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証券業界、富裕層の獲得競争激化 機関投資家向けツールまで投入

7/7(金) 18:29配信

日刊工業新聞電子版

■SMBC日興、プロ向けリスク管理「アラジン」

 預かり資産を積み上げ、中長期的に安定した運用益を確保しようと国内営業のビジネスを変革中の証券会社。そのカギとなるのが資産を多く保有する富裕層の獲得だ。ラップ(投資一任契約)口座といった金融商品はもとより、最近は機関投資家が使用するリスク分析のサービスを富裕層向けに提供する動きも出てきた。富裕層顧客をめぐる競争は激しさを増す。

 SMBC日興証券は富裕層事業向けに、リスク管理のための新たなツール「アラジン」を導入した。元々、米資産運用会社ブラックロックが開発し世界200社以上の機関投資家が採用するなどプロ投資家の間では知られたツールだ。アラジンを使えばリスクを約3000もの要素に分解した上で、より精緻にリスク分析できるようになる。

 例えば日本株の場合、一般的にトピックス(東証株価指数)など指数ベースでの分析が多い中で、個別株単体のリスクを数値化できる。さらに為替や金利などが変化した場合、保有資産のリスクがどの程度変化するかの将来予測もプロ投資家と同じレベルで把握できるようになる。

 今後、リスクを洗い出した上で、顧客に合わせた最適な商品提案につなげ、富裕層向けの事業をより強化する狙いだ。

■販売手数料スタイルからフィービジネスへ

 証券会社の国内営業は収益の安定化を図るため、市況に左右されやすい販売手数料を稼ぐ手法から預かり資産の残高に応じて手数料を受け取るフィービジネスへ変わりつつある。この場合、資産残高に応じて手数料が変動するため、資産を多く保有する富裕層は各社の主要顧客となる。当然、顧客をめぐる競争は増す。

 業界では、既に富裕層向けの金融商品やサービスを投入する動きが相次ぐ。大和証券は富裕層向けに資産相続の相談に応じる専門コンサルタントを全国60以上の店舗に配置し、17年度末までに100店舗への拡大を視野に入れる。

 ラップ口座では同社や野村証券といった対面証券に加え、SBI証券などインターネット証券も参入。日本投資顧問業協会によるとラップ口座の資産残高は6兆5702億円だった。

 ただ、商品やサービスを提案する前提として顧客の資産にどの程度のリスクが潜むのか、その分析力の向上も要求される。SMBC日興証券でいえばアラジン導入からまだ約1カ月だが、既に「他社で預けている資産も分析してほしい」といった要望が届いているという。

 金融商品に比べて表に出てこないリスク分析だが、その分析の巧拙も富裕層事業における差別化要因になる可能性がありそうだ。