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落語は「笑点」だけにあらず 「ポンコツだから油断しないように」と、常に自分に言い聞かせる、背の高い「のび太君」の鈴々舎八ゑ馬

7/9(日) 18:30配信

産経新聞

 鈴々舎八ゑ馬=れいれいしゃ・やえば=(42)は、自身のことを「ポンコツだから、油断しないように」と、常に言い聞かせている。八ゑ馬は身長184センチの長身で、その口調も優しいからファンも多い。まるで、背の高いのび太君のようだ。お客さんからも、噺よりも背の高さを言われているのを見て笑った。

 八ゑ馬が面白いのは、上方噺と江戸落語の両方をこなす“両刀使い”だ。それでも八ゑ馬は「自分の落語を完成させないといけない。大阪の人には何の意味もない。やればやるほど、どっちもアウェー」と、今はまだ、途上ではある。江戸落語と上方落語、古典落語と新作落語と、それぞれを器用にこなしているように見える。

 「独自のものを編み出さないといけない」と、高座で自分らしさを出すだけでなく、オリジナルの新作落語も作り続けている。

 「道がないところを開拓していっているようなもの」と、八ゑ馬の進む道は険しい。

 「でも、うちの師匠(鈴々舎馬風)もやってきたこと。今思えば、うちの師匠は、よくこんなひどい弟子を我慢してくれた」と、自身のことをいう。

 二ツ目になって5年半。自身でも「二ツ目の折り返し点」だというように、真打ち昇進も少し見えてきて、悩むことも多い。

 八ゑ馬は自身でも不器用だということは認識している。ひとつのことしか考えられない。楽屋でにぎやかに雑談をしていて、そのままに高座に上がると噺に集中できずに、出来がよくない。

 「噺にすっと入ることができない」

 だから、高座の前は常に、「脳と体がバラバラにならないように」集中する。そのために、周囲から人を遠ざける。自身が不器用だということを常に意識する。そうすることで、油断しないようにする。

 自身ではこれまで気付かなかった。兄弟子にも「お前、ひどいな」と、言われたことは数知れない。

 「人の気持ちが分からなかった。うちの師匠は、今思えば、よくこんなヒドイ弟子を我慢してくれていた。まさか向こうもこちらをポンコツとは思わないから。最近、やっと自分がやばいやつだと分かった」

 今では、二ツ目としても、高座の数は多い。それは八ゑ馬の人柄かもしれない。それはそれで恵まれている。八ゑ馬は入門が遅かった。社会人の経験もある。落語家になるには、早いほうがいいというが、それは分からない。

 自分の落語には、まだ「落語の風が吹いていない」と八ゑ馬はいう。だから「好きなことを仕事にしては駄目だというのは分かる」と。活躍している他の若手にも強い刺激を受けている。

 八ゑ馬には、自身の理想の落語会の形がある。わかりやすい落語一席、面白い落語一席、いい噺の一席で、自身の落語会を行う。それを理想として、自分に課して、噺の数を増やしている。

 「みんな悩んでいる。そして自分の落語を見つけた人が売れている。自分の落語を見つけて、それをお客さんが喜んでくれればいい」

 そのためにも、早く「自分なりの笑いを見つけたい」と、八ゑ馬は話す。

=敬称略

(地方部 松垣透)

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 経歴 昭和49年7月7日生まれ。大阪府枚方市出身。近畿大学卒。社会人を経て、鈴々舎馬風に入門。平成19年8月、前座で、やえ馬。23年11月、二ツ目昇進、八ゑ馬と改名。

最終更新:7/9(日) 18:30
産経新聞