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勤労者守る「よりどころ」 トップは防衛省のリーダーだった! 全国労働金庫協会・労働金庫連合会理事長 中江公人さん(64)

7/10(月) 10:15配信

産経新聞

【リーダーの素顔】

 日銀のマイナス金利政策による超低金利で、労働金庫(ろうきん)も主力の住宅ローンが低金利競争に巻き込まれ、ビジネスモデル変革を迫られつつある。一方、所得格差が拡大する中、「勤労者に寄り添う金融サービス」を手がけるろうきんの役割は増している。全国13のろうきんを会員とする全国労働金庫協会と労働金庫連合会(労金連)のトップとして、新ビジネスを模索する。

 --大蔵省(現財務省)出身ですが、当時はどんな仕事をしてきましたか

 「予算部門の主計局が比較的長く、金融行政に携わったのは金融庁に行ってからです。当時は不良債権処理が大きな課題でした。防衛省時代はなんといっても東日本大震災。事務次官として原発事故対応などにあたり、最初の2週間はもう一度大きな爆発があれば、首都圏への影響も避けられないという危機感がありました。役人人生で最も緊張した2週間でした」

 --労金連に入って5年。外からはどんな印象でしたか

 「(全国に13ある)ろうきんは一般の金融機関からお金が借りられない勤労者を救済するために、勤労者がお金を出し合ってつくった金融機関で、営利を目的にしていないのが特徴です。全国で非正規社員の割合が4割を超える中、雇用や生活に不安を感じる勤労者は増えており、ろうきんの重要性は増しています。そういう人たちの最後のよりどころと考えています」

 --経営基盤の強化も不可欠ですね

 「13ろうきんを平均すると、収益の9割を住宅ローンに依存していますが、住宅ローンは地銀やネット銀行などとの競争も激しく、ビジネスモデルの変革が求められています。ろうきんらしさを追求し、勤労者の生涯取引を進めるよう指導しています。具体的には、子育てや教育、介護、退職後の資産運用などライフステージに合わせた複合的なサービスを用意し、ろうきんの収益源を多様化したいですね」

 --個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」もその一つですか

 「イデコは大変力を入れています。公的年金の限界が指摘される中、自分で育てる年金で勤労者の年金資産の形成に役立ちます。税制のメリットも大きく非常にいい制度。特に、今年1月からは公務員にも対象が広がりました。強みである公務員関係の労働組合を通じ、積極的に提案するよう指導しています。1~5月の13ろうきんの申込者は計約3万件で、手応えを感じています」

 --ろうきんの会員をどう増やしますか

 「私たちは労働組合を通じて会員を増やしてきました。こうした安定的なシステムがあるのもわれわれの強み。連合が労働組合の組織化を進めていますので、足並みをそろえながら裾野を広げていきたいと思います。また、ろうきんは法律で営利目的の企業には融資できませんが、非営利の団体には支援できます。教育や福祉など社会的な課題の解決に取り組んでいる団体の支援も進めたいですね。また、ATM(現金自動預払機)の手数料を実質ゼロにするなど利便性向上にも努めています」

 --銀行カードローンが多重債務の温床になっているという指摘があります

 「ろうきんは、多重債務問題にも力を入れてきました。ろうきんにもカードローンはあるが生活応援の観点です。金利も一部の特殊なケースを除くとおおむね3~6%くらい。10%を超える高金利のカードローンを振り替えてもらい、勤労者の可処分所得を増やしたいですね」(経済本部 蕎麦谷里志)

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 【家族】一男一女は独立し、今は東京都内で妻と2人暮らし。近所に住む長女の子供が週末になると遊びにくる。「孫が来てほっとし、孫が帰ってほっとします」と目尻を下げる。

 【趣味】スポーツ観戦が好きで、ジャンルはラグビーやテニスなど幅広いが、特に野球は大の阪神ファン。今シーズンは好調だが、「期待したらだめです。裏切られるから。長年のファンなので、冷静にみてます」と笑う。官僚時代に在ニューヨーク日本総領事館で勤務した経験から、オペラや演劇、絵画など芸術への関心も高い。

 【性格】気さくで職員とのコミュニケーションを大切にしている。女性職員からは「おちゃめでかわいい」と言われることも。取材中もユーモアを忘れない。「大阪人だからね。でも、だじゃれは職員にあまりウケないですね」

 【信条】職員には繰り返し、「外の世界に目を向けなさい」と呼びかける。ろうきんの職員は真面目で誠実だが、外の世界にさらされていないという思いがある。「志は高く、頭は低く」という姿勢も大切にする。謙虚であれば色々なものが見えてくるからだ。

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■中江公人(なかえ・きみと)昭和28年6月30日生まれ。京都大法学部を卒業後、大蔵省に入省し、主計局主計官や金融庁総務企画局総括審議官などを歴任。平成19年から防衛省に出向し、21年から約2年半、防衛事務次官を務めた。退官後に労働金庫連合会特別顧問に就任し、26年6月から全国労働金庫協会・労働金庫連合会理事長。大阪府出身。

最終更新:7/10(月) 10:15
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