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欧米に広がる金利先高観、ドラギ氏が先鞭

7/7(金) 13:40配信

ニュースソクラ

楽観論で投資続ける市場に、欧中銀総裁が冷や水

 ドラギ欧州中央銀行総裁発言が発言が久しぶりに市場を揺さぶった。発言は6月29日の欧州中央銀行(ECB)のフォーラムでの講演だ。

 「いまはすべての兆候がユーロ圏の力強くかつ裾野の広がりをもった回復を示している。デフレの圧力はインフレ圧力に置き換わった(All the signs now point to a strengthening and broadening recovery in the euro area.Deflationary forces have been replaced by reflationary ones.)」と、総裁は締めくくった。

 当然のことながら、投資家はこのドラギ発言がかつてのバーナンキのテーパリング発言と同様にECBの量的緩和の「出口」が近いことを示唆するもの、と受け止めた。

 世界の金融市場では発言当日のドイツのDAX株式指数が9か月ぶりの安値を記録して、NYダウも下落、日経平均も2万円の大台を割れた。債券市場ではドイツ国債が急落して10年物金利は0.46%まで急上昇した。

 軟調を続けていた米国10年債金利も2.29%まで上昇した。通貨ユーロは長期金利の上昇をはやして、対円でみても125円台から128円台と急騰した。

 このタカ派的なドラギ発言をみて、大半の投資家はECBが9月の理事会で量的緩和の縮小を決定しよう、と観測している。

 ECBは、ドイツ連銀のワイトマン総裁を筆頭にしたタカ派の主張に歩み寄る結果となるわけだが、確かにユーロ圏の景気は消費、輸出を中心に近年にないほど、(ドラギ総裁の言葉を引用すれば)力強く裾野の広い景気回復をたどっている。

 政治面でもEUでは懸念されたオランダ、フランスの総選挙、大統領選で極右勢力の台頭を免れた。むしろフランスでは「EUの深化」を打ち出すマクロン新大統領が誕生した。

 ドイツで9月の総選挙で勝利を収めるとみられるメルケル首相とマクロン大統領の独仏枢軸によりEUの安定化が進むと思われる。ECBによる金融正常化の公算は強まっている。

 欧州発の金融市場の混乱は、米国株価、債券の下落も誘った。FRBは、昨年12月、今年3月に続き、6月にも0.25%の利上げに踏み切ったが、個人消費支出(PCE)デフレーターが1.5%にとどまるなど、目標の2%を下回った状態が続いている。

 このため投資家は「FRBの追加利上げや量的緩和の出口は当面あるまい」との楽観論に立ち、債券を買い進め、株価も2万ドル台の高値圏で安定していた。

 FRBが9月に量的緩和の縮小を決定して、12月にもう一回利上げすると強く示唆しているのであるから、株価が調整されて、金利も上昇するのに現実にはその反対のことが起きていた。

 6月28日の恐怖指数と呼ばれるVIX指数が一時的に前日に比べて5割ほど上昇するなど、投資家の間にもようやく現在の株価バルエーションなどをみて高値警戒観が芽生えてきた。そこに起きたのがドラギ発言だった。

 FRB内部では物価の上昇以上に金融市場の動きに警戒を強めている感がある。

 ごく最近ではフィッシャー副議長が「株式市場では株価収益率(PER)が歴史的な高水準にあり、社債のスプレッドがリーマンショック後の最低レベルにある。市場のリスク志向の高まり(riskappetiteincreased)の兆しには注意を要する」と金融市場の動きに警鐘を鳴らしている。

 日本では日銀のマイナス金利、イールドカーブコントロールが強力で長期金利もほとんど動かない。為替は米欧と日本の金利差拡大予想から円安方向に振れている。日銀としては静観していれば金利はツレ高にならず、円安を享受できそうなので万々歳というところであろうか。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:7/7(金) 13:40
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