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米横断の皆既日食、2分40秒の暗闇に賭ける町

7/4(火) 12:47配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

【ホプキンズビル(米ケンタッキー州)】米ケンタッキー州西部にある町ホプキンズビルは今夏、「エクリプスビル(日食の町)」になることに大きく賭けている。

 エクリプスビルというのは、人口3万2000人のホプキンズビルが採用したあだ名で、開設したサイト名(www.eclipseville.com)でもある。米国本土では8月21日、1979年以来の皆既日食となるが、最大食を見ることができる日食中心線直下の同地は2分40秒にわたって暗闇になる見通し。

 ホプキンズビルとその周辺地域は日食当日に5万~10万人の観光客が押し寄せると見込んでいる。

 テネシー州との州境の緑に覆われた草原地帯にあるホプキンズビルとクリスチャン郡の住民たちは、キャンプ場を設置し、何千本もの水を発注し、食料を調達する予定だ。また地元で特別に製造されるバーボン「Total Eclipse Moonshine」のような製品も販売される。

 しかし、現地コーディネーターのブルック・ユングさんは「日食に備えるハンドブックはなく、手探りだ」と述べる。ユングさんは「暗闇のプリンセス」とも呼ばれている。

 企業は皆既日食という珍しい天体現象に乗じて商売しようとしている。一方で、皆既日食は通常は静かなこのコミュニティーに不安をもたらしている。農家は、観光客に畑が荒らされるのではないかと心配している。自給自足などで知られるアーミッシュ派やメノー派教徒たちは、交通量急増によって自分たちの伝統的な馬車の安全が脅かされるのではないかと神経質になっている。

 地元や州の当局者、近くにあるフォート・キャンベル陸軍基地の代表者は定期的に集まり、群衆整理や安全確保、物資供給の計画を立てている。彼らは過去に催された大規模イベントを研究しているが、教訓となりそうなのが、1969年にニューヨーク州郊外のウッドストックで開かれたロックフェスティバルだ。「ウッドストック」は大勢の人々を受け入れる準備が全く整っていなかった。

 地元当局者の「すべきことリスト」には、事前に下水処理場の浄化槽を空にしておくことや、臨時の携帯電話用基地局を準備しておくなどがある。

 市と郡は、交通整理のために州警察官と州兵の追加要請をしたほか、フォート・キャンベルにはボランティア部隊の派遣を依頼。病院にも十分な人員を確保するよう求め、銀行には現金の保有量を増やすよう要請、ガソリンスタンドにはガソリンの貯蔵量を増やしておくよう求めた。

 また、地元のレストランと食料品店に対しては在庫を積み増し、より多くの人員を集めておくよう注意を促した。

 こうした準備が行われてはいるものの、不安を感じる住民もいる。日食中心線上にある道路に面した家に住むレネー・ジェサップさんは、「とても心配だ。われわれは田舎者でよそ者の扱い方を知らない」と話す。

 前出の「暗闇のプリンセス」ユングさんは、当初は訪問者を5万人と予想していたが、その数を2倍にすべきと専門家にから指導を受けたと語った。天候が良ければ、さらに訪問者数が増える可能性があるという。多くの人にとって一生に1度のイベントである皆既日食を見ようと全米から人が集まるからだ。

 過去には災厄が近づいている前兆だとして人々に恐れられた日食だが、カリフォルニア大学バークレー校の天体物理学者アレックス・フィリペンコ氏によると、現代では日食観測ツアーが盛んに催されている。同氏自身も長年にわたり、日食を観測しようと世界を旅行している。

 8月の日食は、西海岸オレゴン州から東海岸サウスカロライナ州まで米国を横断する帯状の地域で観測できる。これら地域では、いずれも大勢の観光客の訪問に備えている。

By Cameron McWhirter