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「心の防災」チーム養成 静岡県、DPAT整備

7/9(日) 11:30配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 大規模災害などで心にダメージを受けた被災者や現地の病院を支えるため、静岡県は本年度から、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の養成に取り組んでいる。DPATは東日本大震災を教訓に、国が全国統一的に整備を進める組織。南海トラフ大地震が想定される静岡県は、被災地で活動できるチームを育てると同時に、DPATの活動を理解する医療関係者や行政担当者らを増やし、被災時の円滑な支援受け入れにつなげる狙いもある。

 「安否不明の夫が心配で泣いてばかり。食事が喉を通らず、夜も眠れない」。6歳の娘を連れて体育館に避難した33歳の女性が、体調不良で医療救護所に来たら、どんな支援が考えられるか-。2日に県庁で初めて開かれたDPATの研修会。大規模地震が発生した想定で、参加者約90人は7~10人の班に分かれて話し合った。

 この女性の事例について、参加者は「精神科の専門治療ではなく心理的支援が必要」「気持ちを落ち着かせる手助けをする」「必要なサポート情報を提供する」など、DPAT以外の支援機関へ引き継ぐ方法も検討した。

 DPATは、精神科医師と看護師、事務職員を基本に、現地のニーズに応じて薬剤師や保健師なども加わる。発災直後から現地に入り、被災地の病院と避難所を中心に支援を行う。研修では、熊本地震の実事例からDPAT活動の流れを模擬体験した。

 災害時に求められるのは、被災病院と発災前からの患者への支援だけにとどまらない。災害のストレスによって新たに精神的問題が生じた被災者や、災害支援のストレスにさらされた医療・保健業務従事者への心のケアも必要になる。

 研修の別事例では、被災後に休みなく働き続けている保健師を取り上げた。同僚が休むよう促しても聞き入れず、「地域を知っている私がやらなくては。みんな頑張っているから休めない」と泣きだしたというケース。対応方法について、ある班は「抱えているストレスを自覚させ、休ませて様子を見る」という結論を出した。

 県とDPATの協定を結ぶ県内病院は、6月末時点で15カ所。今回の研修には、新たに参加を検討する病院からの出席者もいた。静岡DPATを統括する県立こころの医療センター(静岡市葵区)の村上直人院長は、「医療関係者の関心の高さがうかがえた。DPATの養成を通じて行政や消防など関係機関との連携をさらに深め、いざという時、確実に動ける体制づくりを進めたい」と意欲を見せた。



 ■東日本、熊本で実績 派遣対象広がる

 静岡DPATの前身団体になったのは、静岡県の独自編成で1996年から活動してきた「精神科応援班」。同班は東日本大震災や熊本地震などの被災地でも活動実績があった。

 東日本大震災の被災地では、全国から集まった精神医療支援チーム間の連携が十分に取れなかった。DPATの整備は、全国で統一的な指揮命令系統をつくることが目的。

 また、静岡県の精神科応援班の派遣対象が自然災害だけだったのに対し、DPATは犯罪事件や航空機事故、列車事故などの集団災害も対象に含む。

 規定の研修受講で登録が認められる「DPAT先遣隊」は、発災後48時間以内に現地本部を設置し、被災した精神科病院の入院患者移送などの任務を行う。県内では、県立こころの医療センターが登録している。

静岡新聞社