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この国に独裁者が現れたら、戦う勇気を持てるか?

7/8(土) 6:01配信

ホウドウキョク

権力に抵抗することの難しさと尊さを映画『ヒトラーへの285枚の葉書』から学ぶ。

映画のスクリーンショットはこちら

自分が暮らす国に独裁者が現れたら、何ができるだろう。間違っている、と思うことを間違っている、と言えなくなったら、どうするだろう。現在公開中の映画『ヒトラーへの285枚の葉書』は、まさに今の世界に起こっていることを想起させるテーマを提示しています。

この映画の原作は、ゲシュタポの記録文書を基にドイツ人が書いた、実在の夫妻をモデルにした小説です。ドイツ人が書いた、というのがポイントで、この小説は「ドイツ国民によるナチスへの抵抗運動を描いた傑作」として世界的ベストセラーになっています。

“舞台はナチスドイツがフランスに勝利し沸き立つ1940年のベルリン。ここで質素に暮らす夫婦のもとに最愛のひとり息子が戦死したという知らせが届く。悲しみの中、夫は「ヒトラーが子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」などと書いたポストカードを街中にそっと置く。ささやかな抵抗活動を繰り返すことで夫婦は魂が解放されるのを感じるが、ゲシュタポの捜査がすぐそこまで迫っていた…。”

監督はヴァンサン・ペレーズ。『インドシナ』でカトリーヌ・ドヌーブと恋に落ちる若き海軍士官を、『王妃マルゴ』ではイザベル・アジャーニーと愛し合う青年を演じ、その演技力と美しさで世界を魅了しました。
ご本人はスイス出身ですが、父親はスペイン出身、母親はドイツ系。この映画を作ることは自身のルーツと向き合うことだったといいます。4月の来日時にインタビューしました。

「脚本を書くためにドイツの家族が暮らしていた場所を訪ねたんだ。そこで判ったのは、家族の誰もナチスの党員ではなかったこと。党員にならないのは当時大きな抵抗だったはずだ」

世界でグローバリズムと逆行するような動きが見られる中で、この映画を作り公開することの意味をヴァンサンはどう感じているのでしょう。

「確かに世界は今とても危うい状況にあるよね。北朝鮮、極端な思想の台頭、テロ。日本も様々な問題を抱えていると聞く。でも僕はまだ信じているんだ、人類は間違った決断はしないと。第二次世界大戦のようなことにはならない、僕たちには知性がある」

実はこの映画のセリフはドイツ語ではなく英語です。その理由についてはこう語っています。

「この作品を普遍的な物語にしたかった。ドイツだけでなく世界のどこにだって極端な人間が現れる可能性はある。あらゆる場所に住む人たちにこの話を伝え、戦う勇気が必要だと示したかった」

独裁者が現れたら。私たちは「戦う勇気」を持つことができるでしょうか。この映画が描いている、支配される恐ろしさと、ささやかでも抵抗し続けることの難しさと尊さは、まさに今だからこそ考えるべき大切なテーマだと思います。