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芝栽培で踏みだす 全国植樹祭彩る 南相馬の農業 高田幹一さん

7/9(日) 9:56配信

福島民報

 福島県南相馬市原町区雫(しどけ)のほ場で、農業高田幹一さん(64)は全国植樹祭で使われる芝作りに励む。東日本大震災の津波で家族3人を失った。ぼうぜん自失の中で選んだのが、家族との思い出が詰まった地元での再起だった。家族や古里への思いを込めて育てた青々とした芝が来年、地元で開催される全国植樹祭を彩る。
 海風を受けながら農事組合法人「ふぁーむ・しどけ」の仲間と共に芝の出荷に向けた作業に汗を流す。
 ほ場がある雫地区は、震災の津波で甚大な被害を受け、25人の尊い命が失われた。高田さんの母キイ子さん=享年(79)=、妻玉枝さん=享年(55)=、長男の妻千鶴さん=享年(32)=も命を落とした。
 長年勤めてきた市内原町区のトマト工場「日本デルモンテ福島工場」を震災後に退職した。海の近くで育ち、慣れ親しんできた海が最愛の家族を奪った現実を受け止められず、つらく苦しい日々が続いた。
 だが、友人らに誘われ、復興に関わる事業に携わるうちに「この土地で前に進みたい」と決意が固まった。2015年10月に雫地区の住民有志で農事組合法人を設立した。
 芝の栽培は2・4ヘクタールのほ場で始めた。会社員として働く傍ら兼業農家として土とは向き合ってきたが、初めての芝作りは苦戦の連続だった。粘土質の土壌で水はけが悪く、芝は思うように根付かなかった。「諦めるわけにはいかない」。家族への、地域への思いが気持ちを奮い立たせた。
 月に一度、鳥取県の芝栽培の専門家から指導を受け、芝栽培を始めて2年目の今年、本格的に出荷できるようになった。同じく肉親を失った仲間と工夫を重ねた成果だった。
 「この場所にはつらい思い出がある。でも生まれ育った土地には変わりない。これからも地元で頑張る」。亡き家族に誓っている。

福島民報社

最終更新:7/9(日) 16:05
福島民報