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コニカミノルタが遺伝子診断企業を買収「これから個別化医療を徹底的にやる」

7/7(金) 7:40配信

MONOist

 コニカミノルタと産業革新機構は2017年7月6日、東京都内で会見を開き、高度な遺伝子診断技術を有する米国のアンブリー・ジェネティクス(Ambry Genetics、以下AG)を共同で買収すると発表した。既に買収契約を締結しており、買収金額は8億米ドル(約906億円)だが、AGの今後2カ年度の決算数字に応じて、追加代金が2億米ドル(約226億円)発生する可能性がある。出資比率はコニカミノルタが60%、産業革新機構が40%。同年10月までに買収を完了する予定だ。

【プレシジョンメディシンとは】

 AGの現在の年間業績は売上高約316億円、営業利益約50億円。今後は、米国内にとどまっているAGの遺伝子診断サービスを日本を含めてグローバル展開を進めるとともに、コニカミノルタのヘルスケア事業とのシナジー効果を加えて、5年後の2021年度に売上高1000億円、営業利益200億円に伸ばすることを目標としている。

●需要が拡大するプレシジョンメディシン

 コニカミノルタと産業革新機構がAGを買収する背景には、需要が拡大しつつあるプレシジョンメディシン(個別化医療)市場の存在がある。プレシジョンメディシンとは、個々人の細胞における遺伝子発現やタンパク質などの特性を分子レベルで判別することで個々の患者を精密にグループ化(層別)し、最先端の技術を用いて適切な投薬、治療と予防を提供する医療のことだ。特にがんの診断や治療で、大きな効果を発揮すると期待されている。

 がん治療に関わるプレシジョンメディシンとして注目を集めている、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤の市場規模は、2017年の6兆円に対し、2021年には9兆円にまで拡大する見込みだ。

 AGは、高度な遺伝子診断技術を持つとともに、遺伝子検査のコンサルティングなどを行う遺伝カウンセラー(GC)のチャネルでの圧倒的な強さを背景に、がん領域を中心とした米国の遺伝子検査市場におけるリーダー的存在になっている。1999年の創業で20年近い歴史があり、遺伝子診断に関するデータベースを蓄積していることも評価されている。

●2018年度から日本で遺伝子診断サービスを開始

 コニカミノルタのヘルスケア事業は、X線や超音波を用いた医療診断機器が中心だ。ただし、コニカとミノルタそれぞれの「創業のDNA」(コニカミノルタ 社長兼CEOの山名昌衛氏)である材料、光学、画像の技術を基に開発したタンパク質高感度定量検出技術(HSTT)は、がん治療に関わるプレシジョンメディシンに有効とみられており、既に事業展開も始めている。

 今回のAGの買収は、端緒についていたプレシジョンメディシンへの参入を本格化させるものだ。

 AGの遺伝子診断技術を活用すると、患者にとって分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が有効かどうかを判別することができる。これらの薬は極めて高価(年間で3000万円かかるといわれている)である以上、まずは有効かどうかを確認する必要がある。

 しかし日本国内には、大規模遺伝子データ解析結果を踏まえた高精度の遺伝子診断サービスが存在していない。そこでコニカミノルタは、2018年度から、AGの技術を用いた遺伝子診断サービスを日本国内で始める計画である。乳がん、卵巣がん、大腸がんなどが診断対象となる。

 そして、HSTTを使えば、がん細胞や免疫細胞の位置を正確に認識して適切な量の投薬を行えるようになる。つまり、AGの遺伝子診断技術とHSTTの組み合わせによって「プレシジョンメディシンに本格参入するための両輪がそろった」(コニカミノルタ 常務執行役 ヘルスケア事業本部長 藤井清孝氏)というわけだ。

 また、患者の診断のみならず、製薬企業によるプレシジョンメディシンの創薬でも、AGの遺伝子診断技術とHSTTはシナジー効果が期待できるとしている。病院・患者向けの市場規模は2016年の27億米ドルから2026年には67億米ドル、製薬企業向けの市場規模は2016年の10億米ドルから2026年には34億米ドルまで伸びるとみている。

 山名氏は「現在、コニカミノルタは、課題提起型デジタルカンパニーになりきると言っている。デジタルの活用による『マスから個へ』を推し進めており、それは医療におけるプレシジョンメディシンでもいえることだ。今回のAGの買収を踏まえ、これから10年、20年先を見据えながらプレシジョンメディシンを徹底的にやり遂げる覚悟だ」と強調する。

 産業革新機構 社長兼COOの勝又幹英氏も「日本は、欧米や中国、韓国に対して、ゲノム医療をはじめとするプレシジョンメディシンで遅れているといわれている。官民ファンドである産業革新機構としては、今回のAG買収と他の投資案件をオープンイノベーションで連動させるなどして、日本の医療課題の解決につながるプレシジョンメディシンの推進に積極的に貢献していく」と述べている。

最終更新:7/7(金) 7:40
MONOist