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<医療>「自転車でED」はウソ?ホント?

7/8(土) 10:00配信

毎日新聞

 長時間、高頻度に自転車に乗ると、ED(勃起不全)になるとされ、日本性機能学会のガイドラインでも注意が促されているそうです。ところが、先日、この説を否定するような研究発表がありました。自転車にかけられた“EDの原因疑惑”は冤罪(えんざい)だったのでしょうか? 男性の性機能に詳しい大阪大学招へい教授、石蔵文信さんの解説です。

 ◇多数の研究から定説に

 以前からサイクリング愛好の男性が「サイクリングED」になっているという説があった。勃起に関わる神経や血管が集中している会陰部がサドルで圧迫されることが主な原因だと考えられている。自転車業界もいち早く反応し、中心部に穴が開いたドーナツ状サドルも発売されている。

 サイクリングとEDの関係については、これまでにさまざまな研究が発表されている。1997年、米国泌尿器科学会がボストンの男性サイクリストとランナーを比較した結果、「中程度から完全なED」である者は、ランナー群が1.1%だったのにサイクリスト群は約4倍の4.2%だったという論文を発表してから、大きな問題となった。

 99年には独ケルン大学が、アマチュアの長距離サイクリストにアンケートを実施したところ、サイクリストでない人のED発症率が3.9%だったのに対し、サイクリストは13.1%だった。さらに、週に3時間以上自転車に乗る人はそうでない人と比べ1.7倍EDになりやすいなど、サイクリングとEDの関係を調査した研究が続き、「自転車はEDになりやすい」というのが学界の定説であった。私が所属する日本性機能学会のED診療ガイドラインでも「自転車は注意が必要である」と記載されている。

 ◇男女とも自転車と性機能は無関係?

 しかし、そんな業界の定説をひっくり返す2件の研究が2017年5月の米国泌尿器科学会の学術集会で発表された。ただし、学会発表はしっかりとした査読(第三者が論文の重要性や科学的分析などをチェックする)がなされていないことも頭に入れつつ、発表をみてほしい。

 まず、スポーツクラブの男性約4000人を対象とした調査の結果、自転車競技の愛好者は、水泳やランニングの愛好者に比べて会陰のしびれはあるものの性機能は劣っていなかったという。性の健康スコアも高く、心臓への良い影響が泌尿器リスクを上回っていると考えられた。また、女性アスリート約2700人を対象とした別の研究でも、自転車競技は尿路感染症のリスクが高く、会陰のしびれおよび臀部(でんぶ)の痛みが発生する可能性があるものの、女性の性または泌尿器の健康に著しい影響を及ぼさないことが分かった、というのである。

 今後、これらの研究が本当に正しいのか、世界中で検討されるだろう。しかし、物事には良い面と悪い面があるのが普通である。たとえサドルにまたがることが若干、性機能に悪い影響を及ぼすとしても、自転車をこぐことで心肺機能が高まり、気分がリラックスできるなら、差し引きで性機能に良い影響のほうが大きいかもしれない。むしろ自転車もいや、運動も嫌いと言って、家でゴロゴロしている人は何事にも消極的になって、性機能も低下するかもしれない。

 自転車競技と性機能の関係はまだまだ論議が続くであろうが、ママチャリで近所にお買い物に行く程度なら、影響を心配することはあるまい。ただし、あまり気合を入れるとそれなりの影響が出るかもしれないので、何事も程々が良いようだ。

最終更新:7/8(土) 10:00
毎日新聞