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日本よ 独立国家たれ 「平和学の父」が語るビジョン

7/5(水) 18:28配信

カナロコ by 神奈川新聞

 緊迫する朝鮮半島情勢やくすぶり続ける領土問題、米国との望ましい関係、そして自衛隊のあり方。戦後70年余りが過ぎても、日本国民はそれらの明確なビジョン(将来像)を描き切れていない。世界各地の国際紛争の調停にかかわり、代替案を提示してきた「平和学の父」、ヨハン・ガルトゥング博士(86)の目に今の日本はどう映るのか。
 
■朝鮮半島の非核化
 国益と国益が激しくぶつかる国際関係は複雑に絡まり、最悪の場合、戦争や紛争を引き起こす。6月に来日し会見した博士は、発想を変えれば違う世界が見えてくる、と説く。
 
 根本的に日本を含め東アジア地域はいま危険な状況にある。その一つは北朝鮮との関係だ。だが、これは北朝鮮と韓国の問題ではない。北朝鮮と米国との問題である。そして、その米国にどっぷりと頼る日本が問題になるのだ。偶発的であれ、ひとたび戦火が勃発すれば、ターゲットは米軍基地のある日本だ。
 
 直接、北朝鮮の当局と話すと、彼らは三つのことを望んでいる。一つは平和条約の締結、二つ目が国交の正常化。日本と韓国、米国との関係改善である。そして3番目が、本当かと疑うかもしれないが、核なき朝鮮半島なのだ。
 
 6カ国協議のメンバーである日本はイニシアチブ(主導権)を発揮して、三つの提案を真剣に考えようではないか、と投げ掛けてほしい。例えば、平和条約の草案を作れるだろう。北が保有する核を放棄させ、韓国にあるはずの米国の核もなくして朝鮮半島を非核地帯にするよう求める。査察を行い、北も南も核をなくすこと。一歩一歩進めていく提案をできると思う。
 
 日本は1945年の敗戦以来、米国の占領下に置かれている。日本は対外政策だけでなく、国内政治も米国の指示を仰いでいて独立国家ではない。その頼り方は、まるで中毒症状のようだ。米国は歴史的に見ても常に敵を必要とする好戦的な国だ。しかも頼りにしている米国のリーダーは今、ドナルド・トランプ氏である。中毒症状の危険性はさらに増している。
 
 だから日本は米国とある程度距離を置いて、なるべく独立したものの考え方をすべきではないか。

【詳報】「平和学の父」が語る未来への指針

■領土の「共同所有」
 四方を海に囲まれた日本はロシアとは北方四島、中国とは尖閣諸島、韓国とは竹島(韓国名・独島)と、互いに譲れない複雑な領土問題を抱えている。

 歴史的な背景はいろいろあるが、私は同じような解決策を提示している。つまり「共同所有」することだ。例えば、資源が豊かといわれる尖閣諸島の周辺海域を二つのチャイナ(中国と台湾)と日本で共同管理し、資源の収益は40%ずつで分け、残る20%は環境保全などに活用したらどうか。こうした発想は竹島、北方四島でも使える。不可能ではないはずだ。

■米軍基地撤退を
 日本人を妻とし、知日家である博士は米軍基地を日本から撤退させ、自衛隊を「専守防衛」に徹する軍隊とするよう提起する。さらに、好戦的な米国に対しても注文を付ける。

 米国の優れた点は、軍事力でもなければ政治力でもない。経済力でもない。文化の力だ。米国の文化は幅広いが、絵画や音楽、演劇にしろ、他の芸術にしろ、優れたものを持っている。米国人は世界最強の軍事力を心強く思っているが、そんなことを誇らず、もっと良いことに発想を切り替えるべきだ。文化の力で、より豊かな世界となるよう努めてほしい。

 私のさまざまな提案をクレージーと思う人も多くいると思う。だが、立ち止まってヒントになると思う人たちが増えれば、さらに新しい発想が出てくるだろう。明確なビジョンが平和な未来をつくるのだ。

 だから博士は言う。「日本よ、独立国家たれ」