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学生に選ばれる福祉施設へ 京都府の認証制度、採用活動に影響

7/4(火) 14:02配信

福祉新聞

 京都府が全国に先駆けて開始した福祉専門の人材育成支援策「きょうと福祉人材育成認証制度」が、今年5年目を迎えた。府の支援で社会福祉法人などが他業種に負けない職場環境を構築。一定基準をクリアして認証を受ける仕組み。既に府内の福祉関係事業所・法人の約4分の1が認証を取得した。認証されると、給与体系やキャリアパスなどの公表が義務付けられる。求職者にとって、優良事業所を探す指針になるのが特徴だ。 

 認証制度は、福祉業界の労働実態の改善と「見える化」を両立することで若者の参入を促進し、人材確保・定着に向けた環境整備を行うことを目的に2013年度から始まった。

 人材育成に取り組む意思を表明する「宣言」、認証基準を満たす「認証」、さらに高度な取り組みを評価する「上位認証」で構成する。介護・福祉サービスを提供していれば、社会福祉法人でも一般企業でも分け隔てなく宣言することができる。

 宣言事業所への支援は、新卒者の育成体系やOJT(職場内での教育訓練)制度、キャリアパス、給与制度などの構築を目指す集合コンサルティング、新任・中堅・管理職などの階層別外部研修など六つのプログラムが用意されている。宣言事業所はこれらを受講して認証基準合格を目指す。

 認証基準は、「新人教育の充実度」「若者が未来を描ける職場か」「社員を大切にする職場か」「外部との交流に積極的か」の4分野でそれぞれ設定した17項目。認証基準を満たすことで、他業種と比較してもそん色ない人材育成の仕組みが構築できるようになっている。上位認証は認証基準がさらに厳しく、5分野・112項目と数値評価6項目の達成が必要になる。

 6月1日時点での認証・宣言件数は、上位認証が5、認証が242、宣言が322となっている。府内の福祉関係事業所が約1000あるため、宣言以上が半数を超え、4分の1近くは認証を取得していることになる。また、府の老人福祉施設協議会など事業者団体に所属する特別養護老人ホーム・老人保健施設については、80%が認証取得しており、業界内での制度の認知度の高さがうかがえる。

 認証を取得するメリットは大きい。例えば、府主催の就職説明会に「職員を大事にする教育や取り組みに力を入れている法人」として紹介された上で出展できる。言ってみれば、府からのお墨付きをもらった状態で学生にアピールできるというわけだ。

 福祉系学部を持つ大学への周知活動が進んでいるため、学生の認知度も高い。府の担当者によると、今年3月に行われた説明会では上位認証法人に学生が殺到し、実際に採用に結びついた数も、認証法人、宣言事業所と大きく差が出る結果になったという。

 府主催の福祉職場を体験するインターンシップには、上位認証法人と認証法人しか参加できないようにした。昨今、学生は職場体験を行った上で就職を決断するケースが一般的。認証を取得しているか否かが採用活動に大きな影響を与えることが分かる。

 他業種、特に一般企業の中には入社1年目から中堅、経営層に至るまでのキャリアパスを明確にし、それに沿った研修制度を整備しているところも少なくない。給与体系や福利厚生、働きやすさなど、情報公表を積極的に行うことで学生たちに自社をアピールしている。

 一方、福祉業界は比較的情報が表に出にくい業種とされてきた。府が福祉業界を目指す学生に独自で行った調査でも、初任給や賞与、離職率、研修体制などの内部事情を事前に知りたいという意見が大勢を占めているが、表立ってそれらを公表している法人は多くない。

 社会人を目指す学生にとっては、はっきりしたキャリアプランがある方が将来を描きやすい。認証事業者は、初任給や賞与、10年後のモデル賃金などの給与制度に加え、離職率や休暇制度などを公表することになる。認証取得までの府の支援は、公表しても恥ずかしくない労働環境を構築するのに一役買うことになるというわけだ。

 青森県(青森県介護サービス事業所認証評価制度)や広島県(魅力ある福祉・介護の職場宣言ひろしま)など、京都府に追随する形で同様趣旨の制度運用を始める地方自治体でも出始めているが、まだまだ一般的とは言えない。

 仮に京都府のような制度が全国で採用された場合、待遇の良い事業者だけが選ばれ、業界内での人材獲得状況に格差が生じる可能性もあるが、府の担当者は「業界内での人材の取り合いで終わってはいけない」と強調する。「認証事業者を増やすことで、他業種への人材流出の阻止に加え、最終的には他業種や福祉に興味のなかった人も福祉業界を目指すような魅力的な産業にしたい」と、今後も福祉業界への支援を継続していく方針を示した。

最終更新:7/4(火) 14:02
福祉新聞