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「生配信で月1000万円の子も」 “努力が実る”SHOWROOMにアイドルのタマゴが殺到する理由

7/5(水) 7:10配信

ITmedia NEWS

 「生配信で月1000万円売り上げる子もいる」「ここは、努力が実る場所なんです」

 アイドル戦国時代といわれる昨今、メジャーデビューを夢見るアイドル・タレントのタマゴたちは数多くいるが、全ての努力が実を結ぶわけではない。そんな彼女たちの多くが夢を実現する場として選んでいるのが、仮想ライブ空間「SHOWROOM」だ。

【画像:SHOWROOMで人気の女性アイドル】

 SHOWROOMは、DeNA発のプロアマ問わず誰でも生放送の配信や視聴ができるライブ動画サービスで、配信者と視聴者が双方向コミュニケーションを取れるのが特徴。配信者にアイテムを送れる「ギフティング」というシステムがあり、配信中に投げ込まれた無料・有料アイテムの総数に応じた報酬が配信者に支払われる。

 自身のアバターが配信者を囲むように配置され、ライブ会場のような一体感を演出。有料アイテムを送るなど、能動的なアクションを続けることで、より目立つ前列にアバターを配置できる。実際に使ってみると分かるが、人気配信者は積極的に視聴者コメントを拾い、巧みに会話を広げていく。

 YouTube、niconico、LINE LIVEなど、類似のライブ配信サービスがいくつもある中、なぜ彼女たちはあえてSHOWROOMを選ぶのか。そのポイントは、他のライブ配信サービスにはない「努力が実る仕組み作り」にある。

●連載:ゆとり記者が聞く

小学生の頃には携帯電話とインターネットが身近にあった「ゆとり世代」の記者が、いま気になる若手をインタビュー。一般的に「競争が苦手」「自主性がない」とされるゆとり世代の正反対をいく、活躍する若者の共通点とは?

 SHOWROOMの前田裕二社長は「ヒットする配信には共通点があり、それを守れば誰でも一定の人気を得られる」と話す。徹底的なデータ分析と調査で「エンタメを科学」する中で、「ヒットの法則」「男女で異なる異性への理想像」などが見えてきたという。

 前田社長自ら「いい意味で“意識高い系”のサービス」と語るように、SHOWROOM最大の特徴は、その蓄積したノウハウを配信者に手厚くフィードバックする支援システムにある。

 そのアドバイスを実践し、「月の売上を20円から100万円にした」女性タレントもいるという。「AKB48 49thシングル 選抜総選挙」とのコラボ企画で見事1位を獲得した「朝5時半の女」こと大西桃香さんも、テレビでは無名だったがSHOWROOM内で圧倒的人気を誇る。

 順調に売上を伸ばすSHOWROOM。「努力が実る」仕組み作りについて、前田社長に聞いた。

●「有料アイテムが飛び交う」 中国ライブ配信の衝撃

 2013年にSHOWROOMを始める際に参考にしたのが、中国のライブ配信サービス「YY LIVE」だ。配信者と視聴者の双方向コミュニケーション、配信者にバーチャルギフトを贈る機能など、今のSHOWROOMに通ずる点も多い。

 前田社長は、「なぜ、YY LIVEは配信のクオリティーが高いのか」と疑問を持っていたが、現地視察でその謎が解けた。YY LIVEには、「公会」(オーガナイザー)と呼ばれる法人がいくつもあり、各公会に配信者が所属している。日本の芸能事務所のようなもので、このオーガナイザーたちが所属タレントに配信のお膳立てをするのだ。

 かわいいぬいぐるみやベッドなどがそろった自室風のスタジオ(マンションの一室)をはじめ、かわいく見える撮影角度、現実感をなくして課金を促すためにわざとぼかした配信画質など、あらゆる面で支援する。

 YY LIVEの人気配信者は、月に億単位で収益を得るという。人口や市場は違えど、そんな夢のような仕組みをSHOWROOMでも実現できれば。SHOWROOMでも国内のオーガナイザーと提携し、ノウハウを共有している。

 「SHOWROOMとYY LIVEは何が違うのかを研究し、それは配信クオリティーだと仮説を立てた。しかし、それはささいなことで、配信をヒットさせる要因は他にあった」(前田社長)


●月の売上を「20円から100万円」にした女性タレント

 SHOWROOMの人気配信者には、共通点がある。それがこの3つ。

1)熱量の大きさ

2)自分を客観視できるセルフプロデュース力

3)配信を見続けるうちに共感していくストーリー性

 これらを全て満たすと、すぐに人気配信者の仲間入りを果たせるという。ほかにも、女性の場合は「親近感」「身近さ」が重要なポイントとなる。

 実際、「月の売上が20円だった」という女性にアドバイスをすると、翌月の売上が100万円になったという。

 「相談を受けて配信を見て、すぐに、あっダメだと思いました」(前田社長)

 生活感のない真っ白な背景に、あからさまな宣伝のポスター。事務所に無理やりやらされているような配信態度、視聴者との微妙な距離感。何もかもがダメだった。

 前田社長は、まず視聴者への敬語、さん付けを禁止した。背景は、「この子もちゃんと寝るんだ」という親近感を抱けるようにベッドや布製品を見切れさせた。あとは、事務所にやらされるのではなく、自分の内なるモチベーションで配信をすること。

 これを守り、見事売上100万円を達成した。

 そんなことでいいのかと思うかもしれないが、これらのアドバイスは、配信者全てのデータを収集・分析した結果に基づいたものだ。

 「従来、エンターテインメントの分野でヒットを生む方法は極めて感覚的だった。僕たちは定量的にデータを分析し、汎用性の高いエンタメのヒット創出を科学している」(前田社長)

 ライブ時間、配信回数など複数の項目を用意し、配信者別にレーダーチャートで偏差値を出すほか、配信者アンケートも実施して現状把握に努めている。そんなSHOWROOM内で最も盛り上がるイベントの1つが、AKB選抜総選挙コラボだ。

 秋元康氏すら把握していない無名アイドルたちが、SHOWROOM内で圧倒的存在感を放つ。“SHOWROOMが考える人気配信者”をそのまま体現するような子たちだ。

●秋元康も知らなかった 「朝5時半の女」

 「AKB48 49thシングル 選抜総選挙×SHOWROOM」(2017年5月25日~6月16日)で立候補者322人の頂点に立ったのが、「朝5時半の女」こと大西桃香さん。2016年10月から「毎朝5時30分に生配信する」という並外れた努力を続け、ファンの注目を集めていた。

 大西さんは、先述した人気配信者の共通点3つ全てを満たす。

1)熱量の大きさ

→毎朝5時30分から生配信

2)自分を客観視できるセルフプロデュース力

→毎朝5時30分に配信する自分がどう見られるかを客観視

3)配信を見続けるうちに共感していくストーリー性

→視聴者は、「なぜここまで努力するのだろう」と背景を読み解き始める

 朝早いのでたまに寝坊してしまうこともあり、「そういう所もかわいく、親近感がわきやすい」(前田社長)

 大西さんはSHOWROOM内での努力が実り、2017年3月15日発売のAKB48グループ47thシングル「シュートサイン」で初の選抜入りを果たした。前田社長によると、SHOWROOM内で話題を集めた当初は秋元康氏も大西さんの存在を知らなかったという。

 そこからの選抜入りはまさに快挙。SHOWROOM内での順位は総選挙の投票結果とは関係ないが、6629万4066ポイント(1コメント、無料ギフト1つで各1ポイント)という圧倒的人気で1位を獲得したため、前田社長は「ファンとの結束がさらに深まり、また選抜入りに近づくのではないか」と見ている。

 「大西さんは、配信者としての偏差値もずばぬけている。彼女の熱意が本物だったことが視聴者にも伝わった」(前田社長)

 しかし、これらはあくまで女性配信者の話。男性の場合、取るべき戦略は全く変わってくるという。

●男性配信者が追求すべきは「理想の素」「身近な偶像」

 男女で配信者に求めるものは異なる。男性は女性配信者に、身近さや親近感などを求めるが、女性は男性配信者に、理想の素、身近な偶像を求めるという。

 前田社長は、この感覚を「しょうゆの染み理論」で説明する。シャツにしょうゆの染みがついていたとき、男女で感じ方が異なるというものだ。

 「女性がシャツに染みをつけてたら、男性はおっちょこちょいだなとか、かわいいなと思う。でも、男性がシャツに染みをつけたら幻滅されてしまう。女性は男性に対して“たるんだ腹は認めない”というか、かなりシビアに見ている」(前田社長)。

 これは、前田社長自身がビジュアル系バンドで活動していたときにも強く感じていたそうだ。女性は男性に対して「理想のイメージ」を抱くため、それを忠実に再現する必要があるのだという。

 こういった違いもあり、男性で人気の配信者は「静止画で声のみの配信」が多い。自分のかっこいい写真やアニメの画像で視聴者に理想の姿をイメージしてもらう。声だけならボロは出にくいからだ。

 男性の人気配信者は、月200~300万円ほど売り上げる。

 SHOWROOMでは、今後女性向けコンテンツを拡充する。女性アイドルはほぼ網羅しつくしたため、男性声優や2.5次元俳優など、新たに女性視聴者を囲い込んでいく戦略だ。

●「エンタメとAIは相性がいい」

 2016年に、VR(仮想現実)を活用した「SHOWROOM VR」を提供するなど、新技術にも積極的に投資する姿勢だ。

 今はAIに注力しており、サービス運営やオーガナイザーが務める役割をAIに代替させる意向だ。

 外部組織と共同で、SHOWROOMで蓄積したデータベースをディープラーニングでAIに学習させ、「未成年の喫煙や飲酒、露出、寝落ち」などの監視、配信者へのアドバイス、視聴者へのおすすめ配信レコメンドなどをAIに実施させる。

 「SHOWROOMはプラットフォームだが、メディアとしての責任もある。そのリスクヘッジはしっかりとコストをかけて優先的に取り組んでいく」(前田社長)

 2015年にDeNAから分社化されて以降、順調に事業拡大を図るSHOWROOM。今後も、志の高い配信者が集まる“意識高い系”サービスとして有名人を輩出していく体制を整えていく。

(村上 万純)

最終更新:7/5(水) 14:56
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