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働き方改革の問題点は技術ではない、文化だ

7/5(水) 8:49配信

ITmedia エンタープライズ

 「テレワーク・デイ」をご存じだろうか。

 2012年に開催されたイギリスのロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会で、ロンドン市内の移動がスムーズに行えるよう、市内の企業の約8割が在宅勤務を中心としたテレワークを導入した。これにより、交通混雑が緩和した成功事例にならい、経済産業省や総務省などが2020年の東京大会開会式に相当する7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけて、参加企業を募集中だ(7月3日現在、参加団体数は476件)。

【テレワークの分類って!?】

 初めての開催となる2017年7月24日に向けて、東京都内でヴイエムウェアが「ITを活用した『柔軟な働き方』に関するプレスセミナー」を開催した。7月4日に行われた同セミナーでは、日本で長年にわたってテレワークに取り組んでいるテレワークマネジメント 代表取締役 田澤由利氏が、「『働き方改革』を成功に導くテレワーク」について語った。

●テレワークを活用することで経済成長も維持できる

 国が推進する働き方改革の中でも重要なキーワードとなるテレワークだが、その意味を正確に把握している人はどれくらいいるだろうか。

 田澤氏は「テレワークとは離れた場所で働くという造語で、従来は時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を意味していたが、2016年を境に言い回しが変わった。『ICTを活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方』となり、国の意志が入った形だ。テレワークの定義は広く、雇用型と自営型という区分に加え、モバイル型や在宅型といった場所による分類もある。さらに後者は会社なのか自宅なのか、はたまた移動中なのかといった違いもある。最近では、サテライトオフィスも登場しており、都市型や郊外型、地方型といった区分けも見られる」と説明する。

 田澤氏は「働き方改革における日本の課題は、労働力不足や東京集中が叫ばれる中で、経済成長ができるのかという点に尽きる。これまでは、男性社員が長時間働くことで成り立っていた時代もあったが、時代は変わっている。少子化が進み、介護問題も顕著になり、もう長時間労働なんて無理だから、なくしていこうというのが働き方改革の第一歩だ」と指摘。

 「しかし、長時間労働をなくしていくと生産量が減るので、時間あたりの生産性向上に向けてどうしていくのかと企業が知恵を出してきた。ただ、そもそも労働者が減っていく中で、子育てや介護とフルタイムで働けない制約社員が増えていくことなどにより、さらに労働時間や生産量が減っていく。次の課題は、制約社員の労働参加率向上だが、それもトリガーにすぎない」と田澤氏は忠告する。

 「経済が右肩上がりとは限らない中で、働き方改革において企業の生産性を高めるには、これまで指摘した時間あたりの生産性向上、制約社員の労働参加率向上に加え、外部人材を活用した繁閑対応体制の構築が挙げられる。このいずれもがテレワークの活用で解決できるポイントになる。働き方改革で経済成長を持続させるために、テレワークは非常に重要な働き方になる」(田澤氏)

●テレワークが進まないのは意識の問題

 本セミナーに合わせて、テレワーク・デイへの参加を決めたヴイエムウェアが、「ビジネスにおけるスマートデバイスの利用動向」と題した調査結果を発表した。対象は仕事でスマートデバイスを利用している有職者519人(20歳~59歳の男女)で、調査期間は2017年4月5日~4月7日。インターネット上で調査を行った。

 ヴイエムウェア マーケティング本部 シニア プロダクト マーケティング マネージャ 本田豊氏は「調査結果によると、スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの業務用途は、通話、SNSなどのメッセージ、スケジュール管理がトップ3で、ガラケー時代とあまり変わっていないことが浮き彫りになった。また、ほぼ6割の人が会社支給ではなく自前のデバイスを仕事に使い、モバイル向けの管理ソリューションが導入済みなのは約3割にとどまっていた。個人端末からの情報漏えいなど、セキュリティのリスクが非常に高く、適切な管理ツールが入っておらず、業務プロセス自体がモバイル環境に対応できていない」と現状を報告する。

 「働き方改革で、あなたにとって最も重要なテーマは、という設問に対し、長時間労働の是正や生産性向上、賃上げ、子育てや介護などとの両立が上位に入った。テレワークについては、5割強が働き方改革に貢献すると考え、テレワークを導入したいという人も半数近くに上る一方で、テレワークを導入したくない人も1/4近くいる。理由を聞くと、持ち帰り残業が増える、出社=勤務と考える、自立できる自信がないという答えが続く。テレワークを進める際には、従業員の意識も阻害要因になっている。トップダウンだけでなく、ボトムアップも重要な要素になる」と語った。

●退職率を下げればみんながハッピーに

 一方で、働き方改革に向けて、ヴイエムウェアではどのような取り組みがなされているのだろうか。

 同社代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏は「私はマイクロマネジメントスタイルではなく、自分よりも仕事ができる人をどんどん会社に入れている。外資系としては退職率が10%以下と低く、3%くらいの時もある。退職率を低くしているとチームはハッピーになり、お客さまもハッピー、結果として会社ももうかるという概念がVMware Familyだ」と説明した。

 「若い人を毎年10人単位で採用しており、女性はもちろん、日本では外国人もどんどん増やしている。VMinclusionと呼ばれるもので、さまざまなタイプの人材をミックスすることにより、会社が伸びると思っている。毎年2割のメンバーを社内で他部門に異動させることで、チームのコミュニケーションが取りやすくなり、それがビジネスイノベーションになっている。8年ほど前から社内はフリーアドレスになっており、軽食を取りながら会議をすることも多く、社内/社外を問わずいろいろな場所で仕事をすると、アイデアとかイノベーションがわいてきやすい」(ジョン・ロバートソン社長)

 ジョン・ロバートソン社長は「ヴイエムウェア製品を使えば、エンタープライズアプリが使えるセキュリティが高いレベルで、どこでも仕事をできる環境を手軽に実現できる。先ほどの調査結果のうち2つが解消可能だ。ただ、そのような現状を把握している人が多くなく、業務でのテクノロジー活用がまだまだ進んでいない」と指摘する。

●日本のチームワークは最高だが……

 カナダ生まれのジョン・ロバートソン社長だが、実は21歳の頃(1990年)から日本で働いており、流ちょうな日本語を話す。2015年に行われた代表取締役社長の就任会見では「見た目は日本人の顔をしていないが、心は日本人以上に日本人だ」と語ったように、日本式の働き方になじんできたという。

 ジョン・ロバートソン社長は「日本の働き方で一番いいのはチームワークだ。これは世界に誇れる。だから日本のサービスやサポートは最高だが、結果とか数字、お客さまの満足には関係ない長時間残業や付き合い残業がはびこっており、変えないといけない。実際、シンガポールで数年間働いていたが、会社に長時間いる人はほとんどいなかった。みなテクノロジーを積極的に活用して効率のいい働き方をしており、リモートミーティングが多くても仕事の成績は良かった。また、長期間のバカンスを取得しても会社は回っていると実感できた」と笑いながら話す。

 加えて、「仕事もプライベートもどちらも大事で、そのバランスをキープするのが難しい。新しい働き方、柔軟な働き方への欲求は高まっているものの、従業員と経営層それぞれで意識改革が必要だ。特に日本の働き方改革の問題点は技術の問題ではなく、文化の問題だ。有給休暇を使わないのも問題だし、個々人の考え方を変えていく必要があり、トップダウンでやる部分もある」(ジョン・ロバートソン社長)

 田澤氏も「テクノロジーの進化をみなさんが把握していないところで、働き方改革の波がきたのが現状だ。まずはこれまでできないと思い込んでいたことが、実はできるんだと体験してみることが大事。課題と言われ続けているセキュリティ面もテクノロジーで解決できる。テクノロジーは準備が完了しており、あとは自身で気が付かないとダメで、気付けば変わることができる」と主張する。

 個人的に最も印象に残ったのは、「世間的には労働時間の長い短いではなく成果が大事という流れになるだろうが、個人的には時間も成果も大事なポイントと考える。時間あたりの成果はもちろん、それを評価(給料)にまで反映させるのが大切だ。テレワークでは時間管理が重要であり、成果÷時間という評価、分母の時間が明確になる」という田澤氏の発言だ。

 例えば、本記事作成にかかった時間はどれくらいで、どのような成果(ページビューや読了率、拡散度合いなど)があったのかを明らかにし、それが給料に直結するイメージだ。これまでの日本の働き方はある意味で甘く、“真の働き方改革”の実現には従業員も経営層も決意や決断が迫られるのは間違いない。