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【ZOOM東北】山形発 議会と市民の距離感は 理念では「固い結びつき創出」 

7/9(日) 7:55配信

産経新聞

 全国の地方議会では6月定例会が終わり、首長側も議会側も落ち着いたところだろう。だが、議会と一般市民との間の“距離感”はいかがなものか。山形市議会をもとに考えてみた。(柏崎幸三)

 ◆「資料提供はしない」

 ある請願の取材で6月下旬に訪れた山形市議会。環境建設委員会をのぞくと、傍聴者向け資料は一切なかった。傍聴者は記者を含め3人。議案などの資料があるのは、委員(市議)と執行部(市職員)のみ。質問と答弁が続くが、傍聴者は書面で請願名などが確認できないまま審議は進んだ。隣で一生懸命にメモしていた60代男性は、「必死で理解しようと努めましたが…」と困った様子だった。

 見かねて2度、資料提供を求めたが、1度目は回答がなく、2度目にようやく議会事務局の男性職員が「山形市議会では資料の提供はしていません」。

 山形市の政策は、市民不在のまま委員と執行部だけで決まっていくのか-。そんな疑念が頭をよぎる。山形市議会の広報誌「みちしるべ」には議会の傍聴方法が記載されており、「本会議や委員会は一般に公開されています。ぜひ、傍聴にお越しください」と記されてはいるのだが…。

 ◆別の市議会では…

 他の市議会では、傍聴者に資料を配布しているのだろうか。

 北海道栗山町。353億円もの財政赤字が発覚し、平成18年に財政破綻を表明した北海道夕張市の隣町だ。同町は、市議会がチェック機能を果たしていなかったのが夕張市の破綻の原因だとして、全国に先駆けて議会基本条例を18年に施行。自治体事務の立案から決定、執行などの責務を、町議会にも持たせた。

 同時に「議会活動の情報公開を徹底し、町民に説明責任を十分に果たさなければならない」ことを議会の責務とし、傍聴者に予算案をはじめ議案、請願などを本会議や各委員会で提示することを原則としている。

 同様の議会基本条例を20年6月に施行した福島県会津若松市議会でも、傍聴者用資料は常置されている。「すべて市民に公開するのが前提で、傍聴者に資料を公開しなければ理解ができないためです」(議会事務局)という。

 同市の議会基本条例制定の中心となった目黒章三郎議長(64)は「議案や請願などを委員会などで傍聴者に渡すのは当たり前のことでは。それをしないのは市民に不親切だし、一体誰のための議会なんでしょうね」と驚いていた。

 ◆条例と現実の差

 実は、山形市議会も平成25年4月に市議会基本条例を施行している。その理念には「市民とのより固い絆の結びつきと一層の市民参画の機会を創出し、市民に信頼され存在感のあるものにしていかなければならない」とある。

 だが現実はどうか。職員が「(議案や請願などの資料は)市民に提供していません」と言い放ち、本会議や常任委員会では傍聴者向け資料は一切置いていないのが実情だ。

 「傍聴者に資料提供をお願いしたい」という2度の記者の申し入れに対し、同市議会の金澤孝弘・議会事務局長は「検討します」というだけだった。

 山形市議会最終日の6月30日、傍聴席には10人以上の市民が熱心に審議を聞いていた。会社員の男性(55)は「議案などの資料があれば分かりやすいですね」。一生懸命メモを取っていた60代男性は「資料がなく、全く分からなかった。議員と同じ資料があれば質問の趣旨が分かり、市民も市議会に参加したという気持ちにもなるのですが」と話していた。

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 ◆山形市議会基本条例第6条(市民と議会の関係)

 議会は、市民の多様な意見を把握し、市政に反映する機関として、議会への市民参加の推進に努めるものとする。

 第7条(議会の情報公開)議会は、市民に対し、議会活動に関する情報を積極的に公開し、説明責任を十分に果たさなければならない。

最終更新:7/9(日) 7:55
産経新聞