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「プールのよう」駅周辺の冠水対策に巨大な「貯留管」 識者からは不安の声も上 長崎市

7/8(土) 6:30配信

西日本新聞

 雨が強まるにつれ、水かさが増す。台風3号が長崎に上陸した4日、JR長崎駅前の駐車場は雨水があふれていた。この光景は、珍しくはない。国道を挟んだ大黒町に生まれた頃から住む片岡憲一郎さん(70)は恨めしそうに駅前を見つめる。「豪雨になると、いつも滝のように水が流れ、プールのような状態になる。どうにかしてほしい」

【画像】冠水対策として地下に設置される全長1・2キロの貯留管

「例がない規模の事業」

 再開発で大きく生まれ変わる長崎駅周辺だが、その地下でも「例がない規模の事業」(市関係者)が進められている。

 高さ2メートル、幅4メートル、全長約1・2キロ。長年相次いだ駅周辺の冠水被害を防ごうと、駅近くに新たにできる市道の地下に、雨水をためる巨大な「貯留管」を敷く工事が進む。雨水の貯留能力は9680トン。2013年度に着手し、完成は21年度末の予定だ。

 市が目指すのは、1982年の長崎大水害時のように、1時間に100ミリ前後の猛烈な雨が数時間降り続くケースでも冠水被害を防ぐこと。実際、14年7月には1時間に90ミリ超という「30年に1度」(市関係者)の猛烈な雨を観測。駅前は地盤が特に低く、JR九州長崎支社によると16年6月には一部の線路が冠水し、運行ができなくなるなど、ダイヤが乱れるようなこともあったという。

 駅に近い浦上川に排水するポンプ、雨水を通す雨水渠(きょ)、そして切り札といえる巨大貯留管。一連の冠水対策費は国からの助成金も合わせ約30億円。21年秋には大型コンベンション複合施設、22年度には九州新幹線西九州ルートが暫定開業し、新駅ビルも誕生する。生まれ変わる「駅前」を、もう水浸しにさせられない-。市下水道建設課は「冠水や浸水被害を防ぐ万全の策」と語るが、識者からは不安の声も上がる。

「市街地ならではの対策の難しさ」

 長崎大の高橋和雄名誉教授(防災工学)は「抜本的な方法は土地を高くすることが望ましいが、難しいのであれば、貯留管の体積を増やすなどより強力な対策をすべきだ。水害を経験した長崎にしては対策の規模が小さいのではないか」と指摘する。

 市が長崎大水害を想定して行ったシミュレーションでは、駅前は「車などの交通に支障が出ない程度の被害にとどまる」(市関係者)ものの、10センチ程度の冠水が発生する可能性はある、という結果が出た。さらに、今回の福岡・大分のように100ミリを大幅に超える記録的な豪雨が長崎都心に降れば-。

 貯留管の体積を増やしたくても、市道地下には水道管やガス管などのインフラもある。費用はこれ以上増やせない。「最大限の努力の結果。これ以上は難しい」。市関係者はこう打ち明ける。市が懸命に進める冠水対策だが、高橋教授は「市街地ならではの対策の難しさは分かるが、苦肉の策に映る」と語る。

 坂、川、海に囲まれる駅前の新都心エリア。巨額の資金が投じられる華やかな変身の裏には、相応の自然災害リスクが残っている。

西日本新聞社

最終更新:7/8(土) 6:30
西日本新聞