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JAL、なでしこラボ2期生が研究発表会 植木社長「介護チャーターやろうよ」

7/7(金) 10:01配信

Aviation Wire

 日本航空(JAL/JL、9201)は7月6日、女性をはじめとする多様な人材活用の研究組織「JALなでしこラボ」の第2期メンバー4チームによる研究発表会を、東京・天王洲の本社で開いた。

【定時退社実現などに向けた施策】

 なでしこラボは2015年9月設立。子育てと仕事の両立など、JALグループ全体で男女を問わず組織横断的にメンバーが集まり、課題の共有や人材活用の可能性を探っている。

 2016年10月25日にスタートした第2期のテーマは、「BIAS(バイアス)とVISION(ビジョン)」。7人1組が4チームで、各チームにはメンター(サポート役)が1人ずつ加わる。4月18日には、なでしこラボの統括責任者である植木義晴社長を2期生が囲む車座意見交換会を開催。メンバーの中間発表に対して植木社長が「つっこみ」を入れ、さらに研究を進めていった。

 7月6日に開かれた研究発表会の冒頭、なでしこラボ担当役員の大川順子専務は、「研究して落とし込むサイクルを、しっかり作りたいと強く思っている。それぞれの職場で渦を作って欲しい」と、全国から集まったグループ社員にラボの狙いを説明した。

 発表会では、4チームが研究成果を披露。1期生が扱った介護に関する研究を実現に向けて継続してきたチーム「TAKE OFF」、360度の視点を持ちたいという思いを込めたチーム「360」、多様な価値観や文化を持つ人たちが、個々の色を輝かせて同じビジョンを目指す架け橋になりたいと名付けたチーム「虹の架け橋」、考え方に着眼し、もっとも大切なものを見失わないようにと命名したチーム「ドーナツの穴」が、順番に発表した。

◆なでしこ介護チャーター

 チーム「TAKE OFF」のテーマは、第1期研究テーマの具現化。1期生の研究では、女性社員が管理職に魅力を感じていなかったり、介護と仕事の両立に悩む社員の姿が浮き彫りになった。

 メンバーたちは、女性が管理職を目指す上で壁となるもののうち、コミュニケーション不足解消に向けて、社員同士が話し合う場を朝に設ける「朝活」や、女性が管理職にやりがいを感じてもらうためのパネルディスカッション、仕事と介護を両立するために重要となる、社員の知識向上や周囲の理解向上に向けた取り組みを進めてきた。

 介護については、セミナー開催やハンドブック作成などの取り組みを進め、お年寄りが運動習慣を身につけられる介護施設を今年2月に訪れた。施設を利用するお年寄りから、旅行好きだったがひざを悪くして長距離の旅行を半分諦めているといった話を聞いた。

 TAKE OFFのメンバーは、お年寄りが運動を続けるモチベーションを維持するひとつの方法として、「なでしこ介護チャーター」を発案。メンバーが「温泉にもう一度行ってみたいなどの気持ちに応えたい。私たちだけでは実現できないので、みなさんに協力していただいて、シニアの皆さんの夢を実現したい」と発表すると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。

◆蛍の光で定時退社

 チーム「360」のテーマは、「オンとオフの好循環」。定時退社に対してメンバーが意識調査したところ、調査対象となった社員のうち半数以上が、定時退社に後ろめたさを感じていた。

 一方で、周囲は定時退社や年休を取得したほうがよいと感じていた。第2期のテーマでもあるバイアス(思い込み)によって、定時退社に後ろめたさを感じているとして、メンバーは定時退社時間に「蛍の光」をBGMとして流すことを提案。実施したところ、約8割の社員から「帰りやすくなった」「定時退社の意識が高まった」といった回答を得たという。

 また、定時退社のため、自席に「かえるクリップ」を備えることも提案した。定時退社する通常時は緑色のカエル、残業する際は黄色のカエル、緊急事態に対処している場合は赤色のカエルとして、同僚に自分が置かれた状況を伝えやすくする狙いを説明した。

 メンバーは、オフの時間が充実することで仕事への活力が生まれ、新たな発想や視野の広がりにつながることで、長く働きたいと思える職場になると結んだ。

◆前例にとらわれる「JALバイアス」

 チーム「虹の架け橋」のテーマは、「自己成長」。メンバーが現状分析すると、誰かがやってくれるだろうという意識や、会議中発言しないといった傾向がみられたという。

 これらをみていくと、「上からの意見に影響されやすい」「前例にとらわれ変化を好まない」「与えられた範囲内でしか働かない」「自分がやらなくても誰かがやってくれる」「同調を好み目立つ言動を慎む」の5点に集約され、「JAL BIAS(JALバイアス)」と名付けた。

 メンバーはJALバイアスの改善策として、「マニュアルに書いてない」と答えてしまう場面で、「マニュアルには書いてないけれど、やってみても良いですか」と応じるようにするといった、前向きな姿勢になることを提案した。

 その効果として、積極的な発言や他人の意見を引き出すといった効果が見られるようになり、仕事への前向きな姿勢や経験則だけに頼らない行動になっていったという。

◆モチベーション高める要素は何?

 チーム「ドーナツの穴」のテーマは、「JALグループいきいきの素」。自分たちがイメージするJALは、「他社の追随」「本社と現場の壁」「頭が固い」「斬新な発想が少ない」「ブランドがわかりずらい」といったキーワードが出てきたという。

 モチベーションを高めることで、いきいきと働けるJALグループにしたいと考えたが、人それぞれモチベーションが高まる要素「いきいきの素」が異なる点に着目。飲み会など「生理・情緒」が自分をいきいきさせるという人もいれば、褒められるなど「言語」に感じる人もいるとして、役職別や職種別で調査した。

 「生理・情緒」は一般職では19%だったのに対し、管理職は32%、役員は55%と役職が上がるにつれて割合が増えると発表すると、会場からは笑いが沸き起こった。これは上司が部下を飲み会に誘っても、部下は気を遣うといったことが起こり、上司のモチベーションは上がっても、部下は逆に下がってしまう可能性を指摘した。

 また、上司が仕事を割り振る際も、「言語」からやりがいを感じる人は、ただ仕事を頼まれるよりも「君だから任せられる」といった一言があることで、仕事を振られた印象が大きく異なると説明した。

 こうした個人ごとの「いきいきの素」は、他人が当てにくいことにも言及。JALの国際路線事業部では的中率が46%だったのに対し、客室乗務部では24%となるなど、平均すると的中率は32%だったという。いきいきと働ける職場作りには、同僚の「いきいきの素」を的中させるような、相手の多様性を受け入れるものの見方や感じ方が重要だとした。

◆植木社長「女性視点あるからこそできた」

 発表会後の講評で、植木社長は「介護チャーターやろうよ」と即決した。植木社長は会場に集まった社員に、釧路の子供たちを羽田の格納庫に招待した逸話を披露した。

 「養護学校(特別支援学校)の先生に、釧路空港の飛行機を子供たちに見せて欲しいと言われたので、せっかくだから羽田の格納庫に来てもらい、いろいろ体験してもらおうと思った。僕が会社でその話をしたら、(社員から)できない理由がいっぱい出てきた。“JALバイアス”だ。人が足りないならボランティアを募るし、お金が足りないなら僕が出すから、もう頼まないと言ったら、翌日実施が決まった」と笑った。

 「専門家がそろっているんだから、できないわけがない。プロ野球チームを作ろうというわけじゃないんだから、やる気があるかどうかだ」と、実現に向けた意気込みを語った。

 なでしこラボは女性活躍推進が軸だが、社員の多様性を生かしていくこともテーマのひとつ。植木社長は4月の中間発表と比べ、「(4月の発表では)女性女性していた。女性が考えそうなアイデアで何かやろう、という感じだった。今回発表されたものは、(対象が)女性でなくてもよいものだが、女性の視点があるからこそできたものだ」と指摘した。

 「バイアスは男ほどいっぱい持ってる。それを見ないようにして過ごしているのが男性社員。そこにメスを入れた。女性だからこそ追求できたのではないか」と語り、「女性活躍推進から、本当の意味でのダイバーシティに向かってきたんじゃないか」と話した。

 一方、JALが進めているグループでのブランド統一については、グループ会社の主に若手社員から、個社の個性が薄らいでしまうことを危惧する声が聞かれる。植木社長は、グループ会社の多様性について、「JALフィロソフィで、JALグループのブランドはできてきた。個社の個性は、一番の要素は地域性ではないか。沖縄には沖縄の、鹿児島には鹿児島の良さがある。こういったところを生かしていくことだ」と語った。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:7/7(金) 12:11
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