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金融庁長官、異例の3年目。改革路線は誰のため?

7/7(金) 15:14配信

ニュースイッチ

試される地域金融改革と投資家目線

 金融庁の森信親長官(60)の続投が決まった。森氏は2015年7月の長官就任以来、金融行政の改革を主導。金融機関に対し融資先企業の事業の将来性を重視する姿勢や、顧客本位の運営を求めてきた。歴代金融庁長官の在任期間は1―2年が多く、異例の3年目に入る森氏が進める改革路線がどこまで成果を上げられるのか注目される。

 森氏が特に力を入れてきたのが地域金融だ。「借り手の事業内容の実質より、担保・保証があるかどうかといった形式に着目してしまう」。

 16年に開いた第一回の金融モニタリング有識者会議で、地方銀行の融資姿勢に対し森氏はこんな警鐘を鳴らした。地銀が融資先の担保・保証の有無や、財務実績を重視して融資を判断することを問題視していた。こうした形式主義は特定の企業に多くの金融機関からの融資が集中し、貸出金利を押し下げる過当競争も招いていた。

 これを受け金融庁は地域金融機関に対して、融資先の事業の中身や将来性に対する目利き力を高めて融資を判断し、企業の収益力を金融面から支援するよう促している。

 融資先企業の成長は、人口減や超低金利下で収益が悪化する金融機関自身の成長にもつながるという効果も期待できるという。森氏は米経営学者マイケル・ポーターが提唱する「共通価値の創造」を公の場でたびたび引用するが、顧客と金融機関の共通価値の創造こそが金融機関の目指すべき姿としている。

 地銀幹部からは「以前から目利き力を高めようとやってきたが、なかなか理想的には行かない」との声も漏れる一方で成功事例も出ている。地域金融改革の影響がどこまで広がるか注目される。

 森長官は4月の講演で、金融機関が提供する投資信託の現状について「消費者の真の利益を顧みない生産者の論理が横行している。売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っているのではないか」となどと厳しく批判している。

 金融庁は金融機関に対して利益相反の適切な管理や手数料の開示を求める「顧客本位の業務運営に関する原則」をまとめた。販売手数料ゼロで長期運用に適した投資信託「積立NISA」の制度が立ち上がり来年1月から発売される。

 金融庁長官として3年目となり、共通価値の創造や真の顧客本位に向けた森氏による金融行政改革は集大成に入るとみられる。「豪腕」とも評される森氏だが、大胆な改革路線にいまだ戸惑う金融機関もあり、金融機関とのより深い対話が必要になりそうだ。

<専門家の見方>
 森長官の路線の中で、「顧客本位」と表現されている部分が、より「投資家本位」に近づき、金融機関と資産運用業界に厳格なフィデューシァリー・デューティを課すようにならないと、東京に世界の投資家を集積させ、香港やシンガポールに追いつくことは難しい。3年目に期待したい。
(ニューホライズンキャピタル会長兼社長・安東泰志氏)

日刊工業新聞経済部・池田勝敏

最終更新:7/7(金) 15:14
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