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<製茶条例廃止方針>広がる波紋 静岡茶の誇りか商品の自由度か

7/8(土) 8:42配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 静岡県が7日までに明らかにした製茶指導取締条例の廃止方針が、茶業界の内外に波紋を広げている。茶業界では「茶が一般食材と同じように扱えるようになり、自由度が高まる」とする一方、「静岡茶の誇りが失われる」と賛否が分かれる。県消費者団体連盟(小林昭子会長)は来週にも、「廃止すべきではない」と県に申し入れるという。

 「消費者が静岡茶に抱いてきた信頼が崩れてしまわないか心配」と小林会長。子どもたちにもっと茶を飲んでもらおうと昨年制定した児童生徒愛飲促進条例とかみ合わないと指摘した。

 静岡市内の茶商は「酒やワイン、コーヒーにも添加物が入っていて当たり前。茶だけ特別扱いしていては業界が先細る」と強調。条例廃止は茶の健康効果を売りに、若年層に避けられがちな苦みや渋みを抑えた商品開発にもつながるとみる。

 流通業者からは県外産の添加物入りの茶も加工できるようになり、物流が活発化するといった意見が聞かれた。

 一方、島田市の製茶問屋「朝日園」の朝比奈明夫会長(72)は「静岡茶の信頼が損なわれる」と懸念した。さらに、うま味成分などの添加物が主流になった際に一番茶の需要が落ち込む可能性を指摘。「価格の安い二番茶に添加物を加えれば手間をかけずに一番茶並みの味になる。農家の生産意欲を奪うリスクがある」と話す。

 全国茶品評会で農林水産大臣賞の受賞経験がある県中部の生産者は「売った先で何が混ぜられるか分からないことは不安」と話した。

 県は10日から28日まで、条例廃止方針への県民の意見を聞くパブリックコメントを行う。



 ■茶産地市長 異論相次ぐ

 県製茶指導取締条例の廃止方針に対し、7日に静岡市内で開かれた定例市長会議に出席した茶どころの市長から「安易に廃止すべきでない」と異論や反発が相次いだ。

 牧之原市の西原茂樹市長が「新聞報道を見た地元の茶商や生産者からとんでもないという怒りの声が届いている」と切り出した。「静岡県が守ってきたお茶の品質はどうなってしまうのか。条例撤廃ではなく条例改正で対応すべき」と主張した。袋井市の原田英之市長も「時代に逆行する」と異を唱えた。

 県市長会長の北村正平藤枝市長は「茶業界も勝ち抜かねばならないと工夫している」と食品衛生法で許されている味付けや香り付けには一定の理解を示した。その上で、条例は「何より大事な静岡茶の品質保持に大きな役割を果たしてきた」と指摘。「申請手続きの簡素化や規制品目の緩和などの条例改正にとどめるべき」と述べた。

 田辺信宏静岡市長は静岡新聞社の取材に「次代に向けて育んでいくもの、新たに創り上げていくもの、双方に視点を当て議論していく必要がある」とコメントした。

 松井三郎掛川市長は、条例の廃止に「異存はない」と肯定的な立場。同市は今年策定した「茶振興計画」で、深蒸し茶を基本としながらもフレーバー茶など、多様な販売戦略で新たな需要喚起を図る方針を掲げた。松井市長は「買いたくなるお茶づくりに取り組む」と話した。



 <メモ>静岡県製茶指導取締条例 製茶工程で異物が混入するのを防ぐほか、流通過程を含め茶への調味料、発色剤などの添加を取り締まる。「製茶指導吏員」による立ち入り検査や罰則が規定されている。静岡茶の声価を維持しようと1956年施行された。「着味・着色」や異物混入を原則禁止する条例は他に類がない。慶事用に金粉を混ぜたり香り付けのため花や果物を混ぜたりする場合は知事の許可を受けなければならない。

静岡新聞社