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「孤立化攻勢」に動揺する台湾 「私は中国人」との回答増える

7/5(水) 16:00配信

ニュースソクラ

気づいた時には遅かった パナマの断交宣言

 中米パナマが6月13日、台湾と断交し、中国との国交を樹立したと発表した。これに台湾政府は強く反発しているが、国民には「自分は中国人」と答える人が増えるなど、動揺も広がっている。
 
 2016年12月には西アフリカの島国サントメ・プリンシペが同様に、台湾との国交を断絶している。台湾とパナマの外交関係は107年の長い歴史がある。台湾の蔡英文総統は、昨年6月に就任後、初の外遊先としてパナマを訪問するなど、関係を重視していただけにショックは大きい。台湾と外交関係のある国は現在20カ国に減ってしまった。中国は、さらに台湾孤立化を進めることにしており、1つの中国を明言せず、中国の関係は「現状維持」を基本とする蔡英文総統は、苦しい立場に追い込まれている。

 台湾紙の報道によって、中国がどうやってパナマを取り込んだかが、徐々に明らかになっている。19日付の台湾自由時報などによれば、台湾側がパナマと中国の動きに気がついたのは、断交の2週間前のことだった。「まだ交渉は始まったばかり」と見なし、警戒しなかったが、11日になってパナマ在住の華僑の間で「台湾との断交を発表する記者会見が行われるらしい」という噂が広がった。あわてた台湾側は、パナマの外務次官に直接問い合わせたものの「そのような内容は聞いていない」と否定された。

 パナマが台湾に書面で断交を公式通知をしてきたのは、断交宣言が出る、わずか40分前だった。

パナマ国内で、台湾との断交、中国との国交交渉を事前に知っていた人は、パレルラ大統領をはじめ副大統領兼外務大臣、外務次官などわずか4人だったという。

 パナマには台湾国籍の人が約300人居住しているが、中国系は30万人に及ぶ。さらに台湾紙によれば、過去3年間でパナマの港湾、鉄道、道路などインフラ拡充に256億ドルを注ぎ込んだ。パナマに80億ドルの借款を提供していた。これに対して台湾からパナマへの治安、教育、医療改善への台湾の支援額は、中国に、はるかに及ばなかった。

 台湾側は、パナマ政府に「怒りと遺憾」を伝えた。台湾CNA通信によれば、李大維・外交部長は17日、「中国が台湾を孤立させるために攻勢に出てきている。(われわれは)中国には正面から対抗しなければならない」と対抗宣言をした。

 さっそく中国本土からの研究員の台湾訪問を拒否。また中国出身の留学生に対する健康保険料を引き上げるなど、「報復措置」を行ったが、効果は微々たるものだろう。

 一方、今回の断交後に、台湾の与党系シンクタンク・新台湾国策研究所が20日発表した成人男女953人対象に実施した世論調査は、台湾の人びとの複雑な心理を反映した結果となった。

 それによれば、回答者の75.0%が、中国と台湾は「2つの国家と感じる」と答えた。中国と台湾が「1つの国家」という回答は14.2%に過ぎず、中国の圧迫が強まるほど、台湾人の独立志向は強まる傾向が出た。

 ただ、同じ調査によれば、自分は「台湾人」と答えた人は前回4月の調査に比べ、3・4ポイント減の80・1%に留まった。自分は「中国人」との答えは、2・3%の増で12・9%に拡大した。「台湾人」と名乗る人の80・1%という数字は、2014年1月以来、もっとも低かった。また中台関係の「現状維持」が不可能になった場合、独立を取るか、中国との統一を取るかとの設問には、「統一」と答えた人が23・6%と、4月に比べ2・4ポイントも増えているのが目に付く。

 台湾の有識者は、この結果について「中国の台湾への外交攻勢が、台湾人の意識に影響を与えた」と分析している。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にした。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:7/5(水) 16:00
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