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30歳で見る夢。セブンズ代表候補・小森邦洋は熊本大出身。有休で合宿へ。

7/4(火) 8:24配信

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン)

 5月1日、30歳になった。
 セブンズ日本代表候補に熊本在住のサラリーマンがいる。
 熊本大学工学部、同大学院を卒業。狙うは3年後のオリンピック出場だ。妻、息子と幸せな家庭を築く男は、快足を買われてセブンズ日本代表候補に招集された。7月2日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた『なの花薬局ジャパンセブンズ2017』に出場し、セブンズ・ディベロップメント・スコッド(SDS)の一員として優勝に貢献した。

170センチ。ステップで勝負。サクラを胸にした専大3年、野口宜裕の未来。

 勤務先はソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社。スマートフォンや一眼レフカメラなどに使われる、イメージセンサーの開発に取り組んでいる。
 地元のクラブチーム、熊本サンデーズに所属しているけれど、メンバーがなかなか揃わず練習できないから、おもな鍛錬の機会は国体チームでの週2度のトレーニング。
「他の日は自分で走ったり、ジムに通ったりしています」

 2013年から4年連続で国体チーム(熊本)のメンバーに選ばれている。チームでいちばんのトライゲッターとして躍動。その活躍が評価され、昨年11月、ワールドラグビー セブンズシリーズ第1戦、ドバイ大会前の代表候補合宿に招集された。
 それ以降たびたび候補合宿に呼ばれ、5月におこなわれたSDSの活動にも参加し、クラブチームとの試合にも出場。ジャパンセブンスがトップチームとの初対戦だった。
「合宿に招集されたときは嬉しかったのですが、やれるのか…と緊張もしました。でも、年下の選手たちもフレンドリーに声をかけてきてくれて、すぐに馴染むことができました」
 戦術理解など、経験豊富な選手やトップチーム所属組と比べればまだまだ足りないものが多いが、50メートルを5秒9で走るスピードは、このレベルでも武器になると知った。

 長崎県立大村高校出身。当時はSOでプレーし、花園出場は夢のまた夢だった。しかし、高校2年時、3年時とセブンズ九州選抜に選ばれ、ジャパンセブンズ/高校の部に出場したことがある。
 大学時はFBだった。九州学生リーグで1部、2部を行ったり来たり。大学院も含めた6年間プレーし、高い決定力で知る人ぞ知る存在になった。
 この4月には2020年の東京オリンピック育成指定選手に選出された。熊本県教育委員会が様々な競技団体の推薦をもとに31人を選出し、1年間サポートする(遠征費などを補助)。

 先のジャパンセブンズはいい経験になった。
 負けてはいけないプレッシャーの中で戦ったことが心を強くした。
「少ない人数のクラブでやってきたので、練習では1対1の抜き合いをやってきました。だから、そういうシーンでのディフェンスは嫌じゃない」と話していた通りに大男を仕留めた場面もあったが、強豪大学の留学生にタックルを弾き飛ばされるシーンも。外国人選手のパワーを体感した。
 チームがリードを許した場面で逆転のトライを奪うプレーもあった。試合を決める走りも見せたことで自信も得ただろう。
 そこには、高いレベルでの練習時間、試合時間が増えれば増えるほど、進化していく自分がいる。しかし、トップチームに所属しているわけではないから、その機会は限られている。

 3年後のメダル獲得へ向け、セブンズ代表候補レベルの強化合宿は頻繁にくり返されている。小森はそれらに有休を使って参加。会社が定めた日数を超えることになったなら、その先は、休日・休暇届けを提出してトレーニングに向かうことになるという。
 それでも三十路のスピードスターは上を向く。齢を重ねてやっとつかんだ、アスリートとして生きる日々が刺激的だから。
「いまはラグビーをいちばんに考えていきたい。自分のためにも。熊本に、自分のことを応援してくれるラグビー愛好者の方たちがたくさんいます。その人たちのためにも」

 2020年、33歳になる。年下には有望な若手がひしめく。それでも、自分の気持ちに正直に生きたい。夢が叶う可能性があるなら自身のプレー同様、ゴールへ、全速力で向かいたい。
 頭の中は100パーセント理系。でも、言葉ではうまく説明できない情熱が自分を走らせている。