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放置すれば健康格差は拡大? 低収入、低学歴の人ほどさらされる受動喫煙の被害

7/6(木) 6:02配信

BuzzFeed Japan

飲食店は原則禁煙とする厚生労働省の健康増進法改正案が宙に浮く中、東京都議選で圧勝した都民ファーストの会が公約として掲げ、小池知事が条例制定の方針を明言した受動喫煙防止策。

この議論で見逃してはならないのは、学歴や収入の高い人ほど受動喫煙の害から逃れ、社会的に不利な立場にいる人ほど被害を受ける「健康格差」があることだ。

社会格差が健康にどう影響を与えるかを専門とする東京大学准教授の医師、近藤尚己さん(社会疫学)は、「受動喫煙をこのまま放置すれば、健康格差はますます拡大する」と警鐘を鳴らす。【岩永直子 / BuzzFeed Japan】

非喫煙者の4分の1が毎日受動喫煙 低学歴の人ほど被害

日本では、社会格差がどれほど受動喫煙に影響しているのだろうか。

近藤さんはまず、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計副部長、田淵貴大さんらの研究を紹介してくれた。

学歴と受動喫煙の関連を調べるために、2010年の国民生活基礎調査と国民健康栄養調査を組み合わせて解析したこの研究によると、職場か家庭のいずれかで「ほぼ毎日」受動喫煙をしている非喫煙者が男女ともに約4分の1いた。

そして、学歴別に見ると中卒では女性30.1%、男性31.9%がほぼ毎日受動喫煙にさらされているのに対し、大卒では女性16.1%、男性16.9%。学歴が低いほど職場や家庭で受動喫煙にさらされる割合が増えていた。

また、女性は20代、男性は20代、30代と若い世代での受動喫煙率が高く、医療保険別で見ると、中小企業の従業員対象の「協会けんぽ」に加入する男性ほど特に受動喫煙率が高かった(注1)。

「若い頃から長期間、煙の害を蓄積することで病気になる可能性が高くなります。受動喫煙で肺がんや脳卒中、心筋梗塞などのリスクが高まることがわかっていますので、学歴が低く、小さな企業に勤めるような人ほど不健康な環境に置かれがちであることは大きな問題です」

学歴が低いほど喫煙率は高く 若い人ほど大きな差に

そもそも、どうして社会経済的に不利な人はたばこの煙にさらされやすくなるのだろう。受動喫煙の前提となる喫煙状況は格差と関係あるのだろうか。

近藤さんらが分析した結果、やはり学歴が低いほど喫煙率も高い。

特に25~34歳の若い世代ほど差は大きく開く。中卒男性の喫煙率は68.4%、高卒で55.9%であったのに対し、最も低い大学院卒は19.4%、大学卒は36.5%だった。女性は中卒で49.3%、高卒で23.9%、大卒で6.6%、大学院卒で4.8%だ。

「学歴が低いと就職や収入、結婚などで不利な立場に置かれやすく、自分の力で何かを成し遂げられるという自己効力感も低くなりがちです。心理的なストレスや不公平感から喫煙することもあるでしょう」

「教育を受けた人より健康に対する知識や関心が少ないことも影響するでしょうし、親から引き継いだ喫煙習慣への抵抗感の薄さや友人関係、アルバイト先や就職先の喫煙状況など環境の違いもあると思います。受動喫煙しているうちにたばこへのハードルが下がり、自分も喫煙者になる可能性は高いと思います」

日本では、1970年代までは喫煙の健康被害もまだそれほど知られておらず、8割近い男性が喫煙者だった。

「昔の男性はみんな吸っていたので、高齢世代ではたばこに関する健康格差は目立ちません。今は喫煙の害に対する知識や対策が広まったので、若い世代では社会的に不利な人たちだけが取り残されている状況です」

近藤さんの研究室で、親がたばこを吸っている子供の調査をしたところ、低学歴の親ほど子供の受動喫煙率が高かった。その背景をさらに掘り下げると、低学歴の親ほど喫煙のルールが緩い職場で働いている傾向があった。

「低学歴の人ほど、喫煙が容認される職場で働きやすく、そこでの考え方や習慣が家にも持ち込まれるのだと思います。子供はたばこの煙を吸って健康被害を受けるだけでなく、たばこに対する抵抗感が薄くなって、将来、自分も吸うようになる。社会的に不利な立場にいる人の職場環境は、家という空間、子供という次世代まで影響を及ぼすのです」

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最終更新:7/6(木) 6:02
BuzzFeed Japan