ここから本文です

焦点:東芝メモリー買収、薄氷のWD訴訟戦略 勝算は不透明

7/7(金) 19:43配信

ロイター

[東京 7日 ロイター] - 東芝<6502.T>のメモリー子会社の買収手続きは、産業革新機構を中心とした「日米韓連合」が優先交渉権を得たものの、最終契約が大幅に遅れている。理由の1つが、訴訟戦略で揺さぶりを掛ける東芝の合弁パートナー、米ウエスタン・デジタル<WDC.O>(WD)の存在だ。

しかし、「強気に見えるWDも、実は追い込まれている。時間がかかればWDが失うものも大きい」(関係者)との指摘もあり、「もはやチキンゲーム」(同)の様相を呈している交渉の行方は、いまだに見通せていない。

<WD、最先端メモリーの権利失う可能性>

「WDは東芝との間で、最先端のメモリー事業に関する合弁契約が更新できていない。これはWDにとって致命的」──。ある東芝側の関係者は、こう打ち明ける。

東芝は現在、三重県・四日市工場で次世代型メモリー半導体を量産する第6製造棟の建設に入っている。同メモリーは、より記憶容量が大きい最先端の製品で、ライバルの韓国サムスン電子<005930.KS>を追撃する基幹製品となる。

しかし、WDは現時点で、第6製造棟に関する合弁契約を結べておらず、製品の販売権も調達権も持っていない。合弁契約は、工場ごとに結んでおり、これまでに3本の契約を締結してきた。「このまま契約の更新ができないと、売れ筋商品は全て東芝だけが権利を持つことになる」(同関係者)というわけだ。

<2兆円の買収が紙切れに>

WDは2016年、東芝の合弁先であった米サンディスクを約2兆円で買収した。しかし、同社が開示している四半期報告書で、事業リスクに関して「NAND調達の大部分を東芝とのJV(合弁事業)に依存している」とし、「サンディスクの買収効果実現は、このJVと東芝との戦略的提携の可否次第」だと説明している。東芝との関係が、NAND事業のリスク要因になると自ら告白した格好だ。

関係者によると、東芝とWDの合弁事業契約は、2021年から順次期限が到来する。「それまでに契約を更新できなければ、将来紙くずになる権利をWDは2兆円で買ったことになる」と明かす。

<それでも残る訴訟リスク>

今月14日には、WDが米国カリフォルニア州上級裁判所に申し立てたメモリー子会社売却差し止めの仮処分の判断が、下される可能性がある。

東芝サイドには「差し止めの仮処分が出たとしても、粛々と売却の手続きを進めればいい。WDが抱えている事業リスクを考えれば、来年3月までのクロージング(出資)までに話し合い決着はできる」との強硬論もある。

一方で、革新機構、米系ファンドのベインキャピタルを主軸に、韓国のSKハイニックス<000660.KS>、日本政策投資銀行が加わっている日米韓連合の中には「事業スポンサーならともかく、フィナンシャル・スポンサーは訴訟リスクを負えない」(連合関係者)との声も出ており、最終契約の見通しが立っていない。陣営を主導している経済産業省の手腕や責任に対する批判も出てきている。

一部には、WDと米系ファンドのKKRに、革新機構と日本政策投資銀行が合流し、陣営の構成を組み替えて最終決着を望む声も出ている。

(布施太郎、取材協力:浜田健太郎、山崎牧子 編集:田巻一彦)

最終更新:7/17(月) 2:04
ロイター