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米国投資家が語る 宇宙ビジネスで“張る”べき領域とは?

7/7(金) 11:26配信

ITmedia ビジネスオンライン

 ベンチャー企業の集積地として有名な米国カリフォルニア州のサンフランシスコ。この地で6月末、宇宙ビジネスカンファレンス「NewSpace 2017」が開催された。米国の業界リーダー300人ほどが参加した。筆者は3年連続での出席となるが、過去2年との違いも含めて詳しく見ていきたい。

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●投資領域は画像解析、衛星ネット、有人宇宙、宇宙空間

 NewSpaceは2015年まで約10年間シリコンバレーで開催され、2016年はシアトル、今年はサンフランシスコで初開催だった。サンフランシスコは米Uber、米Twitterが本社を構えるなど、昨今勢いのあるベンチャー企業の集積地として有名だが、宇宙ビジネス業界でも衛星ベンチャーの米Planetや米Spireが本社を構えており、注目が高まっている。

 同カンファレンスは起業家、大手企業、政府機関、投資家が一堂に会することを目的としており、昨年までは起業家が多くステージに登壇していたが、今年は起業家以外の登壇者が目立った。特に投資家からは米DFJ、米Bessemer Venture Partners、米Space Angels Networkなど著名なベンチャーキャピタルおよびエンジェル投資家が参加しており、引き続き宇宙分野が投資領域として魅力的であることがうかがえた。

 宇宙分野でも著名なDFJのスティーブ・ジャーベットソン氏は「New Frontiers in New Space」と題したキーノートを行い、昨今破壊的変化が起きている6つの産業領域として、ロボット&AI(人工知能)、輸送・自動車、製造業、バイオ技術、農業と並び宇宙を挙げた。さらに宇宙産業の変化の理由として「Cheaper Access」「Simulation」「Commodity Hardware」「Dematerialization of Value」「Global Markets」「Agile Aerospace」の6つを指摘した。

 同氏はこれまでにPlanetにも投資しているが、「衛星データ解析は日々の低分解画像による変化抽出と高分解能画像解析の組み合わせになる」と語った。加えて以前から注目している衛星インターネットインフラ構築に関しても、「フェーズドアレイアンテナ、セミコンダクター、アンプなど経済合理性を担保する技術が近年実用化されたことで、2020年か21年までに複数の構想が実現され、10年以内にネット接続人口が20億から60億人まで増える」と話した。

 他方、宇宙ベンチャーへのエンジェル投資を多数行ってきているSpace Angelsのジョー・ランドンCEOは、投資領域として「Small Satellite Systems and Space Data」「Human Spaceflight Enablers」「Building and Serving the in-space Economy」の3つを挙げた。同氏は1年前には投資領域を「「Terrestrial(地上)、In-Space(宇宙空間)、Planetary(惑星)の3つがあり、Terrestrialが最も成熟している」と語っていたが、特に今年は有人宇宙や宇宙空間における産業に注目していることが特徴的だ。

●衛星データは可視光からIRとSARへ

 衛星データ利活用について、筆者が4月末に参加した宇宙ビジネスカンファレンス「Space2.0」では、衛星データをマネタイズするための深層学習の利用とソリューション構築のための顧客理解の重要性が語られた。一方、今回のNewSpaceでは衛星解析ベンチャーの米Orbital Insightのジェームズ・クロフォードCEOが登壇し、可視光以外のIR(赤外)とSAR(レーダー)の可能性が強調されたことが印象的だ。

 同社が展開している石油備蓄タンクのモニタリングサービスに関しては、可視光センサーのデータを使って、備蓄タンク表面にできる影などで備蓄量を推計していたが、「(内部の備蓄量による温度が変わるため)IRを活用して表面温度を測ることで備蓄量が分かる、またSARを活用することで(雲などがかかっていても関係なく)24時間の監視が可能になる」と語った。さらに「SARデータの活用可能性として、商業活動の集中するPort(港)における船の数の観測などがある」とも語った。

 米国において可視光の小型衛星はさまざまな企業が乱立してきたが、今年5月に米Googleが傘下の衛星ベンチャー米Terra BellaをPlanetに売却したことで、衛星コンステレーションの構築・運用・データプラットフォーム構築はPlanetに集約されつつある。また衛星データ解析に関しても、前述のOrbital Insightがつい先日50億円の資金調達をするなど抜け出した感がある中、話題の中心が可視光から他センサーへと移りつつある。

●資源探査・開発と宇宙アクセス革命もホットトピック

 今回はDeep Space(深宇宙)がホットトピックとなっていた。

 政府レベルの取り組みとして宇宙資源探査・開発を進めるルクセンブルク政府からはシュナイダー副首相が駆けつけてキーノートを行い、「資源開発産業を現実にすることを目指す。既に60社の企業とパートナーシップを結び、220百万ユーロの資金をコミットしている。さらにベンチャーキャピタルと協業して新たなファンドの組成を計画している」と力強く語った。

 宇宙ロボットベンチャーの米Offworldは、重量53キログラム、30センチメートル×60センチメートル×20センチメートルのロボットを開発しており、同社が目指す究極のゴールは太陽系で数百万台の産業用ロボットを労働力として提供する事業だ。当面の目標として地球上の資源採掘・建設用途向けのロボット事業を行い、将来的に月面ロボットや火星ロボットの開発へとつなげていくという。当面の開発費に関しては既に資金調達済みとのことだ。

 最後に、宇宙アクセス革命も引き続き注目が集まる。昨年から同カンファレンスをスポンサーしている米Blue Originは複数のパネルに登壇、宇宙アクセス革命の意義を1980年代の高速道路整備や2000年代のネットインフラ整備時代になぞらえた。また、先日初の技術実証に成功した小型ロケット「Electron」の開発を進める米Rocket Labは「打ち上げのコストを下げるとともに、頻度を増加することが小型衛星産業のために重要だ」と語っており、目指すのは毎週打ち上げサービスとのことだ。

 このように高い熱気は変わらずとも、少しずつと投資領域や注目領域が変化しつつあり、その見極めが重要なのが今のNew Space産業と言えるだろう。

(石田真康)