休みで家族旅行に行っても、私はセリフ覚えのため、別にもう一部屋取ってもらっていました。

 私のおふくろらしいことですか? 胸を張れることはあまりありませんが、ドラマのロケの合間の虫探しでしょうか。ビニール袋に虫が呼吸できる小さな穴をあけ、草むらを猛烈に動き回っていたので「一体、何をしているの?」と奇っ怪に思った共演者もいたでしょう。

 この前、久しぶりに照之と電話で話しているとその頃の話に。「あの頃、(昆虫を)よく持って帰ってきてくれたよね」と言うのです。息子の喜ぶ顔を見ると疲れが飛んでいくようでした。すっかり忘れているものと思っていましたが、覚えていてくれていたのですね。その日は、ほんわかした気持ちで過ごしました。(構成 編集委員・内野 小百美)

最終更新:7/5(水) 16:49
スポーツ報知