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氷上の戦士から企業人へ 元東北フリーブレイズの菊池さん

7/5(水) 10:56配信

デーリー東北新聞社

 アジアリーグアイスホッケーの東北フリーブレイズで7季プレーし、今年4月に引退した菊池恭平さん(33)=青森県八戸市出身=。父が社長を務め、自動車の販売や整備などを手掛けるキクチ商会=同市長苗代=で企業人として新たな人生を歩んでいる。大切にしているのは競技を通して学んだチームワーク。「従業員と結束して、時代の流れに負けない組織にしたい」と奮闘する毎日だ。

 アイスホッケー選手だった父の影響で、幼い頃から自然と競技に興味を持った。小学生の時に、クラブチームの八戸南ジュニアに加入。とにかくアイスホッケーが大好きで、氷上の練習時間はチームの誰よりも長かったという。いつしか父が所属していた王子製紙(現・王子イーグルス)や、その後に監督を務めた強豪の明治大で自分もプレーがしたいと人生を思い描いた。

 市立小中野中を卒業後、よりレベルの高い環境を求めて、当時インターハイで連続優勝を飾っていた駒大苫小牧高(北海道)に進学。夢見た通り明治大に進み、王子製紙への入団も決まった。

 しかし、大学の卒業間際、試合中に左肩の靱帯(じんたい)を切るけがをした。入団後もリハビリと練習に励んだが、活躍の機会を得ることなく、わずか2年で戦力外に。「何もできないまま、あっという間に時間が過ぎた」と当時を振り返る。

 その後は、東京都で会社勤めをしながら社会人チームに所属した。

 間もなくして、八戸市を本拠地の一つにフリーブレイズが新設された。誘い話があったが、働き始めたばかりでいったんは断った。だが、トップリーグでプレーすることへの思いを断ち切れず、志願して2009~10年シーズンにチームの練習生となり、10~11年シーズンに入団が決まった。

 主力DFとして16~17年シーズンまで計7季プレーし、3度のリーグ制覇を経験した。「優勝の瞬間は、それまでつらかったことが全部吹き飛ぶほどうれしかった」

 競技に打ち込める喜びをかみしめながらも、30歳を過ぎた頃から「引き際」を考えるように。会社勤めの経験はわずか8カ月。家業を継ぐにも早い時期から仕事に慣れた方が良いかもしれないと、引退を決めた。激しい衝突がある過酷な競技。「中途半端な気持ちでプレーはできない」という思いもあった。

 4月に引退を表明すると、ファンから「まだ早いんじゃないか」と惜しむ声が寄せられたが、後悔はなかった。「やり切った」という充実感があったからだ。

 現在は、常務取締役として資格取得のための勉強をしたり、営業や取引の現場に行ったりして、仕事を一つ一つ覚えている。

 家族と過ごせる時間も増えた。週末は6歳と2歳になる娘2人と出掛けるのが何よりの楽しみだ。「今までさみしい思いをさせていた分、楽しませたい」と父親の表情をのぞかせる。

 ファンに対し、「一言二言では言い表せないほど感謝している」と菊池さん。「今度は自分もチームを応援する側。一緒に盛り上げていきたい」。立場は変わってもアイスホッケーに対する熱い思いは変わらない。

デーリー東北新聞社