ここから本文です

「死の恐怖を感じた」居座る中国船、悩むフィリピン漁民 南シナ海・スカボロー礁

7/4(火) 11:41配信

西日本新聞

 南シナ海で中国が実効支配するスカボロー礁(中国名・黄岩島)。領有権争いの棚上げを決めた昨年10月の中国とフィリピンの首脳会談後、両国の緊張関係は緩和されたが、フィリピンの漁民によると、中国船は今も周辺海域に居座り続けているという。漁民たちは中国側の監視下で、不安な漁を余儀なくされている。

⇒【地図】スカボロー礁の場所

 「スカボロー礁はかつては平和な漁場だった」

 フィリピン北西部マシンロックの漁師フェデリコ・ホソールさん(49)は目を細める。台湾やベトナムの漁民とは米や酒、たばこを分かち合い、中国の漁民とも友好的な関係だった。しかし、中国が実効支配を進め始めた2012年以降、中国船が周辺を監視するようになったという。

「死の恐怖を感じた」

 「13年に3隻の船団で漁をしていると、2機のヘリが飛んできた。灰色の大型船から放水銃で攻撃され、銃を持つ乗組員の小型ボートに追われた。死の恐怖を感じた」。それ以来、近づけなくなったと語る。

 変化が訪れたのは、フィリピンのドゥテルテ大統領が中国で習近平国家主席と会談した昨年10月。両首脳は、中国の主権主張を退けた昨年7月の仲裁裁判所判断の「棚上げ」で合意し、中国船の妨害行為もやんだと報じられた。

 ホソールさんは悪天候の時期が過ぎた今年4~6月、スカボロー礁での漁を再開した。しかし、中国船は2隻が待機し、常に監視を続けている。フィリピン漁民はドーナツ型の岩礁の周囲に漁を制限され、その内側は中国漁民だけが独り占めしているという。

 「岩礁の内側は魚の産卵場所で、海洋生物が豊富。中国はそこで乱獲をしている。ウミガメやサンゴを取り、サメはひれだけを取って捨てている」

「子どもは漁師にしたくない」

 スカボロー礁に出航できるようになって収入は回復したが、一時は半減。妻(42)はサウジアラビアに出稼ぎに行った。子ども4人のため、自らもバイクタクシーの運転手をして生活費を捻出した。「中国船がいる限り、不安な状況が続く。子どもは漁師にしたくない」と話した。

 ホソールさんは「漁再開への道を開いたドゥテルテ大統領に感謝している」とした上で「スカボロー礁は祖先の時代からフィリピンのもの。政府は沿岸警備隊を出して漁民たちを守ってほしい」と訴える。そして、繰り返した。「中国の船はすぐに立ち去れ」

=2017/07/04付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:7/4(火) 11:41
西日本新聞